船の構造
船の構造
船の部分名称
船体の前半分(或いは前方部分)を船首、船体の後半分(或いは後方部分)を船尾、船体の中央部分を船央と呼ぶ。
船体の左部分を左舷、右部分を右舷と呼ぶ。
艦艇の場合は、船首、船尾、船底、などを、艦首、艦尾、艦底と呼ぶ。
また、小型艦艇の場合は、艇首、艇尾、と呼ぶが、艇底とは言わない。
.
.
以下は船体設計によって、必要に応じて設けられる装備。
ブルワークは、船首部に設けられており、船首の甲板に打ち上げる波を抑える働きを持つ。
ナックルラインは、船首部に設けられており、船首の打ち上げる波を抑える働きを持つ。
ビルジキールは、船底両舷に設けられ、船体の横揺れを抑える働きを持つ。
フィンスタビライザーは、船底両舷に設けられ、船体の横揺れを能動的に抑える働きを持つ。
.
.
ブルワーク
構造上船首の高さが不十分な場合、甲板を波が洗いやすいが、ブルワークを取り付けると、船首の高さが確保され、甲板を波が洗いにくくなる。
.
.
ナックルライン
左が通常の船首形状で、フレア形状によって、打ち上げられる波は横に逃げるものの、甲板の高さまで上がるため、横風によって甲板を波が洗うことがある。
右は、ナックルラインによって、甲板よりも低い位置で波を打ち返すために、少々の横風では甲板を波が洗うことが無くなる。
.
.
波切板
左が通常の船首形状で、フレア形状によって、打ち上げられる波は横に逃げるものの、甲板の高さまで上がるため、横風によって甲板を波が洗うことがある。
右は、波切板によって、波を打ち返すために、少々の横風では甲板を波が洗うことが無くなる。
.
.
.
ビルジキール
左が通常の船底の形状。
右のように、船底につけられた板によって、横揺れ時に水の抵抗を受けるため、揺れが抑制される。
.
.
フィンスタビライザー
右図のように、船体が傾いた場合、船底に設けられた翼を左右逆方向に操作することによって、船体の水平を保とうとするもの。
.
.
船の寸法
船の長さ
.
全長(Loa):船の舳先〜船尾の端 (建物に入れるならこの長さが必要と言う値)
垂線長:船首の水切部分〜船尾の舵の軸
一部に「舵の中心」という場合があるが、軸の中心であって、板幅の中央ではない。
水線長(WL長):船首の水切部分〜船尾の水切部分 (WLプラモデルの底辺)
登録長:船舶原簿記載の長さ(概ね垂線長のようだ)
船の幅
全幅:船体幅の最大値 (船により、甲板と船体下部と、どちらが大きいか別れるが、一般には安定の為に、甲板より船底の方がやや広い)
@:おもちゃの船のイメージだが、実際はごく最近のステルス艦位しかこのタイプはない。
Aタンブルホームとも言われる。古くはヨーロッパで税金対策から生まれた形。甲板の広さが課税対象なので、積載量を増やす都合から、船体を膨らませている。
B一般の船の形。やや誇張しているが、甲板よりも若干下の方が広くなっているのは、安定性を増す為である。
尚、航空母艦のように飛行甲板が、やたら張り出している場合は、「飛行甲板の幅」「船体幅」と明記される。
深さ:船体部分の、甲板〜船底 (舷側の高さ)
喫水:船体部分の、水切部分〜船底 (水面下の深さ、概ね船底の赤い部分)
全てについて、図面上で、真横なりから投影して計ったとしての寸法で、鉄板の外側です。
また、船は、燃料や荷物の多少により深さが変わりますから、「基準」「満載」「軽荷」などの状態が有ります。また、それぞれ、国や組織、時期によって、規定が異なります。
あと、「幅」と言えば「全幅」を指しますが、「長さ」と言うと、色々です。
一般に「垂線長」を指す場合が7割ですが、確定では有りません。
正しい標記は、補足で「垂線長」「満載時」などと付記するべきですが・・・
また、古くは尺貫法、アメリカはフィート、なので、換算誤差も出ます。
更に、資料によっては、統一の為に、垂線長から推算した値を、あたかも公表値として使用したり、調査段階での行き違いや、伝聞によるものなど、不安定な要素も多々有ります。
