船の雑学

艦、船、艇

船を表す文字には、艦、船、艇、舟などがある。
一般に、「艦」は戦闘艦艇を、「船」は船一般や他に比して大型あるいは非戦闘艦艇を、「艇」は比較的小型の船を、「舟」は小型の船を言う。
英単語では、Ship, Vessel, boatなどがあり、一般に、「Ship」は船全般を、「Vessel」は比較的大型の船を、「boat」は比較的小型の船を言い、戦闘艦艇かいなかの区別は単語では存在しない。
ただ、Cargo Boat などのように一万トンを超えてもboatと呼ぶものもある。
船は、戦闘艦艇の「艦」や、小型の「艇」「舟」などに対しては限定的な意味を持つが、総体として「船」全般も意味する。
艦艇においては、船首、船尾、船底、船橋、船内、船長、などを艦首、艦尾、艦底、艦橋、艦内、艦長などと呼ぶが、艦体、艦倉、などとは使わず、何でもかんでも「船」を「艦」に置き換えるわけではない。
船体を艦体と呼ばないのは、艦隊と紛らわしいためもあるだろう。
海上自衛隊でも「船務」という職種が存在し「艦務」とは言わない。
また、「艇」においても、船首、船尾、船内、船長などを艇首、艇尾、艇内、艇長などと呼ぶが、艇橋、艇底、などとは使わず、何でもかんでも「船」を「艇」に置き換えるわけではない。
また、海上保安庁においては、巡視艇の指揮官も「船長」である。


船型

主に貨物船を想定し、黒い部分が船体で、船橋・上部構造物は青で示しており、マストなどは省略している。
船楼は、船体構造に一体化した船室部で、露天構造や、ブルワークは含まない。 本来、船体構造上に設けられた船室部分も、含まない。


船型


船の航走タイプ

船型


船の寸法

船の長さ

back Pict_0561.

全長(Loa):船の舳先〜船尾の端 (建物に入れるならこの長さが必要と言う値)
垂線長:船首の水切部分〜船尾の舵の軸
水線長(WL長):船首の水切部分〜船尾の水切部分 (WLプラモデルの底辺)
登録長:船舶原簿記載の長さ(概ね垂線長のようだ)


船の幅

back

全幅:船体幅の最大値 (船により、甲板と船体下部と、どちらが大きいか別れるが、一般には安定の為に、甲板より船底の方がやや広い)
@:おもちゃの船のイメージだが、実際はごく最近のステルス艦位しかこのタイプはない。
Aタンブルホームとも言われる。古くはヨーロッパで税金対策から生まれた形。甲板の広さが課税対象なので、積載量を増やす都合から、船体を膨らませている。
B一般の船の形。やや誇張しているが、甲板よりも若干下の方が広くなっているのは、安定性を増す為である。
尚、航空母艦のように飛行甲板が、やたら張り出している場合は、「飛行甲板の幅」「船体幅」と明記される。


深さ:船体部分の、甲板〜船底 (舷側の高さ)
喫水:船体部分の、水切部分〜船底 (水面下の深さ、概ね船底の赤い部分)

全てについて、図面上で、真横なりから投影して計ったとしての寸法で、鉄板の外側です。
また、船は、燃料や荷物の多少により深さが変わりますから、「基準」「満載」「軽荷」などの状態が有ります。また、それぞれ、国や組織、時期によって、規定が異なります。
あと、「幅」と言えば「全幅」を指しますが、「長さ」と言うと、色々です。
一般に「垂線長」を指す場合が7割ですが、確定では有りません。
正しい標記は、補足で「垂線長」「満載時」などと付記するべきですが・・・
また、古くは尺貫法、アメリカはフィート、なので、換算誤差も出ます。
更に、資料によっては、統一の為に、垂線長から推算した値を、あたかも公表値として使用したり、調査段階での行き違いや、伝聞によるものなど、不安定な要素も多々有ります。
船の寸法は、設計書によるもので=設計どおりに出来ますが、実際は出来上がったものは正確には計れません(普通は造船所も計りません)。部分的に丸かったり、出っ張ってたり、大体全長は見通せませんから。全長300mも有ると、季節でも長さは変わります=夏の方が何センチか長い。

