瑞佳と澪と茜加えてメカニックたちの努力により、陣地が形成でき、バックアップの体勢が整った時だった。
シュンが適性の無いみさおと戦場を駆ける為に作られた機体は異変を敏感に察知する。
仮名称、ヘイルダム
情報戦、情報収集用の装備をしたHドール。背中にバックパックを担ぐ事で情報戦を可能にした。
背中のバックパックには人が搭乗するので変則複座型という事になる。
バックパックには各種レーダーなど宵に共通する機能が装備されている。事実、宵を手本に作られていた。
バックパック自体は着脱が可能でそれを外す事で戦闘力は格段にアップするが情報戦は出来なくなる。
これの機体の方にシュンが乗り込み、バックパックの方にみさおが乗り込む。
現在は接続された状態になっている。接続を切り離してもバックパック単独で一応は行動できる。
しかし、機能は最低限に制限され、殆ど役に立たなくなると言っても過言では無い。
必要なエネルギーを本体から供給されているからだ。
ヘイルダムのバックパックに付いたレーダードームがくるくると回転し情報を集めるために動き回っている。
その外見は標準のドールがまるで丸太を背負っているような外見。
みさおはすぐに対応できるようにバックパックに詰めていた。
他に乗っていると言えば、繭と祐夏の2人が周囲を警戒しているくらいで、残りのメンバーはまだ休息を取っている。
「繭さん、祐夏さん戻ってください!」
『うん』
『わかったよ』
みさおの声に異変を感じた2人は素直に周囲の警戒をしながら本拠地に戻り始めた。
2人が乗っているのは全く同じ小型に分類される機体。
仮名称、ガンショットU
Airの最新機種であるガンショットの改修している時に複製してみた機体。
ONEの次世代機の構想が機動力の機体を創作するというものがあったのでノウハウとデータを掻っ攫う形で製作された。
祐夏のガンショットとの違いといえばリボルバーではなくオートマチックの拳銃だという事。
加えて、若干機動力は劣るが弾丸の破壊力及び貫通力はこちらの方が上。
祐夏と繭は全く同じ機体に搭乗している。祐夏にとっては攻撃力が上がって機体が少し重くなったような感じだった。
機体の色は2人とも同じ色で山岳迷彩で統一されている。
知っての通り、極小に分類される機体だ。
みさおが確認の電波を周囲に撒き散らしながら周囲を注意深く観察した。
祐夏と繭の機体がレーダーで陣地に近づいている事が分かる。
それ以外に、山から建物を取り囲むように12機の機体が4組に分かれて待機しているのが見て取れた。
ゴクリと唾を飲み込み警告を発する。
「警告します! ここはONEの所有地です!」
『こちらも警告する。この一帯は交戦地域に設定された。避難を開始するべし』
みさおはため息を吐いた。
聞いた事の有る声、忘れもしない。同僚の声だった。
特務第1小隊。元々、浩平、留美、みさおの所属していた部隊の名前。
他のエリアとの戦闘のみを考えエリアO、最強の戦力を保有している部隊だった。
つまりは、エリアOの議員は本気で有ると言う結論になる。
『戦闘開始は15分後、それまでに速やかな避難を願う』
その言葉が流れて唐突に電波が途切れた。
既に通告はしたと言う相手側の意思表示。
「社長、どうしますか?」
『あら、答えは決まっていますわ。今までの成果見せてください』
「っと、言う事です。皆さん、やりますよ!」
みさおは声高らかに通信で声を出す。
先ほどから通信のスイッチは入りっぱなしである。
「クロノスの皆さん、戦闘準備に入ってください」
休憩に入っていた残りのメンバーがそれぞれの機体に乗り込み始めるのだった。
「敵は12機、正面3方向にそれぞれ3機づつ布陣。後ろから残りの3機。私たちは取り囲まれています」
『こちらの戦力は、実質7機か』
有夏の声がみさおの声の後に続く。
その後に、みさきの声が混じった。
『有夏さん、8機だよ』
『みさき! あなた、職場を放棄して!』
雪見の声が通信の中に混じりこんだ直後に由紀子の声が入り込む。
『いいですわ、やらせてあげなさい』
『しゃ、社長!』
『みさきさんの代わりに、氷上さんが雪見さんの手伝いをしてください』
『わかりました』
『……っと言う事で8機だよ』
混じった声の後に怒った感じの雪見と呆れた感じの由紀子の声が混ざってようやく、みさきの機体は外に出た。
みさきが乗っているのは特殊な機体だ。
仮名称、シックスセンス
