海上自衛隊の対機雷戦の系譜
対機雷戦とは、海中に敷設された機雷に対する作戦であると共に、機雷の敷設業務も含む。
海上自衛隊の大きな任務の一つは、海上交通路の確保である。
太平洋戦争時、港湾に敷設された機雷や、洋上で待ち伏せる潜水艦などにより、おびただしい船舶が被害を受け、我が国の経済は崩壊した。
戦後、最初に開始されたのが、全国の港湾に敷設された、機雷の除去作業である。
旧海軍の残存艦艇により継続されたこの業務は、後に、海上保安庁を経て、海上自衛隊に引き継がれている。
戦時下ではないというのは、あくまで法的政治的整理であり、敷設された機雷そのものは、触れば爆発する「実弾」であった。
掃海船 MS01 ちよづる 型、掃海船 MS18 うきしま 型、掃海船 MSetc その他 型、掃海船 MSxx 雑 型、などが海上保安庁より引き継がれ、また、
掃海艇 MSC651 やしま 型、掃海艇 MSC655 うじしま 型、掃海艇 MSI680 うきしま 型、掃海艇 MSI690 よしきり 型、などがアメリカ海軍より貸与された。
また、特殊な艦として、掃海艦 桑栄 型、があった。試航艦ともいわれ、掃海完了の確認の為に、実際に水路を航海させ、安全を確認するものである。
もちろん、不完全な掃海状況であれば、触雷ということになる、いわばモルモットであった。
掃海艇は、いち早く国産が開始され、掃海艇 MSC601 あただ 型、掃海艇 MSC603 やしろ 型、に続いて、掃海艇 MSC604 かさど 型、が量産された。
また、掃海艇を支援する艦として、掃海母艦 MST461 はやとも 型、掃海母艇 MST471 なさみ 型、などの母艦も整備された。
そして、敷設艇 AMC491 えりも 型、敷設艦 ARC481 つがる 型、なども整備された。
ここでいう敷設艦は、機雷敷設も可能とされていたが、本来は、水中武器の敷設維持管理の為の艦艇であった。
沿岸、港湾などの浅海面掃海の為、掃海艇 MSB701 掃海艇1号 型が整備され、その代替としては掃海艇 MSB707 掃海艇7号 型、が整備されている。
航空機による掃海として、V-107掃海ヘリが導入されている。
掃海艇は、やがて掃海艇 MSC630 たかみ 型、掃海艇 MSC649 はつしま 型、掃海艇 MSC672 うわじま 型と改良が重ねられていった。
支援にあたる母艦も、掃海母艦 MST462 はやせ 型、機雷敷設艦 MMC951 そうや 型、に更新された。
小型掃海艇の母艦は、掃海艇を種別変更した、掃海母艇 MST473 こうづ 型、掃海母艇 MST475 うとね 型、などがこれにあたった。、
海上自衛隊の掃海業務は、防衛出動に対する作戦掃海と、太平洋戦争により敷設された機雷の除去の為の、業務掃海に二分され、2個掃海隊群が、それぞれを担当していた。
業務掃海完了宣言により、掃海隊群は、2個とも作戦掃海に専念することとなった。
が、残存機雷や不発弾は皆無となることはなく、随時、処分を行っている。
75式機雷処分具 S-4
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1992年の湾岸戦争後、海上自衛隊の掃海部隊が派遣されることとなった。
そして、無事任務を完了したが、現場に参集した各国掃海部隊との交流も、極めて大きな成果となった。
業務掃海を通じて培われたノウハウは、重要なものではあるが、近代作戦としての掃海は、とてつもなく進化しており、諸外国の掃海具との差は目をみはるものであった。
ここに、従来の「掃海」から「掃討」へと、変革が始まる。
こうして掃海艇 MSC681 すがしま 型、の整備が始まった。
また、深海域へ敷設される機雷への対応として、掃海艦 MSO301 やえやま 型、が建造されている。
S-7機雷処分具
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支援の母艦も、代替の時期を迎え、掃海母艦 MST463 うらが 型、が整備された。
掃海母艦としての機能のほか、機雷敷設艦の機能も併せ持つ。
機雷敷設は、航空機や潜水艦からも行う事が可能である。
航空機による掃海として、MH-53E掃海ヘリが導入されている。
MH-53E
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浅海面用の小型の掃海艇は、無人自航式掃海具SAMの導入により退役し、その管制艇として、掃海管制艇 MCL721 ふくえ 型、掃海管制艇 MCL722 にいじま 型が整備された。
自航式掃海具
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掃海方式
基本的に、各種掃海具を曳航して行う。
曳航には、ケーブルとフロート、展開器、沈降器、を使用し、展張し、艦尾より曳航する。
音響機雷に対しては、音響掃海具(音原体)を使用する。
磁気機雷に対しては、電欄を使用し、電流を流して磁場を作る。
係維機雷に対しては、ケーブルにカッターを取り付け、係維索を切断し、浮揚したところを機関砲により射撃、爆破する。
音響掃海具
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掃海具 展開器
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掃海具 フロート
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電欄
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機雷
機械水雷。海中に設置され、航行する艦船に被害を及ぼすもの。初期のものは触角を備え、触角に触れると爆発するものだった。以後発展を遂げ、航行する艦船を(水圧、磁気、推進音 などで)感知し、爆発するものになっている。最新のものはキャプターと言う、魚雷複合のもので、海底で待ち受け、艦船を感知すると、魚雷として向かって行く物もある。最近のものはこのセンサーの寿命(電池寿命)が兵器の寿命となっている。また、掃海から逃れる為、最初の何回かの感知を無視するカウント型もできていて、対応が難しい。
管制機雷と独立機雷に大別される。
敷設手段により、水上艦船用機雷、航空機雷、潜水艦用機雷
敷設状態により、浮遊機雷、係維機雷、沈底機雷、水際機雷
発火方式により、視発機雷、触角機雷、感応機雷
触角機雷は、触角機雷、水中線機雷、慣性機雷
感応機雷は、磁気機雷、音響機雷、水圧機雷、複合機雷
にも分類できる。
機雷
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航空機敷設機雷
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水際地雷
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⇒ 対機雷戦
⇒ 機雷
新規作成日:2003年4月28日/最終更新日:2003年4月28日