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絵のない絵本式乗馬教室(第18鞍)

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ヒエー、きもい

「ああ、それはオオミスジコウガイビルです。夕べの雨で出てきたんでしょう。」

「これ、1m近くありますね。オオミスジコウガイビルでも大きい方だと思います。」

「これ、血を吸うんですか?」

「いいえ、吸いません。血を吸うのは沼や田圃の中にいるチスイビルと言うやつです。」

「じゃあ、ヒルに血を吸われないためには水の中でだけ注意していればいいんですね。」

「そうとも限りません。陸生のヒルにヤマヒルと言うのがいます。これは血を吸います。私の印象では、南アルプス南部の薄暗い所に多いと思います。特に、雨の日はたくさん出てきます。地面にいるやつは靴からはい登ってきて、ズボンの中に入り、吸血します。怖いのは、上から落ちてきて首筋から吸血します。とても怖いし、気味がわるいです。」

丹沢山塊って、神奈川にありますよねえ。たしか、あそこに蛭ケ岳という山があると思うんですが、あそこもヒルが多いんですか?」

「行ったことがないので、よくわかりません。でも、多分多いのでしょう。蛭ケ岳に限らず、蛭という字のついた地名はヒルが多いかも知れません。例えば、伊豆の韮山町に蛭ケ小島という所があります。この地名は”野ざらし紀行”の旅の途中で、芭蕉其角へ送った書簡にも表れています。このほかにも蛭という字がついて有名な場所に、木曽の蛭ケ野湿原があります。これなんかはヤマヒルではなくチスイビルかも知れません。」

「先生、蛭馬って何ですか?」

「ああ、それは馬の名前です。そういう名前の馬がいるんです。」

「先生はヒルに血を吸われたことはあるんですか?」

「私はありません。吸われた人を見たことはありますが。」

「吸われて痛くないんですか?」

「吸われている時は何も感じないそうです。後で痛むようです。ヒルは吸血する時、ただ、吸血するだけでなく、色々なものを相手に送り込みます。蚊が吸血する時もそうですが、麻酔作用のある物質を注入します。もし、蚊が相手の痛点を直撃してしまったら、気づかれてすぐに叩きつぶされてしまいます。それから、ヒルの場合はヘパリンヒルジンという抗凝血作用物質、簡単に言えば血液が固まらないようにする化合物も注入します。このため、ヒルに吸われた後は血がなかなか止まりません。でも、恐れることはありません。吸われたところを水道の水などの清潔な流水で良く洗ってやって、ヘパリンとヒルジンを洗い落としてやれば良いのです。ヒルジンは名前からわかるように、日本で発見されました。最近は、ヒルジン誘導体、つまり、ヒルジンの化学構造を少しいじったものを、血液凝固抑制剤として使えないか検討されているそうです。ヘパリンの接頭語ヘパは肝臓のことです。高等動物はヘパリンを肝臓で合成しています。ヒルに肝臓があるかどうかは知らないので、ヒルではどこで合成してるか知りません。」

「先生、じゃあ、ヒルジンを取るためにヒルをたくさん飼わなければならないんですか?」

「そんなことはありません。バイオテクノロジーで、ヒルジンの遺伝子を微生物の遺伝子に組み込んで、微生物に合成させます。」

「先生、ほかにも血を吸う生き物はいますか?」

「まず、ウシアブがいます。これは大きなアブで、体は非常に硬いので叩いてもなかなか死にません。ヒルと違って麻酔作用のあるものを注入するわけではないし、口もかたいので刺されるとかなり痛いです。馬などは尻尾でアブを良く追い払っていますが、尻尾の及ばない所を刺されてしまいます。」

「次は、ブヨでしょう。アブを小型にしたような形をしていて、群をなして押し掛けてきて、あちこち刺されてしまいます。本州では主として、高原や山に多いですが、北の方へ行くほど多くなります。更に北へ行って、ハバロフスクヤクーツクでは、夏になると大変らしいです。あちこちたくさん刺されると、赤くはれあがったり発熱することもあります。」

「ブヨより更に悪質なのが、ヌカカです。とにかく大量に押し寄せて来るので、手で追い払うことは不可能です。非常に小さい虫で、袖から進入してくるし、髪の毛の中にも入ってきて刺します。時には、鼻の穴の中を刺そうとする奴もいます。アカバネウイルスを持っていることがあり、これに牛がさされると牛アカバネ病になることがあります。」

「先生、刺されたのに気づかなくて、どんな虫に刺されたのかわからない時はどうしたら良いですか?」

「ああ、その時はいつ、どこで刺されて、刺された跡はどうなったかで、判断できます。」

「先生、話は少し変わりますが、虫の大群って見たことがありますか?」

「あります。たとえば、雪虫(トドノオオワタムシ)は雪国で雪の降る季節が近づくと、大群が出現します。これなんかは、かわいい方です。磯へ行けばフナムシの大群がいます。」

「でも、こんなのは少し気持ち悪いくらいで、そんなでもないですが。君はキシャヤスデって知ってますか?」

「いいえ。」

「1976年の秋、清里や野辺山周辺で大発生して、小海線のレールの上のヤスデを、汽車が轢いてしまい、ヤスデの体液で車輪が空回りして進めなくなってしまいました。それで、キシャヤスデと命名されました。」

「先生、そのころ小海線に汽車が走っていたのですか?」

「いいえ、C56型が使われたのは1973年までです。キシャヤスデは8年に1回大発生しますが、私の見たのは1965年の大発生で、この時はまだ汽車だったので文字通りキシャヤスデでした。しかし、当時はハバヒロヤスデと言っていたような記憶があります。ついでに言っておくと、小海線には馬流駅(まながし)という駅があります。近くの川で、馬が流されたのでしょう。中央西線には洗馬(せば)と言う駅がありますが、馬を洗ったのでしょう。」

「え、なぜ8年に1回大発生するかというと、普段は地中にいて落ち葉を食べていますが、8年で成虫になり、交尾のために地表へ出てきて、その辺を歩き回るのです。最近の大発生は今年、つまり2000年に見られました。私が見たのも虫で地面が見えないくらいで、相当気持ちが悪かったけれど、更に悪いことには踏んづけなければ歩けなかったことです。一歩足を踏み出すたび、ブチブチといやな音がしました。」

ヒエー、きもい

「あ、ずいぶん話が長くなってしまいましたね。では、練習を始めましょう。」

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