人の皮膚感覚を機械で再現するべく開発していた技術をドールに応用したらどうなるか。
そんなコンセプトで製作された機体。最大の特徴は機体のセンサー感じた事を搭乗者に感覚をフィードバックする。
ただし、レベルを超える痛みや情報はフィードバックされないようになっている。
機体の表面には皮膚センサーが張り巡らされており、それが事細かに搭乗者に感覚を渡す。
そのためには搭乗するさいに特殊な全身ラバースーツを着用しなくてはならない。
機体自体はみさきの適正の高さと感覚の鋭さを生かすように設計されている。
当然視覚センサーやカメラは装備されていない。
見た目は頭部の目に当たる部分にバイザーでもはめた様な物をかぶせて有る。
他にはあまり目立った部分は無い。標準的なドールと言っても良いだろう。
武器は盾を装備している。その後ろには棍がはめ込まれていた。
まだ機体に乗り込んでいない人が多々いる。
みさおもまた動く事は出来ないがバックパックとドールは別系統で動いているので機体を動かさないのであれば機能に問題は無い。
有夏も機体に乗り込んでようやく自分の機体を起動させた。
仮名称、サイレントU
有夏の残したデータを下に、より有夏好みの機体になるべく損耗率の高かった部分を重点的に強化を施した機体。
基本的にはサイレントをベースにしているだけに大きな変化は無いが強度だけはやけに上がっている。
無論、武器の豊富さは目を見張るものがあり、有夏が満足しているのは言うまでも無い。
機動力はあまり変わっていないものの、総重量が1割増えている。これは、武器が増えたためだ。
外見も、殆ど変わっていない。変わったのは中身だけだ。
辺りはまだ戦闘と言った雰囲気は無いが、空気が張り詰めて行く独特な雰囲気があった。
それを感じ取るのは有夏にとって心地の良い事でも有る。
なれない人間には胃の痛くなる思いをさせる物に間違いないんだが。
■□ ■□ ■□ ■□ ■□
陣地の中は慌ただしくメカニック達が走り回っていた。
緊急の連絡が入って慌ただしくなったと言うのが正確なところだろう。
なかでもチーフクラスの茜と瑞佳は拡声器を手に一際激しく走り回っている。
澪は澪で、今有る部品や武器などのチェックで急がしいく働きまわっていた。
メカニックも機体に取り付いて各機の最終チェックに余念がない。
「アベレージ1が出ます! 足元の人注意してください!」
『里村さん、これを持って行って良いの?』
既にチェックが終わり新しい機体から立ち上がり始めている。
佐織の声が陣地の空気を振るわせた。
手には盾とマシンガンとが一体になったちょっと変った武器が握られている。
仮名称、アベレージ
ONEの次世代機の量産機の原型となるべく設計された物。
性能は他のメンバーが乗る特注機には一歩劣るが、修理にかける時間の短さは他には及ばない。
交換部品さえあればパイロットを乗せたままでも修理が可能で、修理時間を驚異的に短縮させる事が可能。
破損部分をレゴブロックを交換するみたいに部品を交換する事で修理の時間を短縮している。
壊れたとしても、最短で戦場に復帰できる。それがコンセプトの機体だ。
平凡的な性能と平凡的な外見はその事を如実に表していた。
アベレージ1が佐織で、アベレージ2が護がそれぞれ搭乗している。
全く同じ山岳迷彩の同じ機体がもう一つ、立ち上がってさらに陣地は忙しさが増してきたようだった。
茜は佐織に手で大きくバツマークを作って拡声器の電源を入れる。
それが聞こえて意思が伝わったのか、佐織は頷いた仕草をした。
「それは、アベレージ2の武器です! アベレージ1は、壁に立て掛けてあるアサルトライフルを持って行って下さい!」
『了解! 足元の人は道を明けてください! はい、確かに渡したわよ!』
もう一機の同じ機体、護が全く同じ機体から武器を受け取って頷く仕草を見せた。
そして、先に外へと出て行く。
茜が指示した壁の辺りには多種の武器が並べられている。
代わりの武器を手にしたアベレージ1はそれに続くように、後に続いて出て行った。
「次! インドラの立ち上げだよ!」
それを見送った直後、瑞佳の声が陣地の中に響き渡った。
慌ただしい空気はまだ払拭されずにそのままの勢いである。
まだ2機陣地の中に残っているのだからしょうがない。
瑞佳はインドラに取り付いているメカニックに確認を取る。
「チェックは終わった? 問題無いなら立ち上げてもらって!」
テキパキと指示を出して、それに流れるように従うメカニックたち。
