駐車券がわりの道路使用許可書
道路は、交通の為に使用されるものだ。
が、工事その他で、交通を制限せざるを得ない事がある。
ここで、道路用許可と言う制度がある。
工事等に当たって、警察署に対し、どのような作業帯を確保し、交通の安全にどのような対策を講ずるかを明示して申請し、警察署で必要性と安全確保が認められれば許可となる。
が、悲しいかな、警察署員は、(実家が工事業者などという例外を除き)工事現場の経験なんかないから、書類のページ数しか見る事が出来ないから、基本的にメクラ判だ。
こういう言い方をすると、警察署では「いや、経験も豊富できちんと審査する」とのたまうのだが。。。
まあ、ひとつには、申請者は比較的大手で、そもそもは信頼関係にもとずく部分もある。
不正な申請はないという性善説があるかもしれない。
が、ひとたび発行されてしまうと、これは駐車券として効力を有してしまうから困ったものだ。
怪しい光景を見かけて指摘しても「けーさつに許可取ってんのに何か文句でもあんのかよぅ」とのたまうやつが大半だ。
とはいえ、警察官に確認してもらうと、先ほどの元気はどっかに行ってしまっている。
2006.3.近所で、工事用車輌を見かけた。
車輌の周りにパイロンを並べ「工事中」の看板を立てて、フロントガラス内には「道路使用許可証」のcopyをおいてあった。
よく見かける光景である。
が、その位置では何ら工事の気配がない。
工事の作業員ばかりか、警備の者もいない。
道路使用許可は、道路を、工事等によって一定時間占有する場合に、警察署に届けを出して許可を得るものである。
申請に際しては、現場の地図、すなわち使用内容や、警備の配置等を明示し、通行の安全を確保することが求められる。
警備がいないということは、道路使用許可に際しての申請内容を全うしていない。
それ以前に、工事現場でなければ、「道路使用許可」に逸脱していることになる。
確認したところ、約100m先の工事現場において、「道路使用許可」を得ており、目撃した場所は、駐車場としていたわけである。
パイロンを並べ「工事中」の看板を立ててというのは良く見かけるが、不当な占有だ。
ましてや、「道路使用許可証」を掲示するということは、いわば警察のお墨付きを示し、駐車違反を逃れるためのものであれば、悪質といわざるを得ない。
かかる事象は、警察署に対する始末書をと相成った。
さて、よく考えてみれば・・・。
「道路使用許可」は、あくまで限定的なものだ。
工事用車輌というのは、工事に必要な車輌であるべきだ。
クレーン車や掘削機、高所作業車など、作業そのものに従事するものは良いだろう。
ダンプカーや、コンクリートミキサーなども、待機するのは範疇には入らない。
が、資材運搬や、人員輸送のみであれば、工事用車輌には入らないのではないだろうか。
運搬資材が重いといっても、積みおろしした後は、駐車場に置けばよい。
警察署も、いちいち細かい車輌の用途は点検しないだろう。
が、だからといって、目クラ判では困ってしまう。
ましてや、これを侮って、適当な申請で許可書を取得し、道路を駐車場代わりにするとすれば、警察を騙す行為に他ならない。
経験的に、私が怪しいと踏んだものは、99%以上の確率でアウトだ。
そしてまた、現場を見て怪しいと思わない確率は、5%もない。
従って、ほとんど全てで、正しく運用されていないといって、過言ではない。
この場合の母数は、既に200近いから、統計的にもその数字は有効だろう。
パイロンか立っていながら、警備員が居ないのはそもそもアウト。
作業帯の広さに応じた警備員の数が居なければ怪しい。
パイロンが立っていても、そこで工事がやっていなければ怪しい。
作業規模に対して、作業帯の広さ、車両台数が多いのも怪しい。
作業帯も、駐停車禁止の区域については、その地点そのものに穴をほるとか言う場合でなければおかしい。
道路使用許可書には、期間、地域/場所のほか、現場の配置図が添えられている。
現場の縮尺にあわせた図で、車両の配置、パイロンの位置、警備員の位置、などが詳細に書かれている。
これに照らして、位置が勝手に変更されていたり、警備員が所定位置に居ないなどは簡単にわかることだ。
が、業者によっては見せたがらない。
まあ、通行人に対して、見せる義務はないのだが、まっとうを証明するなら見せたほうが手っ取り早い。
