航路標識/Aids to Navigation
航路標識は、船舶が安全に、しかも最も経済的に航海できるように、また、目標物のない大洋で自船の位置を確認することによって、海運はもとより海洋開発あるいは漁業にも活用される施設です。
日本では、海上保安庁が各地に光、音、電波等を利用した各種の航路標識約5,500基を設置・管理して、海運・水産・海洋開発等の事業に寄与しています。
海は世界に通じる道です。航路標識に関する様式、規則は世界的な統一作業が進められ、各国間の技術交流が活発に行われています。
光波標識
- 灯台、灯柱
船舶が陸地、主要変針点又は船位を確認する際の目標とするため、沿岸に設置した構造物並びに港湾の所在、港口等を示すために設置した構造物で、灯光を発し、構造が塔状のものを灯台、柱状のものを灯柱という。
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- 導灯
通航困難な水道、狭い湾口等の航路を示すために航路の延長線上の陸地に設置した高低差のある2個以上の構造物で灯光を発するものをいう。(船舶は、これら2個以上の灯光を一線に見ることによって、航路に導かれる。)
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- 指向灯
通航困難な水道、狭い湾口等の航路を示すために航路の延長線上の陸地に設置したもので、白光により航路を、緑光により左げん危険側を、赤光により右げん危険側をそれぞれ示すものをいう。
- 灯浮標、浮標
船舶に岩礁、浅瀬等の障害物の存在を知らせるため、又は航路を示すために海上に浮かべた構造物で、灯光を発するものを灯浮標といい、灯光を発しないものを浮標という。
⇒ 灯浮標
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- 灯標、立標
船舶に岩礁、浅瀬等の障害物の存在を知らせるため、又は航路を示すため、岩礁、浅瀬等に設置した構造物で、灯光を発するものを灯標といい、灯光を発しないものを立標という。
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- 照射灯
暗礁、岩礁、防波堤先端等を照射して、船舶に障害物の存在を知らせるために設置したものをいう。
電波標識
- デッカ *廃止*
主局と3つの従局の出す電波により、1つのデッカチェーンにより北海道の4倍の面積程度をカバーする。
北海道、東北、関東、四国、北九州などの、デッカチェーンが整備されていた。
- オメガ *廃止*
精度は若干低いものの、地球上のわずか8ヶ所に配置された局によって全世界をカバーしてしまう能力がある。長崎県の対馬にそのうちの一つがあり、東京タワーをはるかに上回る455メートルの高さのアンテナから電波を発射していた。
- ロラン C/Loran-C
(二つ以上の電波が、船までとどく時間を利用する電波標識)
電波を使って自分の船の位置を知る方法には、衛星系と地上系がありロランCは地上系のもので、広い有効範囲の中で船の位置を高い精度で知ることができる。
A、B二つの電波の灯台から電波を同時に出すと、電波は同じ速さで伝 わっていくので、海の上のaというところでは、Aからの方がBからの方より距離が遠いので、その分だけ時間が長くかかる。
同じように、b及びcというところでも、Aからの電波は、Bからの電波よりも時間が長くかかる。このとき、それぞれのかかった時間の差が同じであるような点a、b、c ‥をつないでいくと、 曲線ができ、これを双曲線といいう。
つぎに、AとCの電波の灯台から電波を出す場合のことを考えると、前とまったく同じようにa'.b'.c'、 のような双曲線を作ることができる。このように、船で電波を受けていれば、船はこの双曲線の上のどこかにいることになる。
もし、AとB、AとCの二組の電波を同時に受けることができれば、2つの双曲線が同時に わかり、この双曲線の交わったところが船の居るところ(位置)ということになる。
ロランCは、日本に4つの送信局(新島:東京都、慶佐次:沖縄県、南鳥島:東京都、十勝太:北海道) があり日本の近海をカバーしている。また、ロランCの有効エリアを広げて利用を高めるため、日本、韓国などでおたがいに協力している。
- GPS
衛星航法システム
陸から遠く離れた大洋では、昔から星を目印にして自分の位置を知る天文航法が長い間利用されてきたが、現在では人工衛星から発射される電波により自分の位置の測定がでる。これが衛星航法システムと呼ばれるもので、カーナビで使われているGPS(ジーピーエス)が有名。
このシステムは、いくつかのGPS衛星から発射される電波を利用して、受信機と各GPS衛星の間の距離 を測定して、その交点から自分の位置を計算する。
- DGPS/Differential GPS
ディファレンシャルGPS
GPSを使った測位では、使用している電波の性質等から、常に10-25m程度の測位誤差がある。この誤差を小さくする方法として、ディファレンシャルGPS(DGPS)がある。
この方式は、あらかじめ位置が正確にわかっている場所(基準点)でGPS測位を行い、基準点に対する測位結果ずれ(誤差)を計算する。その誤差分を中波無線標識局の電波により放送し、利用者が受信することによりGPSの測位誤差を1m以下にすることができる。
現在DGPSは国際的な技術基準により、世界中の国々で運用されている。
日本では、海上保安庁が、船舶航行の安全を確保するためにDGPSの整備を行い、現在27局のDGPS送信局により、平成11年4月1日15:00から日本周辺の沿岸海域の全てをカバー出来るようになっている。
- 中波無線標識/Medium Freq. Beacon
Aという電波の灯台から電波を出すと、電波はまっすぐに飛んで行くので、 船では方向探知機ではかると、その電波がどの方向から飛んできたかがわかります。
これを海図に入れると、Aからの線ができます。船は、この線上のどこかに居ることになります。
さらに、となりにあるもう一つの電波の灯台Bから出している電波を同じようにしてはかると Bの線がわかり、船はこのA、B二つの線の交わったところに居ることがわかります。
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- マイクロ波無線標識/Radar Beacon, Ramark Beacon
電波の灯台から出している電波を船のレーダーで受けると、船のレーダーの画面上に、 船と送信局とを結ぶ線や点々が現われるようにしたものに、レーマークビーコンやレーダービーコンがあります。
最近では、灯浮標の上に乗せて電波を出すものもあり、船から大変便利と喜ばれています。
音波標識
- 霧信号所
霧、雪等により視界の悪い時、船舶に灯台等の位置を知らせるために音による信号を発するものをいいます。
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その他の標識
- 船舶通航信号所
港内、特定の航路及びその付近海域又は船舶交通の輻輳する海域において、航行船舶の動静、海上工事・作業の情報を、レーダー・テレビカメラ等により収集した情報を整理・編集し、船舶に対して無線電話、電光表示板、インターネット等の手段で航行に必要な情報を提供しています。
観音埼にある東京湾海上交通センターなどでは、船舶の交通管制も行っています。
また、大規模港湾等では、航路管制も行われています。
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- 潮流信号所
潮流の速い狭水道や海峡における潮流について、その流向、流速及び今後の傾向の変化を形象物、灯光、無線電話、一般電話または電光表示板により船舶に通報するものをいいます。
電光表示板では、英語のN(北からの流れ)E(東)W(西)S(南)と流れの速さの数字及び今後の傾向として「↑(強くなる)」「↓(弱くなる)」を記号で表します。
関門海峡にある、火の山下潮流信号所では、電光表示板の点滅で表示しています。
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新規作成日:2001年11月3日/最終更新日:2004年11月30日