留美は問題が無かったという報告を受けてから、自らの乗る機体がゆっくりと立ち上がった。
仮名称、インドラ
次世代機の構想通りに作られた機体。砲撃ではAirに一日の長があるが格闘では逆転される。
機動力はAirだけの専売特許では無いと言う意気込みで作られてた機体でも有る。
それを自負するだけに、機動力はスペック上は遜色は無い。むしろ若干上に位置しているくらい。
その代わりにONEの特色である重装備が多少制限されてしまっている。
肘には特殊な機構が取り入れられており、しっかりと固定する事でかなりの衝撃にも耐えられるようになっていた。
そして、両腕に杭では無いタイプのパイルバンカーがそれぞれ一つ取り付けられている。
細めで、丸みを中心的に取り入れられたフォルムはONEの特徴だけに外せないチョイスだったに違いない。
色はくすんだ山岳迷彩。標準の大きさの機体である。
ゆっくりと立ち上がったインドラを見上げる瑞佳に茜。
茜は拡声器を再び手にして、壁の方を指差して大声を張り上げた。
指差した先は、佐織に指示した時と同じ場所だ。
「チェーンブレイドを持って行って下さい!」
『名前は格好良いけど、チェーンソーね。これは』
顔は見えないが、留美が苦笑しているであろう事はありありと声の感じから解った。
さして怒った感じの声では無いが、茜が微妙に不機嫌の混じった感じの声を返す。
「時間が無かったんです! 文句なら後にしてください!」
『ごめんね、でも用意してくれてありがとう』
遠くから見た感じが片刃の刀。
しかし、近づくと片方の刃にびっちりと鮫の歯のような物がチェーンについているのが判る。
峰の部分の中ほどに、手を添えれるような取っ手が付いている無骨な剣。
茜は留美の謝罪の言葉に怒っていないと言う仕草を大きくしてみせる。
その無骨な剣を手にしたインドラが安心したような感じで、アベレージ2機に続いて外に出て行く。
「ラスト! スイッチの立ち上げ開始だよ!」
『やれやれ、俺は最後か……』
「そこ! うるさいんだよ! 気が散るから黙ってるんだよ!」
外部のマイクのスイッチが入っていたらしく、浩平のボヤキが瑞佳に聞こえてしまった。
コクピットに向けて瑞佳の大声が飛んだのは言うまでも無い。
茜は呆れてその方向を見つめていた。
そしてすぐに自分の仕事に戻っる。
仮名称、スイッチ
オールラウンダーである浩平に合わせて作られた汎用性の塊のような機体。
遠距離、中距離、接近戦等の陸上であるならどんな場面にも対応できる。
水中戦は流石に出来ないが、機動力と重装備がバランスよく作られた機体は浩平に似合った機体である。
スイッチを切り換えることによって、動き方自体を変える事も可能である。
外見はインドラと同じく丸みを帯びたフォルムになっている。
インドラに比べて太いイメージが来てしまうのはしょうがない事だろう。
チェックを終えたメカニック達が機体から離れて行く。
瑞佳はそれを全て確認してから、浩平に声をかけた。
「浩平、立ち上げても良いんだよ!」
『了解』
許可が貰えたところで、何か物を踏まないように立ち上がる。
ゆっくりとした立ち上がり方で、スイッチは立ち上がった。
茜の声が壁の近くから聞こえてスイッチはそちらにカメラを向ける。
「何を持って行くんですか!?」
『その、銃剣の付いたマシンガンを持って行くぞ』
「判りました! 澪さんが、気をつけてって言ってます!」
浩平は茜のその言葉に苦笑しつつ、手を握り親指をつきたてた。
そして並べられた武器の中から、指定した武器ともう一つを手にとって外に出て行った。
「やっと終わったんだもん」
『まだなの、これからが忙しいの』
瑞佳はポツリと言った横に澪が来ていた。
陣地の中は嵐が過ぎ去ったように静かだ。
「そうですね、特にアベレージの2機が帰ってきたら大変ですね」
「そうだね、ともかく疲れたよ」
『先輩はもう御歳なの』
「そ、そんな事無いんだもん」
陣地から機体を送り出したメカニック達は何処も似たような会話をしている。
もう慣れたような物だった。
こういう荒事にも、こんな急な機体の立ち上げにも。
荒事はまだ慣れないかもしれない。
しかし、有夏が機体を使って特訓を始めたとばっちりを見事に受けたのが今までの成果に出てきていた。
これからもっと忙しくなる事は陣地に居る全員が覚悟している。
特にアベレージを中心に受け持っているメカニックたちの顔色は悪かった。
