blue line

絵のない絵本式乗馬教室 (第17鞍)

blue line

「先生、こぶで出汁を作ろうとしたら、沸騰寸前に出汁が青くなってしまったんです。」

「ああ、それは水に問題があるんです。」

「どういうことなんですか。」

「きみはヨードデンプン反応って知っていますか?」

「確か、中学で習ったけれど忘れちゃった。」

「簡単に説明すると、デンプンがあるとヨードの溶液を加えると色が変わります。この反応は塩素があると起こりやすいのです。使った水道の水には殺菌のため塩素が添加されています。その濃度が高すぎると、こぶに含まれているデンプンとヨードが反応して青い色がついてしまうのです。一度沸騰させた水を使うといいと思います。こぶに問題はありません。」

「ところで、先生、先生はどうやって出汁をとるのですか?」

「まず、鍋に水を張って、こぶを入れます。そのとき、こぶは決して洗いません。こぶの表面についている白い粉はマニトールという糖で、これは食べても消化も吸収もされませんが、ほのかに甘みがあり、うまみの成分です。マニトールは食品添加物としても認められていて、アイスクリームの増量剤などに使われます。また、脳がむくんだときに利尿剤として20%の水溶液を静脈注射することもあります。えーと、それから、腎機能の検査にも使います。話がそれました、こぶを入れてから1時間くらい置いておきます。それから弱火と中火の間くらいで加熱し、沸騰直前に取り出します。」

「先生、どうして沸騰する前に取り出すのですか?」

「それは、こぶにはラミナリンという糖が含まれていますが、沸騰するとこれが出汁の中に出てくるからです。ラミナリンはねばねばしていて、出汁が重い感じになってしまいます。」

「先生、ラミニンではないんですか?」

「違います。ラミニンは細胞外マトリックスを構成する十字架の形をした巨大なタンパク質です。分類学で、コンブ科のことをLaminariaceaeといいますが、ラミナリンはここから命名されました。ちなみに、語尾がinで終わる単語は化学物質という意味になるので、こぶで見つかった化合物ということになります。いかん、また、話が横道にそれました。こぶを引き上げて、沸騰したら、かつお節を入れます。入れる量は、え、こんなに、と思うくらい多めに入れます。一煮立ちしたら火を止め、かつお節が沈んだら、こします。この時、決して出汁をたくさん取ろうと、かつお節を絞ってはいけません。かつお節から苦みが出てしまいます。」

「先生、どちらか一方の出汁ではいけないんですか?」

「こぶのうまみ成分はグルタミン酸です。かつお節はイノシン酸です。片方でもいいのですが、両方あると相乗効果で、うまみが20倍に増すと言われています。こぶから出汁を取るのは時間がかかるので、忙しい時は、かつお節だけで出汁を取り、ベトナムやタイで使われるニョクマムとかナンプラーを隠し味に使います。これらにはグルタミン酸が沢山含まれているので、こぶ出汁をとる必要がありません。ただ、塩分が多いので入れすぎに注意した方がいいでしょう。」

「それってどこで売っているのですか?」

「近頃はエスニックブームなので、スーパーなどを探せば、結構、簡単に見つかりますよ。」

「先生、日本にはそういうのはありますか?」

「あります。有名なのはしょっつる鍋にいれるしょっつるです。これはハタハタを塩漬けにして、発酵させたものです。」

「香川県にはイカナゴという魚から作ったイカナゴ醤油というものがあります。石川県にはイワシやイカから作ったいしるがあります。」

「先生、その他にグルタミン酸が多い食品ってどんなものがありますか?」

「エーと、まずトマトかな。ナポリより南のイタリア料理には欠かせないものですが、あれは、グルタミン酸のうまみを使っているのです。」

「それから、今、噴火で大変な三宅島特産のくさやですね。」

「キムチもそうですが、KIMCHI国際規格のものではグルタミン酸の添加が認められています。キムチには乳酸菌がいて乳酸発酵が起こっています。グルタミン酸添加キムチでは、日数がたつと乳酸菌の酵素グルタミン酸デカルボキシラーゼの作用によりグルタミン酸が脱炭酸されてγ-アミノ酪酸という化合物が作られます。γ-アミノ酪酸は中枢つまり脳の神経のうち、抑制性の神経の働きに関係ある物質で、血圧を下げる効果が知られています。しかし、この物質は消化管から吸収されないので、食べても効果はありません。最近、キムチ鍋がはやっているそうだけれど、まあ、あまりたくさんは食べない方がいいでしょう。あ、辛いものといえば、辛子明太子にも、多いです。」

