ハイテク昔話 「第3話」 2000.09.29



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このサイトにアクセスして下さる方々は、圧倒的に若い(1948年生まれの私から見て)人が多いと思います。そこで、パソコンが世の中に出てくる前から、普及する頃の極私的な経験を昔話風に紹介します。そして、それを通して、パソコン普及に伴って何が進歩したか、何が変わらなかったか、何か新たに問題になったことはないかを見極めようというページです。徐々に、量を増やしていく予定です。思い出した所から書きたい、項目は年代順に並べたいという二つの希望から、書いた順序がバラバラです。おまけに、量が増えるに伴って、記事が別のファイルに移動する可能性もあります。なるべく、掲載した日付を付けますのでご勘弁下さい。



1961年にIBMからセレクトリック・タイプライターがでました。当時13才であった私には知るよしもありませんでした。

1973年10月第4次中東戦争が起こり,アラブ産油国は石油生産の削減と原油価格の大幅引き上げを行い,“第1次オイルショック”が世界を襲いました。日本は急激なインフレとなり、当時、大学院に通いながら家庭教師のバイトをしていましたが、2ヶ月おきくらいに、月謝の値上げをしていました。1975年になると、IBMのタイプライターは円高の影響で相対的に安くなり、研究室で購入可能な値段になりました。今日はこのタイプライターの話をします。

「セレクトリック・タイプライター」とは

前にも書いたように、1971年、私は大学4年生でした。ブラインドタッチでタイプライターを打つことができるようになったばかりでした。その頃、IBMの営業の人が研究室に見えて、新しい電動タイプライター「セレクトリック・タイプライター」のデモを行いました。当時の円の安さ ( 変動相場制が一時的に固定相場制になって、1ドルが308円でした ) からいって、非常に高価なもので、とても購入を検討するような値段ではありませんでした。1971年のデモで見たものはA4で何ページ分かを記憶でき、後でミスタイプを発見した時、その部分を直し、再度打ち出すことで訂正できました。また、何度も同じものを打ち出すことができるので、手紙の場合宛名だけを変えて打ち出せば、その人宛にわざわざタイプしたように見えるので、特にビジネスレターには有効に見えました。1975年頃に研究室に入ったものは廉価版で、この機能はありませんでした。

このタイプライターの今までにない特長は、印字の方法です。それまでは先端が活字になっているキーがインクのしみ込んだ布製のテープ ( インクリボン ) を叩いて、文字を紙に印字していました。電動タイプライターでも、キーを叩くことと、改行をモーターの動力で行うだけで、この原理は変わりません。しかし、このタイプライターでは、根本的に違いました。印字はゴルフボール大のプラスチック製のボールで行いました。表面に文字が並んでいました。キーボードを叩くと、このボールが猛烈な勢いで回転し向きも変え、該当する文字をリボンに叩き付けます。リボンは使い捨てで、インスタントレタリングのようなものです。インクリボンに比べて、格段に印字品質が向上しました。ボールが字を打つので、今までのタイプライターの欠点である速く打ちすぎるとキーどうしが絡み合ってしまうという欠点が完全に解消されました。また、ボールを取り替えることで、パイカとかクーリエとか、フォントを変えることができました。とくに、科学技術関連ではギリシャ文字や数学の記号も打てるようになったので、格段に便利になりました。

これだけ進歩してもミスタイプはなくなりません。しかし、このタイプライターには画期的な訂正機能がありました。訂正用の白いリボンが付いていて、ミスタイプした箇所へ戻ってミスタイプしたのと同じキーを叩くと、その字を消してくれます。しかし、機械式なので、ミスタイプに気づかずにシングルスペース換算で20行くらい打ってしまうと、その箇所へ戻しても微妙に位置が変わり、完全には消えないことが多かったようです。しかし、それでも今までのものに比べ、格段の進歩です。また、運転音が非常に小さかったのもすぐれた点だと思います。

このボールはプラスチック製でした。非常に硬い材質でしたが、その分ねばり強さがなく、欠けやすかったことを覚えています。このボールはピンひとつで本体に固定しますが、固定の仕方が悪いとキーボードを叩いたとたん、どこか遠くへ飛んでいき欠けたり割れてしまったりすることが時々ありました。高価なものなので、責任を感じました。

一世を風靡したIBMの電動タイプライターは、新型の電子タイプライターの発売とともに生産中止になり、1998年には保守サービスも停止になりました。文章はワープロソフトで作り、プリンターで印字することが多いと思います。英文タイプライターは不要でしょうか。そうは思いません。例えば何かの申込書にサインをし、その下にタイプライターで名前を印字するなどの用途が考えられます。文章を作る道具としての用途はなくなったと思います。

それにしても、官庁への申請書類などを提出するためワープロを使った際に、決まった枠内に文章を入れるのに苦労したことがありませんか。一太郎などのワープロソフトの形式で、罫線の情報を公開してくれたら、随分、人的資源の節約になると思います。



なるべく正確を期していますが、当時の資料が不足しているので思い違いや間違いがあるかも知れません。何かお気づきの点があればメールをいただけると助かります。メアドはトップページにあります。




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