■□ ■□ ■□ ■□ ■□
陣地の外に、みさおの指示の元、全ての機体がそれぞれ配置されつつある。
戦力の分散をするのは痛いが、それは敵も一緒。
しかし、基本的に物量が違う。
こちらは9機。それにはみさおのドールも含まれている。
敵は確認するだけで12機。みさおの頭の中では増援も考えられた。
「有夏さんとみさきさんは後方より来る一隊の相手をしてください」
『了解だよー』
『判った。こちらは任せろ』
敵は攻め落とすだけで良い。
しかし、ONE側は陣地と建物を守りきらないといけなかった。
中にいる人に、被害を出さないために。
そして、これから暴露するニュースの為に。
条件が違うだけでこれほど苦しい事になるんだっとみさおは噛み締めている。
実際に被害が出てからでは遅いのだとみさおは自身の気持ちを引き締めた。
「祐夏ちゃんに繭ちゃんは正面左の森林に配置してください」
『みゅ』
『うん。良い場所を指定してくれて、ありがとう』
「佐織さんに住井さんは正面右から来る一隊の相手を」
『了解』
『判ったわ』
これまでの特訓の成果を最大限、そして効果的に発揮できるは配置をみさおは指示して行く。
みさお唯一の不安があるとしたら、初めて組む事になる有夏とみさきのコンビだけだ。
それ以外は、皆の頑張りを見ている。並大抵な事がない限り大丈夫と信頼していた。
「お兄ちゃんと留美さんは真正面の一隊を相手にしてください」
『判った』
『さて、やるわよ。折原』
『判ってるって、ナナぴー』
『……アンタ終わってから張り倒すわ』
おちゃらけた雰囲気で話す浩平に、みさおはため息を吐く。
浩平独特のリラックスの仕方なのだと理解しているが、それでもなかなかに割り切れない。
なんと言うか、もう少し真面目になってくれないかなぁって思っていたりするが、それが不可能なのだと最近感じ始めた。
思考が変な方向に流れ始めたみさおは頭を振って雑念を排除する。
「敵はエリアO、特務第1小隊です。相手に不足はありません! 今までの成果を発揮しますよ!」
さらりと、重要な事を吐くみさお。
その中で一番慌てたのは浩平と留美だったのは言うまでも無い。
他のメンバーは、よく分からないから良いやと言う者が2人。
相手に不足は無いというものが2人。
そんなもの関係ないというものが2人だった。
誰が誰とは言わないが、性格が出ていることは間違いない。
『マジか?』
「まじだよ」
『まっさか、こんな所で、あいつらと顔をあわせるなんてな』
『折原、さっさと配置に付きなさい』
『あぁ。判ってる』
「指示は出来うる限りこちらから出しますが、判断は各自してください」
浩平の声が引き締まった。
その後に続くみさおの声は頼りない。
これはみさおが指揮官として、まだ未熟だと言う事を配慮しての言葉だった。
本当の戦闘と言う物を体験をした事がない。
現場の事も分からないのだから、指示が理不尽な物になってしまうかもしれないというみさおの心配から出た言葉。
だから、判断を各隊員に任せる事にしたのだ。
可能ならば、指示に従って行動してくれという意味を込めて。
それを最後に誰もが黙った。
緊張感が全てを包み込んで行く。
もっとも、緊張感などと無関係の人も若干一名居るのだが。
それは言わぬが華であろう。
■□ ■□ ■□ ■□ ■□
要塞のような建物を囲むように配置したドールの一団。
軍上層部から、YAタイプが見つかりそれの処理を言い渡された部隊、特務第1小隊。
機体の数は12機。
浩平と留美の両エースが居なくなってからの作戦戦績は5勝1敗。
浩平達が抜けてから立て続けに作戦に駆り出された小隊である。
現在、エリアOにおける最強戦力だった。
「……時間だ。現時点より、作戦を開始する。これは抵抗する戦力を殲滅するための作戦だ。間違うな」
静かな声が通信機を通して、部隊の各隊員に送り届けられる。
部隊の反応はまだ何もない。
熟練を感じさせる部隊であるが、年代的には浩平と同年代の人で組まれている。
部隊の中心に居た2人が抜けて、部隊全体が引き締まったと言われていた。
「各小隊長は、戦力の損耗の内容に注意しろ」
『『『了解』』』
綺麗に揃ったタイミングで3つの声が返ってくる。
2人が抜けてから初めての作戦、無様な敗走した時に、殿をした1人が命を落とした。
それがこの部隊の実力を引き上げる一因となる。
今まで、エースが居たから仲間の死はありえなかった。