船の寸法は、設計書によるもので=設計どおりに出来ますが、実際は出来上がったものは正確には計れません(普通は造船所も計りません)。部分的に丸かったり、出っ張ってたり、大体全長は見通せませんから。全長300mも有ると、季節でも長さは変わります=夏の方が何センチか長い。
船の大きさ「トン」の話
船の大きさの単位は、大きく3つ、総トン数、載貨重量トン、排水量トン量 があります。
- 総トン数(GT:gross tonnage) :容積
古来、船の積荷は、樽で、それが幾つ積めるかが、船の大きさの単位となった。
どのくらい積めるのか、その容積を示している。
(江戸時代の日本では、米が何石積めるかで計った)
従って、船体内のうち、有効スペースのみが算入対象で、計算が複雑だったが、
数年前に、国際トンとして計算方法が改められ、船体内容積全てを算入する方式になっている。
通常、船の税金など、総トン数を基準とされている。
1969年の「船舶のトン数の測度に関する国際条約」によって定義されたUniversal Tonnage Measurement System (UMS)(国際トン数測度規則)による船舶の国際的な大きさの単位が、総トン(Gross Ton)であリ、容積の単位(2.78立方米)である。
「船舶積量測度法」に基づく方式(昭和57.7.18廃止):旧トン数:船舶の内容容積より、上甲板上の、操舵室、賄室、機関室、舵機室 などをその位置、用途によって算入しないこととされる場所を除く閉囲場所の合計容積(総積量)を100立方フィート(1000/353立方メートル)を1トンとして現したもの。
「船舶のトン数の測度に関する法律」に基づく方式(昭和57.7.18施行):新トン数:船舶の全閉囲場所の容積を基準とし、運輸省令で定める係数K1を乗じて国際総トン数を算出した上で、この国際総トン数を基準として、運輸省令で定める係数K2を乗じて総トン数とする。
- 純トン数(NT:net tonnage) :貨物容積
総トン数同様であるが、貨物積載容積のみを示すもの。
- 載貨重量トン(DW:dead weight) :積荷重量
現代では、積荷は千差万別、要は実際の積荷の重量が大切で、タンカーなど積荷の重量を示している。
貨物船などの商船の場合、その「売り物」積める重さを示す単位。
他に、コンテナ船などは、積めるコンテナの数 TUEで、自動車運搬船などは、積める自動車の台数で、LPG,LNG船 などは、タンク容量を 立方メートルで、表わしたりしている。
- 排水量トン(displacement) :船体重量
船全体の重さを指す。艦艇など、容積や積荷が問題ではない船を、統一的に図る尺度。
見た目同じ大きさでも、排水量トンが大きいと言うことは、武器弾薬が多く積んであるとか、装甲重量・隔壁が大きく強いと言うことである。
基準排水量、常備排水量、満載排水量、水中排水量 など、色々な基準がある。
軽荷排水量(Ldt:Light Displacement):船体自体の排水量を示す。
満載排水量:燃料弾薬など、積めるだけ積んだ重さ。ほぼ出港時の重さ。
港で浮かんでいるだけなら、もっと積めるだろうが、それでは戦えない。
水中排水量:潜水艦の潜航中の排水量を示す。
基準排水量(Standard Displacement):燃料が何割など、戦場に着いた時の想定。ほぼ実際働いている時の重さ。
そういう意味では、出港時の排水量 > 入港時の排水量 である。
軍縮会議の時、どの時点の排水量を基準にするかが焦点となった。
船自体の重さ、いや、燃料弾薬があってはじめて戦力、いやいや、戦闘海域に着いた時の重さが初めて勝負の時点・・・
航続力の大きい日本の艦は搭載燃料を計上したくなかったし、搭載量の不足分を随伴するタンカーからもらうアメリカは燃料をすべて計上しても問題はなかったし。(日本は1隻単独でも戦力だが、アメリカは補給を含めて戦力と言う、この時点から発想が異なっていたワケ)
もちろん各国、計算値をごまかし、正直に作った国などどこにもない。
.
