進水式
艦艇の建造には、設計から始まり、起工、進水、艤装、試験航海、引き渡し などの工程があります。艦艇は、海上で活躍する船ですが、その建造は、地上で行われます。そして、ある程度でき上がった段階で、海に浮かべます。これが進水です。
進水の方法
艦船の進水には、大きく3つの方式があります。
一般的なものは、船台からの「滑走進水」です。
そして「船渠進水」。
小型艇の場合には「吊り下げ進水」というものもあります。
特殊なものに「パレット進水」があります。
滑走進水は、昔から行われている一般的な進水方式で、船台という斜めになった陸上の台の上に船体を組み立てたものを、進水作業により海上に浮かべるものです。滑走開始から浮き上がるまで約1分。建造する側にとっては非常に緊張する一瞬です。もし、船として正しく出来上がっていなければ、あるいは作業に不手際があれば、転覆したり沈んだりするわけですから大変です。また、滑り始めたら途中で「ちょっと待って」というわけにも行きません。特に、船尾が海上で浮き上がり、まだ船首部分が船台上にある場合は、船体を曲げる力が働くので、大変シビアな状態になります。
基本的に、船尾から滑り降ろしますが、欧米など、河川沿いの造船所では、川に並行に船台があり、横滑り進水といって、左舷または右舷に傾けて進水する方式もあります。こちらの方式では、船体が横倒しになる危険が伴います。
また、小型の造船所では、重力にしたがって滑走させるのではなく、ワイヤーで牽引しつつ、徐々に海面へ降ろす場合もあります。
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横滑り進水
本当は船体ももっと傾き、豪快なものです。
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船渠進水は、船渠において建造されていたものを、船渠内に注水する事により行います。進水式としては、セレモニー要素が高い為、事前に船渠に注水し、式典最中に船渠から引き出す事を持って、進水とするようです。
滑走進水に比べ、徐々に浮き上がる為、万一の場合中断する事も可能で、比較的安全な進水方法です。
石川島播磨重工業・横浜造船所、住友重機械工業・横須賀造船所 などで行われます。
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吊り下げ進水は、小型艇の場合に実施されるもので、陸上の工場で建造された船体を、クレーンにより吊上げ、海上に降ろす事により実施します。
三菱重工・下関工場、日立造船・神奈川工場 などで行われます。
吊下げ進水
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パレット進水とは、陸上の工場で建造された船体を、パレット(エレベーター)へ移動積載させ、パレットを下げる事により、海上に浮かべるものです。
三菱重工・神戸造船所 などで行われます。
進水式
艦船の進水は、船としてはじめて浮かぶ事から、進水式として執り行われる事が一般的です。その式次第は、国や造船所、発注者などにより、さまざまです。
海上自衛隊の艦艇の場合は、
・国家奏楽
・命名式
・進水準備
・支綱切断
・進水
・進水完了報告
というものが一般的です。
海上自衛隊の場合、命名までは艦艇として名前がついていないという事で、建造番号で呼ばれます。例えば、護衛艦たかなみ の場合は、DD2239番艦というように。
進水式会場の看板なども、みな DD2239番艦という表示がなされます。
命名は「命名書」により行われ、命名と同時に、垂れ幕などで艦名が公開されます。
命名者は、一般に発注者が行います。海上自衛隊艦艇の場合は、防衛庁契約本部(旧調達実施本部)が行います。
ということから、海上自衛隊の場合、進水式を「自衛艦命名式」と位置づけています。
進水準備は、文字どおり、進水作業の準備です。
滑走進水の場合は、進水準備発令「ただいまより進水作業を行う」の号令から、「進水準備」「腹受盤木取り外し始め」盤木を取り外す作業、「進水作業始め」安全確認発令、「安全ピンを外せ」と、着々と作業が進められます。
支綱切断は、元来、滑走進水におけるもので、文字どおり、船体を陸上に繋ぎ止めている支え綱の切断であり、この支綱切断により、滑走が始まります。
また、同時に、吊るされていたシャンパンが艦に当てられ、お祝いに華を添えます。
支綱切断は、欧米では、発注側主賓のご夫人など、女性が行う場合が多いですが、海上自衛隊艦艇の場合は、防衛庁契約本部(旧調達実施本部)が行います。
支綱は、現在ではセレモニー的要素が大きく、シャンパンを支えている綱に過ぎません。
滑走進水以外においては、支綱そのものが必要ないため、意味はないのですが、セレモニーとして行われ、進水の開始とされます。
行進曲「軍艦」(軍艦マーチ)演奏下に船体は進水し、海上に浮揚した所で演奏が止められ、タグの祝賀汽笛や、花火が上がり、進水が完了します。
この後、進水完了報告により、式典は終了となります。
進水式参列者
工場側 社長、工場長、他
発注側 防衛事務次官、契約本部長、海幕(副長)、地方総監、他
その他来賓。
日立神奈川の場合、船台周囲のゲートに、塩が盛られ、清められています。
進水式のシャンパン
進水式のシャンパンは、赤いワインだったといいます。
そして、起源は、生け贄の血だったと言われています。
自衛艦命名書
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命名 垂れ幕
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支綱切断用の斧
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支綱切断器
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シャンパン
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参考
造船所
船の設計研究施設
船のできるまで
船のできるまで(船台竜骨建造方式)
進水式
引渡式
私の見た進水式
新規作成日:2003年4月22日/最終更新日:2003年10月8日