聞いてください。
俺には何も、無いのです。
そう、自分を騙していたかった。
俺は何も持ちたくなかった。
なのに何故、持ってしまったのか。
持たなければ、こんなにも苦しくは無かったのに。
知ってください。
俺は何も、知らないのです。
そう、自分を偽っていたかった。
俺は何も知りたくなかった。
なのに何故、知ってしまったのか。
知らなければ、こんなにも悲しくは無かったのに。
観察してください。
俺は何も、見えないのです。
そう、自分を誤魔化していたかった。
俺は何も見たくはなかった。
なのに何故、見えてしまったのか。
見えなければ、こんなにも涙を流す事が無いのに。
教えてください。
俺は何も聞けないのです。
自分は、そうなのだと信じたかった。
俺は何も聞きたくなかった。
なのに何故、聞いてしまったのか。
聞かなければ、こんなにも痛々しく無かったのに。
話してください。
俺は何も話せないのです。
そう、自分を固めてしまいたかった。
俺は何も話したくなかった。
なのに何故、話してしまったのか。
話さなければ、こんなにも心が俺が軋まないのに。
感じてください。
俺は何も感じないのです。
そう、自分に嘘ついていたかった。
俺は何も感じたくなかった。
なのに何故、感じてしまったのか。
感じなければ、こんなにも辛くなる事がないのに。
壊れてください。
俺は何も壊せないのです。
そう、自分は壊れていないと信じたかった。
俺は何も壊したくなかった。
なのに何故、壊してしまったのか。
壊さなければ、悲しくなれるほど自分が自分で居られるのに。
神の部品は壊れながら、周りを壊し、壊れていく運命。
壊れるのは神の部品。
壊されるのは全ての敵。
壊れていくのはその全て。
壊れきったその先に残りうるものはなんだろうか?
……そんなものは知りたくもなかった……
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神の居ないこの世界で |
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