例えば、大きなバケツに水をいっぱい張って、その上に船を浮かべたときに、あふれ出た水の総重量が「排水量」。
- bmトン数(bm:builder's measurement) :積載量
長さと幅のみを使用し、ある算式より計算されるトン数。
軍艦の積載能力を表す数値として使用されていた。
アメリカ海軍では1865年、イギリス海軍では1872年まで使用されていた。
- トン(tons/tonnage) :容積
「トン」という言葉の本来の意味は「barrel(樽)」であり、メートル法が世界で採用されるまで100立方フィートの容積の単位であったとされている。
そして元々の綴りは「tun(タン、酒樽)」であったという。
13世紀のイングランドでは、国王の徴税官が輸入されたぶどう酒の樽の数を数えて税を課したが、これが「tonnage」と呼ばれたという。
従ってここでいうトンはtons、tonnageであって、tonnesではない。
- 英トン(long tons) :2240ポンド
- 米トン(short tons) :2000ポンド
- 補整総トン(Compensated Gross Ton) :
- 平方メートル :甲板面積
自動車運搬船、カーフェリーなど、車輌等積載用の甲板面積をあらわす。
- 立方メートル :貨物容積
LPG,LNG船 など、ガス輸送船(Gas carriers)は、タンク容量をあらわす。
- TEU (twenty foot equivalent unit) :20フィート・コンテナ単位 :貨物積載数
コンテナ船の、コンテナ積載数を表す単位。
20フィートコンテナ換算で何個と言うもので、現在標準の40フィートコンテナの場合、TEUで示される値の約1/2となる。
「約」というのは、一部のコンテナ船の場合、20フィートコンテナしかつめない部分があったりするため、必ずしも算術計算どおり行かないためである。
樽の数を数えてトンとした時代から、TEUは現代の「トン」ともいえる。
- 台数 :車輌積載数
自動車運搬船、カーフェリーなど、車輌積載数をあらわす。
大型車、普通車と、それぞれ分けて計上する場合もある。
船体の負荷
- ホギング / Hogging
船体の前後方向で、船体中央が押し上げられるもの。
.
- サギング / Sagging
船体の前後方向で、船体中央が押し下げられるもの。
.
- シェアリング / Shearing
船体の前後方向で、船体の部分ごとに押し上げられ、或いは押し下げられるもの。
.
- トーション / Toshon
船体の前後方向で、船体がねじられるもの。
.
- ラッキング / Racking
船体の断面方向で、船体がゆがめられるもの。
.
- / Heavyweight on middle line
船体の断面方向で、上甲板が圧縮されるもの。
.
- / Water pressure
船体の断面方向で、水面下の船体が押されて圧縮されるもの。
.
- ドッキング / Docking
ドック入りすることにより、船体の断面方向で、船体が膨張するもの。
.
船体の構造
- 丸木船の構造
.
- 和船の構造 鎌倉時代の準構造船
刳船式船底材に舷側板をつけた形式。
両舷の舷側板の間には梁を渡して支えとする。
.
- 和船の構造
船体の幅を広くするために、刳船式船底材と舷側板の間に外側に開いた舷側板をつけた形式。
両舷の舷側板の間には梁を渡して支えとする。
.
- 和船の構造 初期段階の構造船
刳船式船底材による船体幅の制約から脱するため、刳船式船底材を分割して平板の船底材を入れた形式。
両舷の舷側板の間には梁を渡して支えとする。
.
- 和船の構造
刳船式船底材を廃して、船底材とに舷側板すべてを平板にした形式。
両舷の舷側板の間には梁を渡して支えとする。
.
- 中国船の構造
竜骨に肋骨のついた隔壁を配し、細板を張り詰めたもの。
両舷の舷側板の間には甲板を配する。
.
- 西洋船の構造
竜骨に多数の肋骨(フレーム)を配し、細板を張り詰めたもの。
両舷の舷側板の間には、肋骨(フレーム)を配し、甲板をおく。
.
船体の構造
- 紀洋丸 わが国初の大型タンカー。
.
.
- 干珠丸 最初の縦通材方式。
.
.
- 戦後のタンカー
.
- シングルハル 単船殻
.
.
水色:貨物タンク、薄紫:バラストタンク
- セミダブルハル 二重底
.
水色:貨物タンク、薄紫:バラストタンク
- ダブルハル 二重船殻
.
.
水色:貨物タンク、薄紫:バラストタンク
- ミッドデッキタンカー
.
.
水色:貨物タンク、薄紫:バラストタンク
- 燃料タンクの二重構造化
.
.
薄紫:バラストタンク、ピンク:燃料タンク
- バラ積み貨物船
.
- ボックスシェイプ型
.
- 嵩上船型
.
- ツインデッカー型
.
機関室配置
.
.
機関室から推進器に推進軸(シャフト)が伸びるため、船体の長さが長くなると、推進軸(シャフト)も長くなり、船体容積を占有してしまう。
船尾に機関室を置くと、推進軸(シャフト)が短くてすむ。
機関-推進器配置
.
参考
⇒ 船の雑学
⇒ 船型
⇒ 船の構造
⇒ 艦艇の構造
⇒ 煙突(給排気口)
⇒ 船の設備
⇒ 船橋の色々
⇒ 船の指揮所(船橋)の変遷
⇒ 艦長室/船長室
⇒ 船のパーツ
⇒ 航海用機器
⇒ 舶用機関
⇒ 舶用機関(補機)
⇒ 推進器
⇒ 舵
新規作成日:2006年12月1日/最終更新日:2010年8月4日