知らないうちにエースに頼りきっていたと自覚し、必死になって部隊の構成を考え続けて実力を伸ばしている。
これ以上仲間を失わないために、それぞれが必死になって強くなるにはどうすれば良いかを探した結果だ。
隊長の男は、言うべきか言わないべきか迷った挙句に迷ったそのものを言う事にした。
「上層部の思惑はもう判らないが、敵には折原兄妹、そして七瀬さんらがいる。恩返しをするぞ!」
それぞれの隊員は別々の反応を示した。
それは戸惑いが有るものの、半分以上は嬉しさの混じった物だ。
浩平と留美には恩がある。
それはもう仲間でもないが、自分達が成長したものを見て欲しいという欲求から半分くらい嬉しさが混じってしまうのだ。
2人に助けてもらった事は数え切れないほど、頼ってしまった事も数え切れないほど。
恨みなんてあるはずがない。
だから、嬉しいのだ。例え、敵味方で色分けていても再び手を合わせる事がで切るのだから。
本来ならもう、手を合わせることなぞ出来ないと諦めていたから。
各隊員の言葉に耳を傾けていた隊長の男は、自分の心配が杞憂に終わって良かったと安心している。
「作戦開始! 私たちの実力を見せる時は今だ!」
その声で進軍を止めていた機体が一斉に動き始めた。
3機1組になった4つの隊が独自の動きで行動する。
その12機のうち11機が全く同じ機体だった。
名称、デットエンド
バランス型の機体で、浩平達が軍を辞めた時辺りにバージョンアップをして機体そのものを入れ替えた。
軍内部で開発された物であり、軍に有るデータを存分に活用した物である。
殆どの機体がこれなのは機体の種類を減らす事で、整備率を良くするための措置だった。
ちなみに、これの次からはメイカーの物に切り換える予定だが、それは当分先の話になる。
この機体が性能上で劣り始めたら、その話が具体的になっていくであろう。
標準の大きさのドールで、部隊の塗装である深い青を基調とした塗装になっていた。
武器には個性があるので一概にはそうとは良い切れないがどれも違う武器を装備している。
一つとして同じ装備をした機体はいない。
その中にある異端の機体が一機。
塗装こそ同じものの、先陣を一気に切り、風のような勢いで真正面に切り込む機体がある。
右手のみが不恰好に大きいそれは、一種異様な物を感じさせた。
名称、シヴァ
留美が軍で乗っていた機体を大幅に改造を施した機体。Airの部品を多く使用しており、格闘型。
特務第1小隊の中、唯一の格闘型であり、留美のコクピット部分をごっそりと入れ替えて作られている。
全く同じ機体では戦闘になって切り込めるものがいないと戦闘に幅がなくなってしまう。
そんな欲求から作られたのがこの機体だ。特注機と言っても良いかもしれない。
それだけに部隊の先陣をいつも切り、損耗率の激しい機体でもある。
右手が盾と一体化しており、不恰好に大きい。主な武装はスタンロッドに、刃物が中心となっている。
射撃関係の武器は全くと言って良いほど装備されていない。
射撃関係か解らないが、左手にはパイルバンカーが装備されている。
それぞれの方向から、一気に一糸乱れぬ3機1組の機体が目標に向かって動き始めた。
洗練されたそれぞれ4つの動きは一つの目的地に向かって走る。
To the next stage
あとがき
やってしまいました。説明だけで終わってしまった感じが否めません。
と言うかそのまま、説明だけの回になってしまいました。次から戦闘をさせます。
予想以上に機体の説明に文章をとられた感じがしてなりません。もっとコンパクトに書ける様にしないとって思いました。
それでは次回も頑張りますのでよろしくお願いします。ゆーろでした。
管理人の感想
ゆーろさんから外伝を頂きました。
戦闘の前段階。
同時に頂いた本編には、まだ時間が追いついていないようですね。
各人が乗る機体の説明がメインでしたね。
いろいろ出たんで整理するのが大変です。(笑
相手はかつて浩平達が所属してた部隊ですか。
戦争とはいえ、顔見知りと殺しあうのはきついでしょうねぇ。
部隊の人達もいい人っぽいから尚更。
もしかして、死んだ隊員って小池君なんでしょうか?(だったら更に辛いですな
感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。
感想はBBSメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)