有限会社大内建築設計事務所

コラム


・耐震診断測定機器(鉄筋探査機)のご紹介と苦労話
 
 建物の基礎コンクリートは以前は明確な規定がなくて、基礎配筋の規定が定められたのは、2000年(平成12年)からです。古い建物では内部に鉄筋がない、いわゆる無筋コンクリートが多く施工されていした。無筋コンクリートは強度が弱く、ひび割れの生じやすいため、鉄筋の有無は基礎コンクリートの強度に大きな影響があります。耐震診断では、基礎鉄筋の有無が評点に影響します。補強設計を行なう前程として精密診断を実施しますが、精密診断では床下に入って基礎コンクリートの鉄筋の有無、、鉄筋の深さ、間隔を調査する必要があります。
 調査する機器は、ホームショップで売っている比較的安価なものから、プロ仕様の高価なものまで豊富にあります。耐震診断で最初に行なう一般診断では、床下には入らないため、外壁側から調査する簡易的な測定機器を使用します。精密診断では、床下に入り、精度の高い測定機器を使用して調査を行ないます。
 床下内部は高さが低くて(大引の下が20p程度の建物もあります)、調査をするのは大変な労力を要します。高さが低い場所は、可能な限り地面を掘って進みます。精密診断で床下の調査を行なうと2〜3日は体の節々が痛くなります。特に、地面を這うため腕が痛くなり、狭い空間を移動するため胸が圧迫され、翌日から痛みが出ます。また、床下には白蟻駆除の薬剤やカビなど人体に有害なものがあるため、完全防護で調査を行なう必要があります。汗だくで体中土だらけになります。耐震診断を始めたころは、外に出れなくなるのではないかという恐怖心がありました。

  
ボッシュ製の探査機です。当事務所では精度により3機
種を使い分けますが、中間の精度のものです。       床下に防蟻剤がない場合は簡易なマスクを使用します。




・家具の転倒・落下防止も大切です
 
 大地震で揺れている最中は揺れが大きく歩いて逃げる余裕はありません。建物の倒壊を免れても、家具の転倒や落下などで大けがを負う可能性があります。建物の耐震補強が難しい場合は、次善の対策として、家具の固定等を行なうことにより被害の軽減につなげることもできます。個人で取り付けるのが難しい場合は、区役所に頼めば業者を紹介してもらえます。


出典:「日本経済新聞 2025年8月30日 朝刊、坂本君子ライター」