船の構造


船の大きさ「トン」の話
船の大きさの単位は、大きく3つ、総トン数、載貨重量トン、排水量トン量 があります。 船の構造


搭載機関

舶用機関


推進方式


推進器


船体の負荷


船の構造


左舷、右舷の話
右舷のことを「スターボード(star-board)」というのは、操舵する側「スティアボード(steer-board)」、左舷の「ポート(port)」は「接岸する側=港(port)」という意味です。
左舷はもともと「ラーボード(lar-board)」と呼ばれていて、積荷をする側「ラドボード(lad-board)」がなまったもの。スターボードとラーボードは聞き間違えやすいため、「ポート(port)」に変わったと言われています。
海上自衛隊でも、右舷(みぎげん)、左舷(ひだりげん)と言って、聞き間違いをしないようにしています。
欧州では、2000年以上も前から、船が港に入る時は、左側を岸壁に着ける習慣がありました。
なぜ船は左側を岸壁につけるのというと、その必然性があったからです。
実はバイキング時代の船は今とは違い、舵が真後ろではなくほとんどは右舷側についていました。このため、右側で接岸すると、舵を傷めてしまったり、出港時にうまく舵が効かなかったりする事が有ります。そこで、その反対側の左舷側で接岸するようになったということです。
現在、商船なども港の事情や効率の問題から必ずしも左舷付けではありません。


入出港時刻
旅客機の場合、スポットから動き始めた時刻が出発、スポットに停止した時刻が到着となっています。
船舶の場合、一般に、着岸し、舫いをかけた時刻が入港時刻となります。
また、舫いを外した時刻が出港時刻となります。
埠頭管理事務所の予定表などは、バースの確保スケジュールから設定されているので、予約時間帯となっています。
入港の一連の動作としては、港外でパイロットをのせ(パイロット乗船)、進発(沖スタート)、港口を入り、着岸、舫いを取って、ボーディングブリッジを付けて完了となります。
電車なら、見えてからホームに付くまで1分もかかりませんが、船の場合はスケールが異なります。
大きな港湾の場合、航路が一方通行で設定され、時間帯により、交互通行となったりします。
東京港の場合、概ね奇数時間帯が入港信号、偶数時間帯が出港信号となっている場合が多いようです。
従って、10時入港と言う場合、奇数時間帯である9時の入港信号で沖スタート、30分前にはほぼ岸壁まで来ています。
尚、入港、寄港 とは、港区(こうく) 水域への進入をもって言う物なので、沖留めで、必ずしも着岸しない場合もあります。


船に関する法律


船に関する国際条約


航海当直 (ワッチ)
航海は昼夜を分かたず連日にわたるため、要員を3つにわけ、1日8時間づつを担当する。
実際は食事等の休憩時間が必要なため、4時間づつにわけて担当する。
この担当を、航海当直 (ワッチ)という。
入出港等の繁忙期は、これにかかわらず、全員で対応することになる。

航海当直は(基本的に)4時間制となっている。
20-24 初夜直(ファースト・ワッチ)
 0- 4 夜半直(ミドル・ワッチ)
 4- 8 朝直(モーニング・ワッチ)
 8-12 午前直(フォアヌーン・ワッチ)
12-16 午後直(アフタヌーン・ワッチ)
16-20 折半直(ドッグ・ワッチ)

商船の場合は、以下のような担当になっている。
1等航海士の航海当直は午前午後各4時から8時まで(ヨンパー・ワッチと呼ぶ)。昼夜の境目で忙しいことから「ベテランワッチ」の愛称がある。
2等航海士の航海当直は午前午後各0時から4時まで(ゼロヨン・ワッチと呼ぶ)。人の寝ている時間に起きていることから「泥棒ワッチ」の愛称がある。
3等航海士の航海当直は午前午後各8時から12時まで(パーゼロ・ワッチと呼ぶ)。人並みの生活が送れることから「殿さまワッチ」の愛称がある。
船長は、すべてについて責任を持つため、航海当直にはつかない。


