戦列艦

戦列艦

戦列艦 Ship of the line

戦列艦は、イングランド海軍による軍艦の区分用語。
海戦術が進歩し、それまで各艦ごとにばらばらに機動して砲撃戦をしていたものが、組織戦に移行し、そうしたなかで縦一列に連なる艦隊を編成して敵艦群に側面を向け、一斉射撃を持って撃沈する戦法が編み出された。
こうした戦法には、艦隊を構成する各艦が一糸乱れぬ統一行動をする必要があり、そのために、それまでまちまちの規格で作られていた船の規格を画一化したものが戦列艦。
当時、戦列艦は100〜80門の砲が搭載されることとされ、砲門の数によって1等戦列艦〜3等戦列艦に等級が与えられた。
戦列艦の特徴としては、ガレオン船にそびえ立っていた巨大な船首楼と船尾楼が無くなり、船首から船尾まで平坦な艦型になったことがあげられる。
ガレオンの船楼はそもそも接舷戦闘用に作られたものだったのだが、大砲の射程の増大によって交戦距離が広がったため、トップヘビーで舵の効きを悪くするだけの船楼は無用の長物になってしまった。
海兵隊員を減らす一方で、戦列艦にはより多くの砲兵が乗り込むようになり、2〜3層の砲甲板に大量の大砲が並べられ、砲弾だけで大型艦を沈められるほど強力な砲撃が可能になってゆく。
二層甲板艦、三層甲板艦などと呼ばれるのは、砲甲板の数を言う。


3層甲板に124門を装備するオリエント号や、4層甲板に136門を装備する サンティシマ・トリニダード号のような、排水量4000tを超える超巨大艦も存在した。
このような1等戦列艦は、各国の威信をかけた少数が建造されているのみで、 実際は全長68m、全幅15m、排水量1100t 程度の2層74門型の3等戦列艦が数多く建造され、艦隊の主力の座にあった。

イングランドでは、3層100門以上の巨大艦を1等、3層90〜98門の大型艦を2等、2層60〜84門の中型艦を3等、50門程度の艦を4等、2層50門以下の中型艦をフリゲート、1層30門程度の小型艦をコルベットと分類している。(分類方法は時代によって変化がある)


戦列艦
Pict_0067.

三層甲板艦
Pict_1054a. Pict_1054b. Pict_1054c. Pict_1067a. Pict_1055.

戦列艦の構造

帆装フリゲート 帆装例
Pict_1066.

セイル名称
01.Flying jib
02.Outer jib
03.Inner jib
11.Fore royal
12.Fore topgallant
13.Fore topsail
14.Fore mainsail
21.Main royal
22.Main topgallant
23.Main topsail
23.Main sail
31.Mizen royal
32.Mizen topgallant
33.Mizen topsail
34.Driver or Spanker


三層甲板艦 構造
Pict_1067.

01. バウスプリット Bowsprit
02. フォアマスト Fore Mast
03. メインマスト Main Mast
04. ミズンマスト Mizzen Mast
11. キャットヘッド Cathead
12. 船首楼 Forcastle
13. メインデッキ Main Deck
14. クォーターデッキ Quarter Deck
15. Poop Deck
16. 船尾楼 Stern Galleries
21. 砲門 Gun Ports
31. 竜骨 Keel


戦列艦の人員配置

ヴィクトリー (イングランド)
全装シップ型1等戦列艦 全長69.5m 全幅16m 排水量3225t

・フォクスルデッキ (船首楼) / 6ポンドセイカー砲2門
 掌帆長1 (セルの操作、索具の修理点検)
 掌帆員4 (掌帆長付、セルの操作、索具の修理点検)
 掌砲員6 (砲手、船首砲担当)
 次席士官1 (船首楼戦闘指揮)
 水兵10 (次席士官付、甲板戦闘員)
・クォーターデッキ (船尾楼) / 6ポンドセイカー砲10門
 艦長1
 士官候補生1 (伝令)
 航海長1 (航海と操船及び船体の管理)
 主席士官1 (航海長付、ヤード及びセルの操作指示)
 操舵手1 (操舵)
 予備操舵手4 (砲手、艦尾砲担当)
 掌砲員26 (砲手、艦尾砲担当)
 海兵隊長1 (艦尾楼戦闘指揮)
 水兵30 (海兵隊長付、艦尾楼戦闘員)
・アッパーデッキ (1層甲板) / 12ポンドカルバリン砲30門
 主席尉官1 (艦首側15門、砲手指揮)
 次席尉官1 (艦尾側15門、砲手指揮)
 掌砲員90 (砲手、舷側砲担当)
 掌砲兵1 (銃砲及び火薬の整備管理、砲撃指示)
・ミドルデッキ (2層甲板) / 24ポンドペリエール砲28門
 次席尉官2 (砲手指揮)
 掌砲員140 (砲手、舷側砲担当)
 船匠1 (排水ポンプの駆動、破損船体の修理)
 船匠助手4 (排水ポンプの駆動、破損船体の修理)
・ロワデッキ (3層甲板) / 42ポンドカノン砲30門
 主席尉官1 (艦首側15門、砲手指揮)
 次席尉官1 (艦尾側15門、砲手指揮)
 掌砲員450 (砲手、舷側砲担当)
・コックピット
 船医1 (負傷者の救護)
 船医助手3 (船医付、負傷者の救護)
・フォアトップ
 水兵5 (敵艦の観測、狙撃)
・メイントップ
 士官候補生1 (帆上、戦闘指揮)
 水兵7 (敵艦の観測、狙撃)
・ミズントップ
 水兵5 (敵艦の観測、狙撃)
・アフタミズントップ
 水兵5 (敵艦の観測、狙撃)




参考
船の歴史
帆船の歴史
日本の船/和船
海の歴史
古代の帆船
大航海時代
大航海時代の船
ガレオン船
トラファルガー海戦時の信号旗
幕末の黒船
動力船の歴史
帆船時代の艦載兵器
搭載艇
艦艇の種類(時代と変遷)
帆船の種類
艦隊陣形
帆船時代の海戦
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新規作成日:2007年7月21日/最終更新日:2007年7月21日