海上自衛隊の潜水艦作戦の系譜

海上自衛隊の潜水艦の歴史は、アメリカより貸与された、ガトー級の潜水艦 SS501 くろしお 型に始まった。
海上自衛隊は、外洋作戦としては当初船団護衛を想定し、対潜作戦に重きを置いていたため、訓練には、海に潜る敵たる「潜水艦」か欠かせなかった。
当初はアメリカ海軍の潜水艦に協力を求めていたが、やがて潜水艦そのものを貸与されることとなった。

また、国産潜水艦も計画され、戦後15年の空白の後、潜水艦 SS511 おやしお 型が就役した。
旧海軍時代、優秀な潜水艦を数多く開発したわが国造船工業界であったが、戦後の空白はいかんともしがたく、関係者には並々ならぬ苦労があったと伝えられるが、通常動力潜水艦として当時の世界水準に比しても優秀な潜水艦を就役させている。

この経験を踏まえ、また、沿岸防備という作戦も視野に入れて、小型の潜水艦 SS521 はやしお 型潜水艦 SS523 なつしお 型、各2隻が1次防で建造された。

建造所は、共に神戸にある、三菱重工神戸造船所と、川崎造船神戸造船所(名称は現在のもの)がこれにあたり、以降今日まで、この体制が続いている。

当時の潜水艦の任務は、対潜目標として訓練支援にあたると共に、潜水艦乗員の錬成にあたることであった。
そして有事には、海峡等に潜伏し、海峡封鎖にあたることであった。

2次防になって、本格的な潜水艦として潜水艦 SS561 おおしお 型、続いて、改良型の潜水艦 SS562 あさしお 型が建造され、潜水艦部隊も充実するに至った。

この頃になると、大型潜水艦は、作戦艦艇として位置づけられており、対潜訓練支援は二次的な物となっている。
また、潜水艦の攻撃目標も、敵の潜水艦にも重点を置くようになっている。
すなわち、対潜潜水艦である。

3次防では、わが国初の、ティアドロップ(涙滴)型潜水艦潜水艦 SS566 うずしお 型が就役し、水中速力、水中運動性能が格段に向上した。
ほぼ同じ排水量でありながら、「おおしお」「あさしお」型より全長が短いため、これらをSSL(SS-Long)、うずしお型をSSS(SS-Short)と呼ぶこともあった。

そして、拡大改良型の潜水艦 SS573 ゆうしお 型、更に拡大改良された潜水艦 SS583 はるしお 型も整備された。

現在、最新鋭の潜水艦 SS590 おやしお 型の整備が進行しているほか、新型艦の建造も計画されている。

搭載する兵器は、各種ソナー、潜望鏡、潜水艦情報処理装置などのほか、攻撃兵器としては、魚雷、ハープーンUSMである。

92式長魚雷
p1385006. p1385007.

短魚雷
p0848036.

また、推進方式は、一貫して、ディーゼル+電動機方式であったが、目下AIP機関の試験も行われており、従来艦への増設を含めて、今後の潜水艦動力の一翼をになって行くものと思われる。


潜水艦支援業務
潜水艦の支援に欠かせないものに、救難がある。
事故等で沈没した潜水艦からの脱出は、潜水艦乗員にとって極めて重要なものである。
そして建造されたのが、潜水艦救難艦 ASR401 ちはや 型潜水艦救難艦 ASR402 ふしみ 型である。
これら、潜水艦救難艦には、母艦としての機能も付与されている。

潜水艦が沈没した場合、メッセンジャーブイが海上へ送られており、このブイとケーブルを頼りに、作業を進める事が出来る。
沈没の情況にもよるが、メッセンジャーブイが機能していないと、沈没潜水艦自体の捜索から始めなければならず、救難には困難さが増す。
沈没潜水艦が発見されると、直ちに、ダイバーを降ろして、情況確認が行われる。同時に、サルベージエアホースなどを接続し、艦内へ空気の供給が実施される。

実際の乗員の救出方法としては、1つは、レスキューチェンバー方式と呼ばれるものがある。
スパットと呼ばれるブイにより、洋上で沈没潜水艦の直上海面に定位し(4点係維)、レスキューチェンバーと呼ばれる釣鐘状の耐圧カプセルを、沈没潜水艦の脱出口に接続し、艦内から乗員を移乗させ、洋上に引き上げ救助する方式のものである。
しかし、この方式は、沈没潜水艦がほぼ水平に着底していないと作業が困難で、また、深度の深いところでは、使用できない。

その為、DSRVと呼ばれる深海救助艇による救助方式が開発された。
深海救難艇(DSRV)は、耐圧カプセルを連結した小型深海潜水艇で、海中を自航し、潜水艦の脱出ハッチに接続し、乗員を乗り移らせ、救助する。レスキューチェンバーによる救助方法より、効率的かつ、多局面での救難を可能とし、深々度での円滑な作業が期待されている。
1回に救出可能な乗員は約10名前後のため、複数回、救難潜水艇と救難艦の間を往復する必要があるが、救難潜水艇の近傍に潜水艦を配置することにより、救難潜水艇の移動距離を節約する方法も考えられている。
救助された乗員は、必要に応じて艦内の減圧室で数日間を過ごし、潜水病の防止治療に当たる。

この方式を採用して整備されたのが、潜水艦救難母艦 AS405 ちよだ 型潜水艦救難艦 ASR403 ちはや 型、である。

そして、潜水艦救難艦 ASR405 ちよだ 搭載 DSRV潜水艦救難艦 ASR403 ちはや 搭載 DSRV、もまた、小型の潜水艦である。



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新規作成日:2003年4月28日/最終更新日:2003年4月28日