商船の経済
商船は、海運会社が運航により利益を得るための基盤である。
海運会社にはいくつかの種類があり、自社船を運航するものから、貸船料を得る船主(オーナー)、傭船(用船)によって運航利益をえる運航(オペレーター)などがある。
運航形態
- 社船
自社で所有し、運航する船舶。
- 共有船
他社と共同で所有する船舶。
- 傭船(用船)
他社で所有し、自社の配下で運航する船舶。
用船の場合、船主が運航要員を持つ場合と、裸用船といって、船体のみを貸し借りする場合がある。
定期傭船契約 Time Charter
裸用船 BBC: Bare Boat Charter / Lease
- 共同運航
定期航路の場合、一社が運航するには負担が大きいが、共同運航方式を取れば、僅かな負担で「航路」を確保することが出来る。
例えば、往復5日の航路をデイリーで運航するには5隻が必要となるが、個別に運航している5社が、運航日程を調整すれば、各社1隻づつで、デイリー航路が確保できる。
この上で、各社の持つ積載量を合計して按分するのが一般的である。
- スペースチャーター
船舶の貨物積載量の一部を借り受けるもの。
定期航路の場合、一隻の単位で一社が運航するには負担が大きいが、スペースチャーター方式を取れば、僅かな負担で「航路」を確保することが出来る。
例えば、船舶を持たなくても、スペースチャーター方式を取れば、航路が確保できる。
- 貸船
自社の船を傭船(用船)に出すこと。
船主が運航要員を持つ場合と、裸用船といって、船体のみを貸し借りする場合がある。
- 仕組船
日本の船社が、長期用船を目的として、外国船社に船舶を建造・保有させた船舶。
この方式は1970年代から行われてきており、この方式のもとで外国船社は、日本輸出入銀行の融資を受けることができる。
従って、外国船社にとっては、船舶の建造費用を削減でき、一方日本の船社は、こうして建造した外国船社の船舶を用船(チャーター)することで相対的に船員費の安価である外国人船員を利用でき、運航費用を削減することが可能になる。
仕組の方式には、日本の船社が外国船社に依頼する「単純仕組」のほかに、日本の船社が外国企業と合併企業を設立して仕組を行う「合併仕組」や日本の船社が外国に会社を設立して仕組みを行う「完全仕組」などがある。
実際には海外子会社を以って行うことが多く、グループ全体としては社船、個別企業としては傭船(用船)である。
- リース
リース会社等が建造、所有する船舶を長期契約で借り受けるもので、裸用船である。
建造費等を負担せずに済むため、当初の設備投資費が少なくて済む。
もちろん、リース会社はこの間の金利等を計上してリース費用に計上する。
オペレーティング・リース
リース期間満了時点での物件価値(残価)を予め見込み、(物件金額−残価)の金額をベースにリース料を設定するリースです。
- 三国間輸送
一般的に、三国間というのは、日本以外の2国間での輸送をさす。
三国とは、日本以外の第三国であり、三ヶ国ではない。
日本は、鉄鉱石輸入の約2割をブラジルに依存しているが、ブラジルまで空船で往き、荷物(鉄鉱石)を積んで帰ってくると、その往復分の費用(=燃料費、傭船料)をすべて復荷の鉄鉱石の運賃で賄わなければならないことになり、運賃が高いものになってしまい、荷主(=鉄鋼会社)の負担が増大することになる。
ここで、日本から豪州に行き、そこで欧州向け石炭(=製鉄原料である原料炭、あるいは発電用燃料の一般炭)を積載し、欧州でその石炭を荷揚げした後、ブラジルで鉄鉱石を積載して日本に帰ってくるという運航形態をとる。
この場合の豪州/欧州の輸送が三国間輸送になる。
空船で積地に行った場合に比べ、往航(豪州〜欧州)の運賃で片道分の費用(=燃料費、傭船料)を賄うことが出来、船社にとっては、総合的(往航+復航)な採算が向上すると共に、復航の荷主に対して(空船に比べて)その運賃負担を軽減できるため、競争力のある運賃が提示でき、その荷物を獲得できるというメリットがある。
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費用・収益
- 建造費
[固定資産]
商船の場合、ざっくり、トンあたり20万円前後。(2002.4)
大型タンカーなどは、これより割安になり、特殊構造の船は割高になる。
10万トンの船は、ざっと200億円となる。
船舶需給状態により、造船所の手持ち工事量との兼ね合いで、同じ船体でも、価格は大きく変動する。
長期的視野に立って、建造計画を持っている海運会社は、比較的安価の建造が出来る。
- 運航費
[費用]
・人件費
乗組員の人件費。
・燃料費
船舶の燃料。
C重油の場合、
