北方領土問題

北方領土とは、国後島、択捉島、歯舞諸島、色丹島の、いわゆる北方四島の事である。
古来より、我が国固有の領土であったが、太平洋戦争の終戦前後に、ソ連軍が侵攻し、以来占領が続いている。

我が国では、ソ連軍による占領は、法的根拠による正当性がないとして、返還を求めている。

しかし、現実はどうであろうか。

情けない我が国の外交政策では、もともと外交交渉自体、困難極まりないのだが。

そもそも、「ソ連軍による占領は、法的根拠による正当性がない」とはどういう事だろうか。
太平洋戦争直前期、日本は、ドイツ、イタリアと、三国同盟を締結していた。
また、ドイツはロシアと不可侵条約を締結していたが、これを破棄してソ連領土へ進攻した。
これに対し、日本は、ソ連と不可侵条約を締結した。
ソ連にとっては、相手をドイツに限定できるし、日本にとっても、北の脅威をなくす事ができる為である。
−不可解なのは、三国同盟でありながら、ソ連と戦争しているドイツの支援にならない条約を、日本が締結している点である。−
その後、昭和16年12月8日、我が国はアメリカ、イギリスなどに宣戦を布告し、太平洋戦争が始まった。
緒戦の奇跡的な勝利に酔いしれた我が国は、1年を待たずして防戦に努める事になる。
やがて、本土決戦を覚悟した時期、我が国は、最後の「非戦闘国」であるソ連に望みを託し、和平調停を目論む。
しかし、戦争の早期終結を図るアメリカと、機に乗じた領土的野心を持つソ連は、対日戦線を共同する事でも合意した。
やがて、ソ連は不可侵条約を一方的に破棄し、千島、樺太に侵攻する。
その後、平和条約締結に際し、我が国は、海外領土の放棄を決めた。

問題点は、ソ連軍による占領の正当性と、海外領土の放棄の範囲である。
「ソ連軍による占領の正当性」は、そもそも「不可侵条約」とのからみで不当であると言うのが、見解の一つであり、連合軍の方針のなかにも、ソ連軍による侵攻は規定されていなかったとするものである。
−敵方の作戦方針に、正当性を依存するのも、違うような気がするのだが−

国民感情的には、「ソ連が不可侵条約を一方的に破棄し、我が国領土に侵攻し占領した」点も、問題では有るが、およそ全ての国家は、領土的野心を持ち、機会あれば、領土拡大政策を取るのは自然である。
また、「不可侵条約」も、結局は対等の力関係であれば、相互保全されるが、余りにも力のバランスを失った場合、効力を持たない点は、条約のもう一つの姿でも有る。

「海外領土の放棄」は、明治維新以降の、我が国の領土拡大における、成果としての領土を放棄したとして、それ以前の領土は、固有の領土として放棄の対象としていない。
その為、「北方四島は、我が国固有の領土であり、放棄していないから、不当に占拠を続けずに返還せよ」と言うのが、返還要求の論拠である。

また、ソ連側の、現状に対する、論拠、判断は、詳細に聞こえてこないのも、対抗要件に苦慮する所であろう。

しかし、有史以来、戦争の歴史は、領土権益の拡大であり、その成果を、戦後、簡単に放棄するという例は、ほとんど見ない。
その意味で、国家戦力による占領を「不当占拠」だから「返して」などと言っても始まらない。
戦争の結果、失った領土として考えれば、別の政策も出てくるような気がする。

日露関係の今後を考えるに当たって
北方領土の別なる問題


戻る TOPに戻る

新規作成日:2002年2月21日/最終更新日:2002年3月7日