「先生、そのほかにおこりっぽい人を鎮めるものはありませんか?」

香辛料のサフランがそういわれていますが、有効成分が何かはまだわかっていません。あ、それから月経困難症にも有効かも知れません。今度、おいしいサフランご飯の作り方を教えてあげます。うちでは、七面鳥はあまりおいしくないので、 シャモ(軍鶏)というどう猛な鶏がいますが、クリスマスにはシャモの腹にサフランご飯を詰め込んで、オーブンで焼きます。」

「先生、鶏といえば、鶏ガラで出汁を取ろうとしても、うまくいかないんですが?」

「それはブロイラーを身動きできないケージで、しかも、高栄養で抗生物質入りの飼料で、短期間飼育した鶏のガラを使っているんじゃないんですか?」

「その辺のスーパーで買ってきたので、わかりませんが、多分そうかも知れません。」

「食品というのは健康を保つために大切なものです。それに、単なる栄養を摂取するだけでなく、おいしいに越したことはありません。そのためには、どこの誰がどうやって育てた鶏かがわかっているものがいいと思います。私の使っている鶏ガラはそういう鶏ガラです。抗生物質は雛を鶏舎に移す前に、1回だけ注射します。飼料は法律で決まっている添加物のみを添加して、もちろん抗生物質は無添加で、遺伝子操作した穀物は使っていません。」

「鶏は平飼いで育てます。平飼いとはケージではなく、鶏は自由に地べたを歩けます。餌が飛び散ったり、鶏が動く分エネルギーを消費するので、飼料の効率が悪くなります。ケージと違って成長にも時間がかかります。そのため、幾分高価です。良い食品とは、安い食品ではなく、おいしくて健康にも良いものを言います。食べる側だけでなく、鶏も健康で骨も関節も丈夫です。鶏ガラスープをとるため、長時間煮込んでも、バラバラになりません。しかも、良いスープがとれます。もちろん、肉も食べて安心、しかも、おいしいです。あの、ブロイラーでさえ、こうやって育てたものはおいしいです。」

「あ、そういえば、私の使った鶏ガラはたった2時間でバラバラになってしまいました。」

「あ、それから低栄養で育てた平飼いのシャモを使えば、絶品のスープがとれます。このスープと、このシャモ肉とで作ったチキンライスは、とてもおいしいです。」

「私のところでは、玉子ももちろん、平飼い卵を使っています。」

「先生、鶏って飛べないんですか。

「南太平洋のニューカレドニアのマレという電気のない島へ行った時のことですが、鶏は昼間はその辺をうろついていて、昼食を取ろうとすると集まってきて食べ物をつっつくので、追い払いながら食べました。そうすると、刃向かってきて、手をつついたりするので、往生しましたが。そいつらは、かなり高く飛ぶことができて、夜になると10mくらいある木の上で寝てました。ああ、それから、夜は羽ばたくと翼の幅が80cmくらいあるコウモリがばさばさ飛びます。ちょうど新月だったので、電気のある島へは飛行機で30分くらいかかるので、真っ暗で、星空が恐ろしいほど、きれいでした。」

「島での食事はこの鶏とタロイモが中心でした。だいたいいつも、1人あたり、1食で鶏1羽とタロイモを1kgくらい食べます。その辺をうろつき回っているので、鶏はおいしかったですね。野菜はあまりありません。牛乳は牛がいないので、ありません。それから、果物はジャングルで採ってきたパパイヤとかマンゴーで、形は小さいけど、味、香りとも強いので、おいしかったです。」

「あ、ずいぶん話が長くなってしまいましたね。では、練習を始めましょう。」

メアドはトップページの下の方にあります。

/* (C) 2000- YFプロ. All Rights Reserved. */


トップへ戻る

サイトマップ

戻る

提供:C言語講座:それ自体コンパイルできる教材を使った講座です。