電子戦

電子戦

電子戦とは、電波の戦いである。

近代戦においては、最も高度な兵器のひとつとされ、秘匿性が高く、公表情報も少ない。
アンテナの外観から、若干の推定も可能であるが、ドームや箱の中に収められていたり、見えない部分が多い。
更には、処理装置たるコンピュータと、そのソフトウェアが更に重要であるとともに開示情報は無い。


古くは、世の中に無線通信が発祥した段階から始まってはいる。
無線を発すれば、敵も味方も傍受ができるわけで、これを解析できれば、戦争の展開を有利に進めることができる。
ただ、これは、電子戦というより、むしろ諜報活動、情報戦、でもある。


やがて、この電波によって、レーダーが開発され、本来の電子戦が始まる。
レーダーは、居ながらにして広範囲を哨戒できることから、索敵能力に貢献することになるのだが、発する電波を傍受することによって、発する側の存在と活動を認識できることから、敵を見つける以前に存在を暴露する可能性があることから、闇夜に提灯で照らすようなものと、日本海軍ではレーダーに対する認識は低かった。
しかし、レーダーの真価は、存在を晒す問題以上に、敵の位置を正確に認識でき、射撃にも貢献することで、アメリカ軍に貢献した。


本項は、電子戦の概論で、各装置の詳細は、それぞれの装置の項を参照のこと。


IFF 敵味方識別

レーダーが発達すると、肉眼で見えないところから発見ができるが、見えない相手の敵味方の判断が問題となってくる。
味方の正確な位置が常にわかっていれば良いのだが、予定外ということがある以上、確証は無いから、レーダーに見えたから直ちに攻撃してよいというものではない。
ここで確認が問題になる。
おっちら見に行けば、逆に攻撃を受けることもある。
ここでIFF、敵味方識別が必要となる。
これは、装置間で通信し、信号により合言葉で敵味方を判断するのである。
「山」「川」などのやり取りのようなものだ。
一般に、レーダーに取り付けられていて、発見と同時に確認が行われ、その結果が表示される。
イージス艦の場合、回転式の対空レーダーが搭載されていないため、独立してIFFアンテナが装備されている。

Pict_1023.

IFF表示例
Pict_0782.

ESM 電波探知

ESM: Electronic Support Measures は、電子支援手段であり、海上自衛隊では電波探知(装置)を言う。


敵の電波を探知する電波探知は、電子戦のおおもとである。
レーダー電波、通信用電波、ミサイル誘導電波、などを探知し、解析する。
旧海軍では、逆探と呼んでいた。


Pict_1024.

電波探知装置は、無指向性アンテナ、指向性アンテナ、及び処理装置からなる。
受信バンド(周波数帯)は広範囲であることが求められる。
無指向性アンテナは全周を担当し、初期の探知と周波数、方向を特定する。
指向性アンテナは特定の方向範囲を担当し、発信地点を特定する。
この、発信地点を特定する機能を、DF(Direction Finding)という。
広範囲な周波数帯をサーチするための周波数変調には、機械式周波数掃引方式、電子式周波数掃引方式、瞬間周波数測定方式、などがある。
機械式周波数掃引方式は、バリコンなどの機械的に周波数を変えるもの。
電子式周波数掃引方式は、電子制御によって周波数を変えるもの。
瞬間周波数測定方式は、受信電波からダイレクトに周波数を割り出すもの。


AN/BLR-1 ESM
Pict_0790.

NOLR-1 ESM
Pict_0772.

NOLR-5 ESM
Pict_0988.

NOLR-6 ESM
Pict_1048. Pict_0988.

NOLR-6C ESM
Pict_0771. Dcim3293/DSC_6667. Dcim3292/DSC_6612. Dcim3293/DSC_6682.

NOLR-8 ESM
Dcim3333/DSC_2224. Dcim3333/DSC_2223. Dcim3516/DSC_5786. Dcim4197/DSC_3740.

OLR-9B ミサイル警報装置
Pict_0805. Dcim3293/DSC_6660.

NOLQ-1 電子戦装置(ESM)
Dcim3516/DSC_5792. Dcim3130/DSC_2265. Dcim3639/DSC_3417. Dcim3639/DSC_3420. Dcim4194/DSC_3389. Dcim4187/DSC_5386. Dcim4187/DSC_5387.

NOLQ-2 電子戦装置(ESM)
Dcim3515/DSC_5630.

NOLQ-3 電子戦装置(ESM)
Dsc_6498. Dsc_6484.

ECM 電波妨害

ECM: Electronic Counter Measures は、電子対抗手段であり、海上自衛隊では電波妨害(装置)を言う。
ECCM: Electronic Counter-Counter Measures は、対電子対抗手段である。

電波を探知すれば、これを妨害することで攪乱するのは当然の流れで、電波妨害が始まる。
そしてまた、この電波妨害に対する能力も求められてくる。

レーダーに対する電波妨害は、ECMとして有名である。
このECMに対する対抗措置は、ECCMという。
最近は、ECCMも、ECMに含める場合が多い。

近代戦では、ESMとして電波を探知し、ECMによって電波妨害を行う。
相手方のECCMに対しては、更なるECMによって対抗する。

電波妨害には、単なるノイズで攪乱する場合のほか、相手の電波と等質なものを発することで、騙すものがある。

Pict_1026. Pict_1026a. Pict_1026b.

OLT-3 ECM
Dcim3293/DSC_6649.

NOLQ-1 電子戦装置(ECM)
Dcim1204/DSC_2088.

NOLQ-3 電子戦装置(ECM)
Dsc_6493.

米軍電子戦装置(ECM)
Dcim2863/DSC_0785. Dcim3443/DSC_3259.

ステルス

レーダーに対するものとして、ステルスがある。
これは、レーダー反射面を局限し、レーダー反射として「見える」事を妨げようとするものである。
構造面を鋭角にすると共に、電波吸収材などを使用して、これを行う。


マストの電波反射
Pict_0714. Pict_0715.

欺瞞

また、飛んでくるミサイルに対して、ECMなどのほかに、チャフなどで目標を見誤らせる方法も取られる。


チャフ
DSC_6650. Pict_0207.

フレア
Dcim0638/Dsc_8220. Pict_0208.

電波情報収集

IFFの敵味方識別情報や、レーダー電波、などは、敵の秘密を甘んじて受ける必要はなく、絶え間ない情報収集による解析で、能力もわかるし、対応策も取れる。
軍事演習海域に、敵側の情報収集艦艇が集まり、情報収集機が飛び回るのはこのためである。
例えば、IFFの「山」「川」を取得し、組み込んでしまえば、敵と悟られずに接近することができる。
妨害電波を照射し、対する電波変動から、ECM機能を評価したり。
もちろん、このようなことは双方折込済みで、演習など通常時と、戦時で、別信号体系とすることは、当たり前のことである。
詐欺師とペテン師の騙しあいである。


参考
艦載兵器あらかると
レーダー
レーダーとECM
戦術情報処理システム
衛星通信
艦隊通信
マスト
電子兵器
電子戦装置
電子戦
電波の種類




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新規作成日:2007年1月6日/最終更新日:2007年7月14日