船によっては、以下のようになっているようだ。
20-24 初夜直(ファースト・ワッチ)
 0- 4 夜半直(ミドル・ワッチ)
 4- 8 朝直(モーニング・ワッチ)
 8-12 午前直(フォアヌーン・ワッチ)
12-16 午後直(アフタヌーン・ワッチ)
16-18 第1折半直(ファースト・ドッグ・ワッチ)
18-20 第2折半直(セカンド・ドッグ・ワッチ)
ドッグ・ワッチの分割は、4時間働き4時間休むという体制では、同じ時間帯にばかり勤務することになるため、勤務時間を毎日ずらすために、夕刻の当直を2時間づつに分けて作られたらしい。

これらの各当直時間には30分毎に時鍾(タイム・ベル)が鳴らされる。


時鍾(タイム・ベル)
各当直時間には30分毎に時鍾(タイム・ベル)が鳴らされる。
時鍾(タイム・ベル)は、号鐘とも呼ばれる。
一点鍾 20:30 00:30 04:30 08:30 12:30 16:30 18:30
二点鍾 21:00 01:00 05:00 09:00 13:00 17:00 19:00
三点鍾 21:30 01:30 05:30 09:30 13:30 17:30 19:30
四点鍾 22:00 02:00 06:00 10:00 14:00 18:00   -
五点鍾 22:30 02:30 06:30 10:30 14:30   -     -
六点鍾 23:00 03:00 07:00 11:00 15:00   -     -
七点鍾 23:30 03:30 07:30 11:30 15:30   -     -
八点鍾 24:00 04:00 08:00 12:00 16:00   -   20:00
なぜ16-20時の時鍾がこのような数え方になったかは、ハッキリとは解っていない。
・夕暮れ時の18:30に5点鍾を鳴らすと、海坊主が夜の近いことを知り船を襲う。
・水兵達が待遇改善を求めて立ち上がった「ノアの反乱」事件の時に、夕暮れ時の五点鍾が一斉蜂起の合図だったので、海軍が反乱者を混乱させるためにこう数えた・
という説もある。
ただ、各ワッチ開始後に各定数鳴らすと考えれば説明も付く。

一点鐘 ○          (カーン)
二点鐘 ○○         (カンカーン)
三点鐘 ○○ ○       (カンカーン カーン)
四点鐘 ○○ ○○      (カンカーン カンカーン)
五点鐘 ○○ ○○ ○    (カンカーン カンカーン カーン)
六点鐘 ○○ ○○ ○○   (カンカーン カンカーン カンカーン)
七点鐘 ○○ ○○ ○○ ○ (カンカーン カンカーン カンカーン カーン)
八点鐘 ○○ ○○ ○○ ○○(カンカーン カンカーン カンカーン カンカーン)
○○は連打 、○は一回のみ。

p1185035. DSC_5465.

汽笛信号
・(短一声): 本船右に回頭しつつある。
・・(短二声): 本船左に回頭しつつある。
・・・(短三声): 本船機関を後進にかけている。
・・・・・(短五声以上): 他の船舶の意図もしくは動作を理解することができないとき、または衝突を避げるための十分な動作を他の船舶がとっているかどうか疑わしいとき。
狭い水道または航路筋において追い越し船の追い越し動作に疑間があるとぎ。
−−・(長二声・短一声): 相手船の右舷側を追い越そうとするとき。
−−・・(長二声・短二声): 相手船の左舷側を追い越そうとするとき。
−・−・(長一声・短一声・長一声・短一声): 狭い水道または航路筋において、追い越し船の追い越し動作に同意を示すとき。
−(長一声): 湾曲部または障害物のために他の船舶を見ることができない狭い水道もしくは航路筋に接近するとき、およぴ同信号を聞いた場合に応答するとき。
その他混同されない信号音: 相手船の注意を喚起したい場合。


船舶の通信手段


その他




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新規作成日:1998年10月16日/最終更新日:2006年11月27日