対米同時多発テロ事件


日本時間の 2001.9.11夜、アメリカで、同時多発テロ事件が発生した。

1万人とも想像される犠牲者の方に合掌。
そして行方不明者の、早期の救済を。

航空機をハイジャックし、ニューヨークなどに突入する。
言語を絶するテロ行為だ。

テロと戦争はどう違うのだろうか。
一般に、国家レベルの戦いが戦争で、テロは犯罪集団の暴挙と言うカテゴリーだろう。
しかし、武装集団が暴れまわると言う面では、何ら差異はない。

ニューヨークのワールド・トレードセンタービルへの攻撃で、卑劣なテロ行為と非難する。
まさにそのとおりだ。
しかし、では、戦略爆撃の名の元に、都市、民間人をも巻き込む爆撃は、許されるものだろうか。

アメリカの場合、国軍の最高指揮権は大統領にある。その大統領を選出し、支持するのが、合衆国の国民であるとすれば、敵軍にとって、合衆国国民をも攻撃目標に加える事は、敵軍の総体と言う観点から、不自然ではない。その意味で、合衆国国民は、かかる責任をもって判断もしている。

日本の場合、かつては君主制であったが、現在は議院内閣制である。日本国民は、間接的に政府を支持する事になるが、「おかみ」と言う感覚から、国民に直接責任がないかの感覚がある。しかし、敵から見れば、政府を支持する国民であり、総体としての攻撃目標となりうるのである。

今回のテロ行為を肯定するものはいない。しかし、これは主として自由主義陣営を初めとする、大半の世界の意思・正義感ではあるが、一部社会にとっては、逆に賞賛する行為ではある。
要は、社会正義のあり方次第なのである。


一部の解説が「ビルの構造破壊を計算に入れた綿密な計画」と言っていたが、それほどの事はなかろう。
経済の象徴たるニューヨークのワールド・トレードセンタービル、軍事の要たるペンタゴン、に対する攻撃。
とりあえず、この大きな目標に、何らかの損害を与えれば、目的は達したはずである。
その損害の大小は、企画外だろう。
むしろ、ワールド・トレードセンタービルの崩壊による、甚大な損害。計算外の大きな被害に対して、むしろアフガンなどは慌てて(我々は無関係と)退避策を講じてさえいるようだ。

ニューヨークに対する攻撃、これは旧日本海軍が、大型爆撃機「富岳」をもって計画したが、果たせず、いまだかつて、映画以外の世界では、いかなる軍隊も為し得ていなかった。

アメリカは、アフガンに狙いを定めていると言う。
アフガニスタン、かつてソ連が侵攻し、ベトナム戦争のような泥沼にはまり、結果、ソ連崩壊の一員となった事もある。

戦い方と言うのは何種類もある。
制圧するのも一つ、打撃を与えるのも一つ。
アメリカ型の正義は、力で押さえつけるものだ。
それに反発する勢力も存在する。
その表現結果の一つが今回のテロだろう。
アメリカが反撃し、完全制圧できれば、それも一つの道だろう。−しかし、これを「米帝国主義」と言う−
しかし、打撃を与えられても、相手が屈せず、打撃の応酬が続くのであれば、戦略として必ずしも正しい道とは言えない。

首謀者が誰かは確定できていないが、その意図を分析し、力で対抗するだけではなく、融和する道も必要なのではなかろうか。

アメリカは、これを「自由主義社会への攻撃」とし「報復を構える」と言う。
しかし、一部には、これが「米帝国主義への報復」であり「欧米による世界侵略が先行している」とも主張されている。

力の応酬は、いずれかが滅びるまで際限がない。
パレスチナ地域では、その事を悟り、話会いによる融和政策も模索されている。
アメリカ型の正義を主張するのも良いだろう。
しかし、問題の原点というものは、必ずしも共通ではない。

アメリカでは、これを、第二の「パールハーバー」と称している。
想像し得なかった奇襲攻撃としての「パールハーバー」と言う見方が大多数だが、
その攻撃目標は、軍事目標、それも戦艦や航空機など、戦闘兵器を第一とした「パールハーバー」と、初めから民間を狙った今回のテロとは大きく異なる。
また、「パールハーバー」が日本の先制攻撃ではあっても、既にアメリカ政府は掌握し、世論構成の為に敢えて攻撃を許容したとの見方は、既に定説となっている。
その意味で、テロ集団一掃の為の、世論形成の為の犠牲であるとすれば、これは政府の犯罪ですらある。

イスラム原理主義は、西側の社会様式を否定している。
かつて、日本も江戸幕府の時代、アメリカの黒船がやってきて、国際化しろと断行した。国内は、尊皇攘夷、夷敵打ち払いの時期を経て、開国した。時を隔てて、太平洋戦争で、再びまみえている。
因果関係について、特に類似性はないのだが、アメリカの主張を持って、国際社会の基準としている点については、同じである。
また、この場合、日本の事情を、十分勘案した上の措置とは言い切れまい。
アメリカ帝国主義と呼ばれるのは、この辺の事情によるのである。
今日の日本を見るに、国際社会の一員として、文化的社会となっている点からは、アメリカの開国要求は、必ずしも間違いではないのだが、江戸時代の生活様式がそのまま続いていたとしても、別に迷惑な話でもないのである。

