船の動き方
一般に、車などの陸上の乗り物に比べて、船はなじみが薄い。
そのため、船の動き方は、実はあまり認識されていないことが多い。
が、船の動き方の基本を理解していると、動きの予測が出来る。
ここでは、その基本的なものを整理してみよう。
舵の効き方
一般に、船は、推進器は船尾にある。そして舵は、その更に後方にある。
従って、舵を切れば、推進力が舵の方向に制御され、為に、船尾が振る事によって、船首が針路を向く。
車の場合は、前輪が舵となり、ハンドルを切ればその方向に向いて進んでゆくが、船はそうは行かない。
しいて言えば、フォークリフトのように、後輪が舵取りとなっているわけだ。
従って、並走したまま舵を切ると、一般の車両の場合はそのまま離れてゆくが、船舶の場合、船尾を振ってしまうため接触の危険を伴う。
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遠心力
船体は遠心力によって、回転半径の外側に傾く。
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入出港
船の入出港には、タグボートが支援する。
為に、タグボートの支援なしでは、入出港出来ないと誤解している向きが多いのだが、そうではない。
タグボートを使えば、安全かつ容易に入出港作業が行えるが、元来船は単独で機能するものである。
大きな港湾では、安全の為に、タグボートの支援を規定あるいは推奨しているが、あくまで論理的なものであって、物理的に動作できないわけではない。
最近の大きな船には、スラスターがつけられていて、自力での操船が容易にはなっている。
離岸
さて、離岸の場合であるが。
1.船尾離岸
岸壁側に舵をいっぱいに切った上で、推進器を回す。
推進力は、舵によって岸壁側に推力が向かい、為に船尾が岸壁から離れてゆく。
このとき、船首をてこにして船尾をふるため、船首側では、防舷材やスラスター、あるいは竹ざおなどで押して、船と岸の接触を抑える。
ある程度角度がついたら、舵を戻して、後進をかければ離岸してゆく。
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2.舷側離岸
岸壁側に舵をいっぱいに切った上で、推進器を回す。
推進力は、舵によって岸壁側に推力が向かい、為に船尾が岸壁から離れてゆく。
同時に船首側では、スラスター、あるいは竹ざおなどで押して、船と岸を離す。
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3.船首離岸
船首側では、スラスター、あるいは竹ざおなどで押して、船と岸を離す。
船尾をてこにして船首をふるため、船尾側では、防舷材や推進力、あるいは竹ざおなどで押して、船と岸の接触を抑える。
4.中抜き
艦艇の場合並べて係留している場合が多い。
また、この場合、岸に近い側は先任の艦艇がついている場合が多い。
出港の時には、やはり先任の順に進みたいわけだが、係留している外側から出ないと出られない。
港外で順番をかえればよいわけだが、はじめから順番を構成したい場合も少なくない。
ここで、中抜きという方法がとられる。
それぞれの艦に索を渡し、曳船で横から同時に引き出し、十分間隔があいた段階で、内側の艦から出港するのである。
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竹ざおで押したくらいで船が動くのか ?
車は地上の「置物」なので、少々押したくらいでは動かない。
が、船は海に浮いている。
イギリス海軍では、巡洋艦程度でも、竹ざおで押して離岸する。
錨を利用した離岸。
着岸前に、錨を落としておく。
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離岸時には、錨を巻き上げると、船首がまっすぐに前進する。
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着岸前に、錨を落としておく。
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離岸時には、錨を巻き上げると、船首が離岸する。
船尾は、舵を切って推進器を回すと、離岸する。
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横風による針路
強い横風を受けると、そのまま風下に流されてしまう。
ここで、舵を切って風上に針路を向け、風力との合成で、予定針路を保持する方法がとられる。
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波 うねり
船体全長に対して波が小さい場合は、波きりによって航行できるが、
船体全長に対して波が大きい場合は、船体が波に乗ってしまい、ピッチングが激しくなる。
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参考
⇒ 洋上補給
⇒ ハイライン
⇒ 流体力学
⇒ 船の碇泊係留の色々
⇒ 船の動き方
⇒ 船の動き方教室
新規作成日:2004年6月4日/最終更新日:2009年4月27日