森の中はうすぐらい。
ぼくはこわいのをがまんしながら進む。
もしぼくがゆうかんな動物の卵だったら、こんな暗がりをこわがるというのはおかしいからだ。
とつぜんぼくの後ろの草かげが動いた。
ふりかえると大きな大きな赤い口。ちろちろのぞく細いべろ。
ヘビだ!
「こ、こんにちは。ぼくはあなたの卵ですか?」
「少なくともあたしの卵じゃないね。だからあたしはあんたを食っちまうよ!」
「そ、そうですか。じゃあ、ぼくは、ぼくは逃げなくっちゃ!!」
ぼくはけんめいに逃げ出した。ヘビがぼくを食べようと大きな口をあけて追いかけてくる。
もうだめだ!ぼくが目をつむった時、何かが舞いおりる音がした。
「まったく!また卵を食べようとしてるのかい!あっちに行きな!
大切な卵を食べられてなるもんですか!」
目をあけると、大きな鳥がヘビを追いはらっているところだった。
ヘビはあきらめてすごすごと帰って行った。
ひょっとしたら、ぼくは鳥の卵だろうか。
「こんにちは。助けてくれてありがとう。ぼくはあなたの卵ですか?」
鳥はぼくをしげしげ見てこう言った。
「いや、違うね。あたしの卵かと思ったけれど、そうじゃない。
あたしの卵はあんたみたいにおしゃべりじゃないもの」
「そうですか。じゃあぼくはあなたの卵じゃない」
もしぼくが鳥の卵だったら、ぼくは鳥になればいいんだ。
でも違うから、ぼくは鳥にはなれない。
助けてくれた鳥は、気をつけて行くんだよと手をふってくれた。
ぼくは旅を続ける。
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