航空機運用艦艇の変遷
航空機運用艦艇の変遷
航空機運用艦艇の変遷を概観してみましょう。
ここでは、あくまで大雑把なものであり、また、若干順序の異なる事例もあります。
- 水上機母艦
航空機が発明された後、水上機が開発され、洋上での運用の道が開けてきた。
ここで、この水上機を搭載し、運用する構想が生まれた。
当初は、スペースの大きい貨物船タイプの船が転用され、水上機数機を搭載、運用した。
搭載する水上機の任務は、偵察、観測、防空、爆撃などである。
後に、大きいものでは、水上機を20機以上搭載する、専用の艦艇も建造されるにいたったが、運用に制約の大きい水上機よりも、空母による運用のほうが遥かに効率的で、やがて消えていった。
太平洋戦争中は、陸上航空基地未整備の南方地域に対して、貨客船改造の特設水上機母艦が配備されていた。
- 飛行艇母艦
水上機は大型化し、飛行艇も生まれた。
ここで、この水上機を支援し、広範囲で運用する構想が生まれた。
水上機母艦のように、飛行艇を搭載して運用するのではなく、洋上基地として運用するものである。
大型機が発達し、やがて消えていった。
- 航空母艦
航空機の性能が向上するにつれ、短い距離でも離陸できることから、航空母艦が開発された。
当初の黎明期は、艦橋の前方で発艦、艦橋の後方で着艦とか、三段式の飛行甲板で同時に発艦など、斬新なアイデアが試されたが、やがて全通甲板型に収斂して行った。
当初の搭載機は10機程度であったが、やがて100機を超えるものも出現した。
海戦の主力が、戦艦の大砲から、空母艦載機へと移っていったが、大型の航空母艦を運用するには多大のコスト伴い、現在ではごく一部の国に限られている。
- 潜水艦での運用
航空機は広範囲の哨戒が可能であり、潜水艦への搭載が模索された。
分解組み立て可能な小型の水上機が開発され、潜水艦に装備されたカタパルトと共に、運用された。
やがて、密かに潜航進出し、敵基地などを攻撃できる可能性から、潜水空母とも言われる大型潜水艦も開発された。
が、太平洋戦争以降、この攻撃能力は、潜水艦発射ミサイルとして進化し、洋上に姿を現すという潜水艦としてのウイークポイントを晒す事のない運用が行われている。
- 巡洋艦での運用
航空機は広範囲の哨戒が可能であり、巡洋艦への搭載が模索された。
黎明期には、短い滑走台から発進し、着陸は陸上基地などという模索も行われたが、やがて水上機を搭載する形に落ち着いた。
- 戦艦での運用
航空機は高所からの観測が可能であり、戦艦への搭載が模索された。
黎明期には、飛行船や、短い滑走台から発進し、着陸は陸上基地などという模索も行われたが、やがて水上機を搭載する形に落ち着いた。
- 小型航空母艦
航空機の性能が向上するにつれ、短い距離や垂直離発着もできることから、小型航空母艦が開発された。
ヘリコプター同様、VTOL機では、滑走路無しでも運用が出来る。
このため、コストのかかる大型空母を持たなくとも、洋上航空兵力を持つことが可能となった。
が、VTOL機といえども、若干でも滑走することによって、ペイロードを稼ぐことが可能であり、やがてスキージャンプ台などが装備されることになってゆく。
- 対潜艦での運用
太平洋戦争当時は航空機は大型艦にしか搭載できなかったが、ヘリコプターの開発により、駆逐艦程度の小型の艦艇でも運用が可能となってきた。
航空機は遠距離への進出が可能であり、対潜艦への搭載が模索された。
当初は、無人ヘリコプターが対潜魚雷を運搬、投下、攻撃するにとどまっていたが、やがて、有人ヘリコプターが、哨戒能力も持つようになっていった。
やがて、対潜ヘリの母艦として、ヘリ空母なども出現したが、運用コストの関係から、対潜空母は、汎用空母に機能統合された。
海上自衛隊においても、3機を運用するヘリコプター護衛艦が整備された。
- 水上戦闘艦での運用
海上での戦闘が多様化するにつれ、艦艇の任務と機能も変化してくる。
対潜艦艇に特化した機能は、やがて、あらゆる水上戦闘をこなすことが求められてくる。
ここで、搭載するヘリコプターにも、多くの任務が要求される。
対潜哨戒、攻撃はもとより、ミサイルなどの洋上哨戒や、広範囲の哨戒、味方ミサイルの誘導などである。
現代の主力艦艇である、巡洋艦、駆逐艦、フリゲートなどの水上戦闘艦では、1機から2機のヘリを搭載している。
- 商船改造艦船での運用
前述の小型航空母艦同様の理由から、戦時に運用された。
イギリス海軍がフォークランド紛争時に運用したものは、概ね下図の通りで、両舷にコンテナを数段積み重ねて壁を作り、この間を格納庫とし、船首側のスペースを離発着甲板とする。
燃料等は船内のコンテナ倉に搭載し、支援物件等もコンテナに搭載すればよく、非常にお手軽である。
コンテナ船の航空機運用母艦
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参考
⇒ 艦艇の種類(時代と変遷)
⇒ 大日本帝国海軍艦艇の種類
⇒ 日本海軍艦艇類別
⇒ 現代艦艇の種類
⇒ 艦艇の変遷
⇒ 空母の変遷
⇒ 搭載機運用設備
⇒ 航空機運用艦艇の変遷
⇒ 大日本帝国海軍の航空母艦
新規作成日:2005年8月13日/最終更新日:2005年8月13日