アメリカの報復についても、圧力を示すのも、一つのプレゼンスであり、それに相手が屈すれば、一つの成功ではある。
しかし、対抗してきた場合、軍事力行使にためらいを持たない事は、必ずしも得策ではない。
もちろん、「やれるもんならやってみろ」と言う状態で、やれないのであれば、ただのハッタリであり、以後の影響力も存在しない。
と言って、始めてしまって収拾がつくかどうかは別問題である。

今回のテロ実行の実態が、明確となっていない現在、単に引き渡しに消極的と言うだけで、タリバンを攻撃する事は、アメリカの都合である。
他国がそれを認証するかどうかは、個別の判断が必要だ。
盲目的な追従は大きな問題が有る。
太平洋戦争で、アメリカは、日本国民を直接狙った戦略爆撃を大々的に行った。あまっさえ原子爆弾をも使用した。この展開について、諸説が統一見解を持たないのは、周知の事実である。特に、日米で、見解に差があるのは、直接被害を受けた身と、報復の立場を取る身の差に他ならない。
現時点で、この話題を混同するつもりはない。
しかし、痛みを実感した我が国としては、付和雷同的に付き従うのではなく、冷静なる判断のもと、国際社会の協調と共に、独自の方策も見出したいものである。


アメリカの報復のシナリオ アメリカはブッシュ大統領の「国家非常事態宣言」に基づき、着々と武力行使の準備を進めている。しかし、今回の「敵」は国家でなく、個人やテロ組織だ。では、具体的に、どのような武力行使のシナリオが考えられるだろう。 1.最も簡単に実行可能なのは、巡航ミサイルによるアフガニスタン国内のゲリラ拠点に対する攻撃だ。紅海やペルシャ湾に展開した艦艇から巡航ミサイルで攻撃すれば、米軍が損害を受けることはまず考えられない。 しかし、アメリカは1998年、ケニアとタンザニアの米大使館爆破テロの報復として、スーダンとアフガニスタンを「トマホーク」ミサイルで攻撃したが、報復攻撃としての戦果はあっても、テロ組織を壊滅するには至っていない。 2.次の手段として考えられるのは、航空機などによる空爆だ。空母艦載機のほか、インド洋のディエゴガルシアやトルコなどの基地からB52やB2爆撃機を飛ばせば、アフガニスタン領内にかなりの規模の空爆を加えられるだろう。 しかし、巡航ミサイルによる攻撃と同様、空からの攻撃では、「敵」の所在を正確につかんでいる事が大前提となる。ベトナム戦争のように、投下する爆弾の量だけでは、解決はしない。また、防空能力の程度によっては、効果は大きくそがれ、損害も覚悟しなければならない。さらに空爆により民間人の犠牲者が多数出れば、イスラム世界全体の反米感情が強まりかねない。 3.次に考えられる、大規模なシナリオは特殊部隊による強襲であろう。米軍には「デルタ・フォース」などの特殊部隊があり、アフガン領内に降下して、ビンラディン氏の根拠地などを襲い、同氏の「逮捕」を目指すことも能力的には可能だ。 しかし、実際に部隊を現地に送り込むだけに、事態の進展が予測しにくい。かつて、イランの米大使館人質事件では、米軍の特殊部隊が人質救出に失敗し、当時のカーター政権に大きな打撃となるとともに、解決に長期間を要する結果となった。また、領土に踏み込まれるアフガニスタン国民の猛反発も必至だ。 4.最後に考えられる手段は、湾岸戦争のように、大量の地上部隊を投入する侵攻作戦だろう。タリバンがビンラディン氏を引き渡さず、空爆やその他の方法でも解決が図れなければ、アメリカがメンツにかけて、この手段まで突き進む可能性もある。 しかし、アフガニスタンの国土は山がちで、湾岸戦争のような大兵力による侵攻には適していない上、内陸であるが為に、兵站の問題も大きい。また、各地に武装勢力が散在し、かつて旧ソ連が苦しんだような「泥沼」に陥る可能性も強い。何より、米地上軍の侵攻はイスラム世界全体の対米感情を決定的に悪化させるだろう。 NATO(北大西洋条約機構)はすでに、最悪の事態を想定して、地上軍派遣に向けた準備も進めている。しかし、数千〜数万もの地上部隊を展開するには、準備だけでも数カ月が必要となる。このため、タリバンがビンラディン氏の引き渡し要請などに応じなければ、4.の大規模攻撃の準備を進めつつ、1.2.と、攻撃手段をエスカレートさせる可能性もある。
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新規作成日:2001年9月13日/最終更新日:2001年9月25日