減揺装置
減揺装置
減揺タンク / アンチローリングタンク
ART、減揺水槽、減揺タンクとも呼ばれている。
船体上に取り付けられたタンクで、船体の横揺れに対応してタンク内の液体が移動する時間を制御し、横揺れを打ち消すもの。フィンスタビライザーと異なり、停泊中でも効果を発揮する。
横揺れ角の減少率(減揺率)は通常50%が標準らしい。
大角度の横揺れも半減するため、調査・観測、洋上作業などを行う船舶及び漁船など の作業効率、改善に効果があり、荒天時の洋上作業が安全確実に行えるようになる為、巡視船などにも多く搭載されている。
アンチローリングタンクの歴史は、1880年にフリーサーフェイス型が開発され、1910年には H.フラームによって現在のU字管型ARTが開発されている。
日本では、1963年に日本鋼管(現JFE)が東京大学との共同研究により実用化第1号機を巡視船「しきね」(先代)に設置している。
また、1983年には可変周期型減揺タンクを日本鋼管(現JFE)が開発し、1号機を測量船HL02「拓洋」に設 置している。
海上保安庁 測量船 HL02「拓洋」
煙突後部のマスト両舷に角型のタンク、その上部にダクトが見える。
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海上保安庁 航路標識測定船 LL01「つしま」
煙突後部のマスト両舷に角型のタンク、その上部にダクトが見える。
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立川の海上保安試験研究センターで使用された、新型巡視船用の新型減揺装置の実験装置。
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ダクトを閉めると液体の移動が抑制され、効果がなくなる。
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在来型の減揺装置の実験装置。
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- 受動型(パッシブ型)
受動型はタンク内の液体の移動周期制御を行わず、船の横揺れによって生ずる左右舷 の高低差を利用して自然にタンク内の液体を移動させることにより、横揺れを減少させる装置。
船上に凹型(U字管)の水槽を設置し、船の横揺れによって引き起こされる水槽液の移動モーメントの働きで横揺れを減少させる装置。
液体量は排水量の2〜3%必要だが、制御装置の必要がなく最も安価な装置であり、構造が簡単なため、安価でメンテナンスも簡単である。
固定周期型ともいう。
積付状態に変化の少ない客船、観測船、調査船、練習船などに適している。
JFEのBest-ART(ベストアート)はこのタイプ。
- 受動制御型(セミアクティブ型)
受動型(パッシブ型)の下部ダクトを分割し、ダクト内にダンパーを設けることにより、広範囲にわたる周期変化に対応できるように開発されたアンチローリングタンク。
可変周期型とも言う。
タンク形状は受動型(パッシブ型)と同じだが、下部ダクトを分割してダンパー(流量調整装置)を設置することにより、水槽液の移動周期をコントロールし、広い横揺れ周期に対応できるようにした減揺タンク。
傾斜センサー、コンピュータ、ダンパー及び駆動装置、エアーダクト開閉装置により 周期制御を行うため、受動型(パッシブ型)に比べて高価格でありメンテナンスも必要であるが、より減揺効果は高い。
載荷状態に大きな変化のある、RORO船、カーフェリーなどをはじめ全ての船舶に効果がある。
JFEのMup-ART(マップアート)はこのタイプ。
- 能動型(アクティブ型)
動力を用いて強制的にタンク内の液体を移動させ、減揺モーメントを得ようとするもの。
ヒールのコンペンセーターと兼用した製品が開発・実用化されているが、非常に高価格である。
フィンスタビライザー
船底に取り付けられた可動式の翼で、船体の横揺れに対応して翼角が制御され、横揺れを打ち消すもの。
船体中央湾曲部に設置したフィンにより、横揺れに対抗するモーメントを発生させ、横揺れを減少させる装置。
ロールセンサーからの制御信号によりフィンの迎角をコントロールし、航走時には高い減揺率が得られるが、停船時には効果がない。
ヘリコプター搭載護衛艦に装備されている。
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右図のように、船体が傾いた場合、船底に設けられた翼を左右逆方向に操作することによって、船体の水平を保とうとするもの。
舵減揺装置
航走中に舵を作動させることにより、舵面に発生する揚力と、船体重心間に発生する回転モーメントにより、船体横揺れを減少させるように制御する装置。
ビルジキール
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左が通常の船底の形状。
右のように、船底につけられた板によって、横揺れ時に水の抵抗を受けるため、揺れが抑制される。
凌波性
復元性
減揺装置
新規作成日:2005年2月4日/最終更新日:2006年12月2日