2005.8 ロシア海軍小型潜水艇事故と、海上自衛隊の救援部隊

ロシア太平洋艦隊司令部は、事故潜水艦の救出作戦などで使う小型潜水艇「AS─28」が、8/4同国極東部、カムチャッカ半島南部沖の海域で浮上が不能になり、深さ約200メートルの海底で乗組員7人が閉じ込められている、と発表した。

現場は、同半島南端部にあるペドロハブロフスク・カムチャッキーから約70キロ離れた湾内。

ロシア海軍報道官によると、潜水艇の現状を確かめるため海中カメラを下ろしたところ、船体が魚網にからまり、通信テーブル状のものも引っ掛かっているというが、潜航を試みている際、スクリューが網にかかったとの情報もある。

約200mと水深が深すぎるため、乗組員独力による船内からの脱出は、不可能とみられている。
しかし、乗組員との連絡は維持されており、負傷者などはいない模様。

潜水艇は、母船の救助船を離れ、潜水する通常の訓練に参加していたという。

地元メディアは、船内の酸素供給能力は最大5日間と伝えている。
食料や飲料水も5日程度は持つという。
ただ、酸素は1日分しかないとの情報もあり、混乱している。
原因の解明や救助のため、別の小型潜水艇を派遣する可能性がある。

ロシアでは2000年8月に、原潜クルスクが沈没し、乗組員118人が死亡する惨事があったが、この際は、外国からの支援の申し出に対してプーチン政権が閉鎖的姿勢をとったため、国内での非難の声が高まった。

アメリカとイギリスは、それぞれ無人潜航艇を空輸し、救出任務に当たっている。


ロシアでは、救出のため、日本に船舶の派遣を要請し、これを受けて、海上自衛隊では、艦艇4隻を派遣した。

派遣されたのは以下の4隻で、8/5に出航している。
・潜水艦隊 第2潜水隊群 潜水艦救難母艦「ちよだ」(横須賀)
・掃海隊群 掃海母艦「うらが」(横須賀)
・大湊地方隊 函館基地隊 第45掃海隊 掃海艇「うわじま」「ゆげしま」(函館)

潜水艦救難母艦「ちよだ」には、事故潜水艦から乗員を救出するためのDSRVが搭載されているが、ハッチの規格等が小型潜水艇には対応しておらず、直接の救出活動には貢献しないことが予想される。
しかし、潜水艦救難母艦「ちよだ」には、潜水作業支援の各種機器が搭載されており、PTCなどにより、ある程度の深海において、人員による作業も可能である。

掃海母艦「うらが」は、通常は掃海艇の支援任務に当たるが、機雷掃海作業のひとつとして、水中処分隊員による潜水作業があり、今回の任務にも対応が見込まれる。

掃海艇「うわじま」「ゆげしま」は、機雷掃海作業が主任務であるが、機雷探知作業は、事故潜水艇の位置特定などにも対応可能である。
掃海艇は速力が遅く、函館基地所属である点は、もっとも現場に近いということによるもの。

結果的には、米英の支援部隊の到着が早く、イギリスの無人潜航艇により、ケーブルを切断することにより、浮上解決し、海上自衛隊の部隊は現場に到着する前に反転帰投した。

尚、現在のロシア太平洋艦隊司令官は、フィドロフ提督で、9.11テロの際、親善訪問で佐世保を訪れており、長崎の原爆慰霊碑へ献花をささげ、平和資料館を見学するなど、親日的である。

また、両国海軍では、近年、救難訓練を手始めに、相互交流が始まっており、ロシア海軍艦艇の訪問も4回を数え、本年は、海上自衛隊艦艇がロシアを訪問している。

AS405 ちよだ
Dsc_2804. Dsc_4281.

DSRV
Dsc_0189. Dsc_3984. Dsc_3985.

MST463 うらが
p1624001. p1581028.

ヨーロッパ海軍図鑑. 現代の潜水艦. 海上自衛隊パーフェクトガイド2005-2006 . 海上保安庁パーフェクトガイド. Jane's Fighiting Ships. Combat Fleets of the World.

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新規作成日:2005年8月6日/最終更新日:2005年8月16日