「これが普通のサバです。こちらがエステしているサバです。エステの効果で、流線型でスマートな体形をしています。」
「どういうことなんですか?」
「クロマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロ、カツオ、メカジキ、マカジキなどと同様、サバやアジは本来は回遊性の魚です。回遊しているということは、たくさん泳いでいるように見えますが、潮に流されているということです。また、時には餌不足でやせてしまうこともあります。ところが、サバやアジの一部には潮つきの魚といって、ある場所にとどまっているのがいます。こういった魚は栽培漁業の対象になります。潮つきの魚として有名なのが豊後水道にいるサバやアジです。」
「海で水道がつかえるんですか?」
「ここでいう水道とは外海と内海を隔てる海峡のことで、ひねれば水の出てくる水道のことではありません。」
「話を戻します。ここは潮流が早く、餌も豊富です。一カ所にとどまっているためには、一生懸命泳がなくてはなりません。特に、豊予海峡は豊後水道が更に狭まっていて、非常に潮流の速い所です。この海峡の九州側に佐賀関町があります。ここの漁師が一本釣りでつり上げ、活きじめにしたのを関サバ、関アジといいます。身が締まっていて、非常においしいです。それに、光沢がとてもきれいです。一般にサバやアジというと、大衆魚です。それにサバといえば、サバの活きぐされというくらいいたみやすい魚で、サバアレルギーになった人も多いと思います。ところが、不思議な事に関サバは鮮度のいい状態が長く続きます。そこで、東京にも出荷されています。関サバや関あじは高級魚です。東京で、関サバ1匹で5,000円くらい、関アジは3,000円くらいします。サバというと冬が旬ですが、関サバは一年中おいしく食べられます。」
「ずいぶん高いんですね。でも、どこへ行けば買えますか?」
「デパートで売っていることもありますが、大半は高級料亭へいってしまうようです。」
「潮つきのサバやアジでそのほかのブランドはありますか?」
「同じ魚ですが、関サバ、関アジの名前は商標登録されて、使えなくなったので、佐賀関町の向こう岸、四国の三崎町では、同様に1本釣りで、活きじめのものを「岬(はな)あじ」「岬さば」として、売っています。こちらの方が、少し安いようです。」
「一本釣り あくね華(はな)アジというブランドのあじは、鹿児島県の阿久根市と、漁協一本釣り協議会が、阿久根市の沖合で1本釣りでとれた、活きじめの瀬つきアジのことです。ごんあじは、長崎の五島灘の瀬付きのアジのブランド名です。同様に山口の瀬つきアジはブランドの名前はありませんが、おいしいです。東京近辺では、三浦半島の葉山沖で潮つきのシャンパンゴールド色のサバが釣れるそうです。これなどは、三浦半島出身の人でも名前だけは知っているが、見たこともないという幻のアジです。」
「イトヒキアジって、どんなアジなのですか?」
「ああ、それはこの写真を見て下さい。」
「ところで、君はアジを三枚におろせますか?」
「残念ながら、できないんです。やり方を教えて下さい。」
「まず、手を洗います。調理の前に、君はどんな方法で手を洗いますか?」
「衛生を考えて、薬用石鹸を使います。」
「それはいけません。固形の石鹸は使っているうちに、細菌の巣になってしまいます。必ず、液体の石鹸を使って下さい。普通の石鹸と逆性石鹸を用意します。まず、普通の石鹸で手を洗います。この時、流水で石鹸分を十分に洗い落として下さい。石鹸の成分が手に残っていると、逆性石鹸の殺菌効果が減ってしまいます。次に液状の逆性石鹸を手につけ、30秒待ちます。それから、流水で十分に洗います。」
「次にアジをたっぷりの流水で洗います。特に西日本や沖縄などの海水が温かい地方の魚は十分に洗います。なぜかというと、最近、地球温暖化の影響で海水温が上昇しています。今までは、もっと南の海にしかいなかった殺人バクテリアが付いているかも知れないからです。殺人バクテリアの付いた状態で食べてしまうと、潜伏期が過ぎると、体中の筋肉が溶けてしまい、死んでしまいます。ニューヨークの殺人ウイルスとは違って、こっちはバクテリアです。このバクテリアは真水で洗うと死んでしまうので、充分洗って下さい。殺人バクテリア以外にも、魚の体表には食中毒菌として有名な腸炎ビブリオ菌が付いていることもあります。海水温の上昇のため、腸炎ビブリオ食中毒が北海道でも起こってます。このバクテリアも真水で洗えば死滅します。」
「次にムナビレを持ち上げ、付け根のところで、出刃包丁を使って頭を切り落とします。シリビレの付け根から、はらを開きます。ワタを抜いたら、また流水で良く洗います。これも、腸炎ビブリオ菌対策です。」
「次に、オビレの付け根の肉の薄いところを、出刃包丁で垂直に軽く叩きます。すると、中骨のところで包丁の刃が止まるので、包丁を傾けて、魚体の前方へ向けて、中骨のごく近くを鋸をひく時のようにごりごりやるとうまくおろせます。反対側も同様にすれば、三枚におろせます。身の方は皮をむきます。この時、ゼイゴに気をつけて下さい。指に刺さって痛い思いをします。皮をむく前に、ゼイゴを包丁で削り取っておくのが良いでしょう。あとは、あばら骨のところを切り取って終りです。ああ、それからアニサキスの幼生が魚肉に食い込んでいたら、取り除きます。水揚げしてから時間がたつと、内臓にいたアニサキスが息苦しくなって、魚肉の方へ移動することがあります。」
「先生、アニサキスって何ですか?」
「クジラやイルカの胃に寄生する寄生虫です。アニサキスの卵は海水中で孵化して、幼生になります。それをオキアミが食べます。そして、オキアミは魚に食べられて、その魚をイルカが食べて、イルカの胃に最終的に寄生します。クジラはオキアミを食べるので、クジラの胃には魚を介さずに寄生します。クジラやイルカの胃で最終的に成体になります。」
「おっと、中骨は捨てないで下さい。水から煮て、沸騰直前に取り出せば、吸い物の良い出汁がとれます。沸騰してしまうと、生臭くなってしまうので、注意して下さい。それから、骨せんべいにするという手もあります。」
「イワシの時は、イワシの手開きといって、手でやりますが、ぐちゃぐちゃして気持ちが悪いので、私は出刃包丁でやります。その方が、きれいに仕上がります。」
「いつ食べるかによります。朝なら、玉子ご飯に、みそ汁、それにアジの干物を焼いたやつ。焼きすぎると、油が落ちてぱさぱさになってしまうので、焼きすぎないように注意が肝要です。昼なら、フィッシュアンドチップスの感覚で、アジフライでしょう。」
「夜となると、色々考えられます。夜にアジの干物は、貧乏臭いと思います。あれは、朝食だからいいんです。日本酒を飲みながらだと、アジのたたきがいいでしょう。ビールだったら、アジの南蛮漬けが良くあいます。ワイン、特に、赤ワインと南蛮漬けはあいません。酢がいけないんです。白ワインだったら、アジのムニエルが良いかも知れません。」
「ちょっと話がそれますが、ハンガリーのトカイというワインには、何があいますか?」
「ああ、あの甘いワインですね。レアチーズケーキでしょう。甘いものには、甘いものがあいます。」
「あ、ずいぶん話が長くなってしまいましたね。では、練習を始めましょう。」
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