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絵のない絵本式乗馬教室

第7鞍:速足に再挑戦

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「今日は速足に再挑戦します。」

「先生、その長い鞭とロープは何に使うのですか?

それについては後に説明します。まず、馬に乗って、今日も屈伸20回、馬上体操をして下さい。では、馬場をなるべく速い並足で回って下さい。随分慣れてきたようですね。」

「それでは並足で、馬場の中心にいる私の方へ向かって下さい。はい、そこで止まって下さい。手綱は完全に緩めて下さい。鞍を良く見て下さい。鞍の最前部を前橋といい、最後部を後橋といいます。前橋の馬の背骨に当たるところに、隙間がありましたね。これは、馬に乗る時に使いました。このロープは馬の轡 ( くつわ ) に付けます。ロープをのばして、馬をこの鞭で追えば、馬は私の好む速さで円形に走ります。初心者の練習や、人を乗せたことのない馬の調教に使います。」

「今日はこのやり方で、速足に再挑戦しましょう。今日は昨日より落馬の可能性が高いので、落ち着いて乗って下さい。まだ、馬に乗ったまま鐙の長さの調節はできませんね。では、特別に、私がやって上げましょう。どうですか。少し、安定するでしょう。最初はゆっくりした並足で、だんだん速度を上げていきます。ああ、速度を上げることを、乗馬では歩度を上げるといいます。」

「では、始めましょう。え、どうしたんですか。普通の乗馬姿勢になって下さい。手綱も軽く引いて下さい。え、どうしたんですか。昨日みたいに、体ががちがちに硬くなってます。姿勢を正しくして、無用な力を抜いて下さい。」

「大丈夫ですよ。今日は速足といっても、それ程スピードを、おっと、歩度を上げませんから。今日は、速足になっても、絶対に手綱は引かないで下さい。たとえ引いても、馬は後ろから鞭で追われているので、それは無駄です。馬は初心者であるあなたではなく、ベテランの私のいうことを聞きます。それに、手綱を引くより、鞭の方が馬には強い命令です。」

「では、今度こそ始めます。これが普通の歩度の並足です。2周しましょう。馬は輪乗りをさせられるので、馬にもあなたにも、遠心力がかかります。今は並足だから大したことはありませんが、速足になると一挙に遠心力が強くなります。馬体は円の内側に傾きます。あなたも、馬と同じ角度で体を内側に倒して、馬の重心と一致させないといけません。そうしないと、遠心力で円の外側の方向にはじき飛ばされます。この点、特に注意してください。」

「それでは、速足にします。このくらいの歩度の速足ならだいじょうぶでしょう。あ、ちょっと、なぜ体が前後左右に揺れるのですか。速足は体が上下に揺れるはずですよ。鐙を強く踏み込みすぎです。膝の内側で馬を軽くはさみ、鐙を踏み込む力を弱くして下さい。それから、馬と重心が全然あっていません。あなたの体は外側に、つまり、振り落とされる方向に傾いています。体を、内側にかたむけて。それから、がちがちに硬くなってます。硬くなっていると、振動がぬけません。あ、なぜ前橋をつかむんですか。あ、鐙が両方ともはずれたんですか。じゃ、馬を止めます。あぶみは足の一番広いところで踏んで、かかとは心持ち開き加減で下げる。これが、基本です。」

「鐙を基本通りに踏み込んで下さい。呼吸が乱れていますね。では、がちがちに硬くなった体をほぐすため、並足で少し馬を歩かせましょう。リラックスして、乗って下さい。だいぶ落ち着きましたね。」

「では、速足を始めます。これは一番ゆっくりな速足です。手綱を少し緩めて、締め付ける足の力を少し強くして下さい。速足は馬の対角線上の足を交互に進めるので、2拍子で強い振動が来ます。お尻が鞍に着地する時、その衝撃を馬の重心の方向に伝えます。そうすれば、体が前後左右に揺れたりしません。そうすれば、うまく乗れます。だからといって、振動が楽になるわけではないですが。」

「あ。あ、どうしたんですか。馬を止めます。すごい格好になってしまいましたね。良く、そんな格好で馬にしがみつけますね。頭が下になってますよ。足がどうして馬の首の付け根にあるんですか。あ、右の靴が鐙に食い込んでますね。え、手を離すと頭から落下するので、身動きがとれないということですか。よく、そんな格好で、鞍にしがみつけましたね。あなたの肩のところを下から押さえますから、足をこっち側に移して下さい。あ、降りられましたね。」

「あなたは、今言った私の注意を守らなかったので、速足がうまくできないのです。え、『落ちないように必死だったので何も聞こえなかった』のですか。」

「じゃあ、今日の練習はこれで終わりにして、馬場を去る前に、馬の首と肩をなでてやって下さい。」

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