1988年アカデミー賞の主要四部門(作品賞・監督賞・主演男優賞・オリジナル脚本賞)を受賞した「レインマン」を観ました。 今から10年以上前の作品ですが、「傑作」と呼ばれるものはいつ見ても色あせていない、と言うことを如実に語ってくれる作品です。

パッケージにあるあらすじを引用してみます。

事業に失敗して破産寸前のチャーリーのもとに、絶縁状態だった父親の訃報が届く。 恋人とともに帰郷した彼は、遺産が匿名の受益者に贈られると聞いてショックを受ける。 その受益者とは、チャーリーが存在さえ知らなかった自閉症の兄レイモンドだった......。

チャーリーにはトム・クルーズ、そしてレイモンドには主演男優賞を受賞したダスティン・ホフマンが配役されています。

映画自体は自然な流れで進行していき、違和感や疑問はまったく感じさせられません。 普通、何か引っかかる部分があるとそれをずるずる引きずってしまうか、あるいは映画のテンポにのせられて忘れてしまうかのどちらかですが、「レインマン」に限ってはそう言うことはありません。 私は自閉症の人に触れる機会がほぼないか、あるいは作ろうとしていないので、映画の題材そのものは日常として感じることはありません。 しかし、私は素直に映画の中にいるような気分になれました。

「レインマン」のすばらしさはなんと言っても俳優陣の演技と言えます。 私は自閉症の方が実際にどういう生活をされているのかはよく知りませんが、ダスティン・ホフマンの演技は非常にうまく、無知な私は「本当に自閉症の方が演技している」と言われれば、そう信じてしまったかもしれません。 しゃべり方、しぐさ、視線、演技の全てに気が配られており、まさに「よくここまで演じきった」と言えるでしょう。

助演のトム・クルーズもMISSION: IMPOSSIBLE 2とはまた違った魅力があります。 (私は映画の数はあまり観ていないので、あまり比べようがないですが。) 彼の演じるチャーリーは、はじめは遺産目当てでレイモンドに近づき、さらっていってしまいます。 レイモンドに対する扱いも乱暴で、いかにもお金目当てのいやな弟です。 それが、少しずつレイモンドのことを理解し、彼なりに兄へ愛情を持って接していくわけです。 その過程は特に気づくものでもないですが、振り返ってみればよく演じていたと思います。

ラストも非常によいと思います。 ハリウッド映画の大作(「傑作」ではありません)と呼ばれるものは得てして「すっきり解決。ああよかった」と言う映画が多いような気がしますが、「傑作」に分類される「レインマン」はそうではありません。 必ずしも思い通りにはならない、そんな状況の中でのチャーリーの「独白」(実際にはレイモンドに語りかけているわけですが)には素直に感動できます。 私はまだラストではないと思って涙腺を引き締めてしまい、うっかり泣き所を通り越してしまいましたが...。 特にきょうだいのいる方には絶対にじんと来る部分だと思います。

と言うわけで、おすすめの映画です。 昔テレビでもやっていましたが、レンタルする価値ももちろんあります。 お金に余裕のある方にはビデオやDVDもおすすめかもしれません。