配置図どおりになっていなければ、道路使用許可条件を逸脱しているからアウトだ。
中には、図面が不正確に書いてあって、現場で勝手に拡大解釈するものも居るから困ってしまう。
悪く解釈すれば、警察を騙すための細工といえるわけだ。
こうしてみていると、傾向がある。
電気工事は、比較的程度が良い。
これは、(全国では10社程度、関東で言えば)東京電力の直受けたる関電工もそこそこの企業で、そもそも工事規模が大きいから、比較的しっかりした計画がなされている。
対して、ガスや水道の場合は、東京ガスや東京都水道局、東京都下水道局からの下請企業は、地域ごとで何社にも別れ、実際の工事は、その下に行くから、かなり甘くなっている。
一番酷いのは、通信会社。電話やケーブルテレビ、インターネットの業者は、通信業者の数も多ければ、工事を請け負う業者は更に多い。
そしてまた、現場の工事も比較的規模が小さいから、現場の業者は個人経営の孫受けも多い。
こうなってくると、元受企業が、工事の作業指示書と共に「道路使用許可書」を渡してしまえば、フロントに提示すれば駐車可能と誤解するのがプロセスだろう。
また、工事規模が小さい関係から、道路使用許可がなぜか月単位、広範囲の地域で発行され、日報として報告制になっている制度にも「欠陥」がある。
警察署としては、道路使用を必要とする工事について、道路使用許可としていて、日報に事前報告させるつもりかもしれないが、工事業者は、工事自体を全件報告しているだろう。そしてまた、報告した全件が道路使用許可の範囲のつもりで路上駐車となっている。
ここで、通信業者の場合、幹線等の架線工事は、路上の規模の大きいものになるわけだが、電話などインフラ整備はあらかた終わっているわけで、個別の契約先との接続が大半を占めるはずだ。その意味では、個宅の工事が大半だ。
個宅の工事は、基本的に屋内工事だろう。
屋外工事としても、はしごを立てる程度でいいはずだ。
とすれば、車両が路上駐車の必要性は存在しない。
ましてや、屋内工事で車は路上に置き去りという図式は存在しない。
大体、警備員が配置されていない点で道路使用許可条件に矛盾する。
ある工事業者によれば、屋内工事は、一日一台が10件の工事を担当するとした場合、一軒あるかないかと言う。
とすれば、そもそも、車に「道路使用許可書」という名の駐車券を常時乗せておく必要はないのではないだろうか。
逆に言えば、警備員に「道路使用許可書」を持たせ、現場に派出するほうが合理的ではないのだろうか。
更に言えば、こういった実体を掌握せずに、「道路使用許可書」の記載がある無料駐車券をメクラ判で発行する警察署にも問題がないとは言えない。
おれおれ詐欺にかかる人を馬鹿にする以前に、「道路使用許可書」を騙し取られている警察署も褒められたものではない。
月単位地域単位で発行する制度は、いい加減やめたほうが良いのではないだろうか。
警察署による監視も、実は機能しない。
まあ、現場をいちいち見に行くほどの余力はないというのも理解できるが。。。
とはいえ、巡回中の警察官が、こういう不正を見抜けないのも情けない。
まあ、地域課(旧 警邏)の警察官は、交通の細かい扱いまで理解するのにも無理はあるだろう。
これは、別に馬鹿にした話ではなく、畑違いというものもあり、交通課や刑事課の警察官に、拾得届けを書いてみろといって、直ぐに書けないのと同じことだ。
が、それで、満足されていても、安全は確保されない。
情けないのは、通報で駆けつけた「おまわり」が、「警察の許可を得ているからオッケー」という態度をとることだ。
「道路使用許可書」の意味がわからなければ、交通課に確かめるべきで、そういった指摘に対して「あんたの指示は受けない」とほざく頭の悪い「おまわり」は何とかしたい。
注)
「おまわり」というとカツンと来る者も少なくないのだが、「おまわりさん」の「さん」は敬称であり、市民に尽くす警察官を親しみを込めて表すものであるから、重大な問題点の指摘を無視するような奴には、敬称は不要と考える。
警視庁板橋警察署の宮本警部を見習い、心を入れ替えるべきだろう。
参考
歩行者の安全を確保しよう
駐車券がわりの道路使用許可書
おまわりさんのための道路使用許可書条件違反の見破り方講座
新規作成日:2006年3月16日/最終更新日:2009年5月24日