2004年度における燃料油価格は、約200-250ドル/トンである。
2005年度における燃料油価格は、約270-360ドル/トンである。
2006年度における燃料油価格は、約330ドル/トンの見込みである。
2007年度上期における燃料油価格は、約370ドル/トンの見込みである。
2007年度下期における燃料油価格は、約430ドル/トンの見込みである。
2007.11における燃料油価格は、約490ドル/トンの見込みである。
・港湾使用料
・入出港作業費用
パイロット、タグボートなど。
- 用船料/船賃
用船料は、貸船側では[収益]、借船側では[費用]となる。
船賃は、海運会社では[収益]、荷主側では[費用]となる。
・ハンディサイズ / ハンディマックス
1万8,000〜4万5,000載貨重量トン(D/W)のばら積み船。
2004-2005年度における用船料は、約12000-36000ドル/日である。
2007夏頃における船賃は、約40000-50000ドル/日である。
2007.10.22における船賃は、約71306ドル/日である。
・パナマックス
パナマ運河を通航できる最大船型。
載貨重量トン(D/W)が概ね6万〜7万トンクラスの船。
2004-2005年度における用船料は、約15000-40000ドル/日である。
2007夏頃における船賃は、約50000-60000ドル/日である。
2007.10.22における船賃は、約88396ドル/日である。
・ケープサイズ
ケープサイズバルカー
パナマ運河が通航できずに希望峰回りとなる10〜15万載貨重量トン(D/W)クラスの大型ばら積み船
2004-2005年度における用船料は、約30000-70000ドル/日である。
2007夏頃における船賃は、約100000-120000ドル/日である。
2007.10.22における船賃は、約183682ドル/日である。
- 運賃収入
[収益]
個々の貨物に対して運賃を設定する場合と、いくつかのスペース単位によって運賃を設定する場合がある。
ばら積み船等では、船単位、航海単位での設定となる。
基本的に、実船での航海に対する運賃で、タクシーの賃走と同じである。
一般的にバルク輸送(鉄鉱石、石炭、穀物等)は片道が空船回航となるが、運賃は船の往復航海(round voyage)分のコストを勘案して設定されるので、その意味では往復分ともいえる。
コンテナ船の、北米航路の運賃改定は春先のみ。欧州航路は年4回運賃改定が行われる。
2007年春における20フィートコンテナ運賃は、アジア-北米(東航)約1600ドル、アジア-欧州(西航)約1500ドル、北米-アジア(西航)、欧州-アジア(東航)約750ドル、である。
- 契約期間
個別の航海での契約と、一定期間、長期の契約などがある。
契約期間が長いほど、市況に左右されることがなくなる。
- 減価償却費
[費用]
企業によって異なるが、一般に、10年定額のようである。
すなわち、船価(建造原価)から残存価格を除いたものを、10年で割ったものを、毎年費用として償却している。
- 収益、費用の計上方法
積切出港基準/出帆基準: 出港した時点で計上する。
複合輸送進行基準: 航海の進行に応じて按分計上する。
航海完了基準: 航海が完了した段階で計上する。
- バルチック海運指数 (不定期船運賃指数)
ロンドン海運集会所 Baltic Exchange
1985年4月1日の数値を1000として表した指数。
当初BFIとしていたが、1999年11月1日よりBDIに名称変更されている。
乾貨物(ドライカーゴ)では、BDI(総合運賃)、BCI(ケープ型)、BPI(パナマックス型)、BHI(ハンディマックス型)の4指数を毎営業日のロンドン時間13時に発表している。
各指数ともに世界各国から収集した成約情報を元に、バルティック エクスチェンジで選定した複数ルートごとに比例配分して算出している。
BDI: Baltic Dry Index
BFI: Baltic Freight Index
BCI: Cape Size (150,000〜170,000dwt)
BPI: Panamax (70,000dwt〜75,000dwt)
BSI: Supramax (45,000dwt〜55,000dwt)
BHI: Handy Size (28,000dwt〜33,000dwt)
http://www.balticexchange.com/
http://quote.bloomberg.com/apps/cbuilder?ticker1=BDIY:IND
参考
貨物船の種類
大型船の大きさの呼び方
商船の経済
船の値段
新規作成日:2006年7月4日/最終更新日:2007年8月28日