イージス防空システム

イージスシステムは、アメリカの巡洋艦「タイコンデロガ」級で初めて搭載された、画期的艦隊防空システムで、フェーズドアレイレーダーと、高性能情報処理システムにより、同時多数の航空攻撃に対して、艦隊防空を果たす事が出来る。
フェーズドアレイレーダーは、かつての原子力巡洋艦「ロングビーチ」や、改装前の原子力空母「エンタープライズ」で採用されたレーダーで、レーダー板自体は固定装備されていて回転せず、電子的走査により、電波の進行方向を操作制御して、瞬時に天空を走査する、画期的レーダーである。艦橋構造物の周囲に4枚設置されているが、各々90度の範囲を担当し、4枚で全周をカバーしている。性能上、各90度を超える範囲もカバーできる。
一般のレーダーは、1回転するのに、1秒前後必要で、レーダー板が裏を向いている時間は、目標の監視が出来ていないが、フェーズドアレイレーダーでは、常に目標の監視を継続する事が出来る。
搭載される対空ミサイルの誘導方式も、発射から到達までを艦から制御せず、慣性航法と、時分割的な指令で誘導され、為に、誘導装置の個数=飛行中のミサイルの数 と言う、従来の制約から脱皮している。従って、ランチャーも、従来の方式では性能を引き出せない為、垂直発射機構VLS(Vertical Launching System)が最適とされ、ほぼ同時に何発もの発射を可能としている。
また、システムの設計上では、他艦搭載のランチャーから発射されたミサイルをも誘導する事が可能となっている。
中距離弾道弾の脅威に対抗する為、イージスシステムにも、この対応能力の付与がアメリカを中心に研究されている。
イージスシステムを搭載する艦は、アメリカの他は、日本のこんごう型と、スペインのアルバロ・デ・バザン(F101 ALVARO DE BAZAN)級のみである。


SPYレーダー
SPY-1A: 巡洋艦、駆逐艦用 12ft(3.7m) 4350elements CG47等
SPY-1B: 巡洋艦、駆逐艦用 12ft(3.7m) 4350elements CG47等
SPY-1D: 巡洋艦、駆逐艦用 12ft(3.7m) 4350elements CG47,DDG51,DDG174(こんごう),F101(Bazan)等
SPY-1D(V): 巡洋艦、駆逐艦用 12ft(3.7m) 4350elements CG47,DDG51,KDX3等
SPY-1F: 駆逐艦、フリゲート用 8ft(2.4m) 1856elements
SPY-1F(V): 駆逐艦、フリゲート用 8ft(2.4m) 1856elements
SPY-1K: フリゲート、コルベット用 5.5ft(1.7m) 912elements F310(Fridjof Nansen)等
Dcim0489/Dsc_7252. Dcim0489/Dsc_7253.

Mk.41 VLS
Dcim0490/Dsc_7290. Dcim0490/Dsc_7293. Dcim1311/DSC_9418.

RIM-161スタンダードSM3
戦域弾道ミサイル防衛型
射程:130浬(240km)、全長:6.55m、直径:0.31m、弾頭:高性能爆薬
2004.11実戦配備予定
p1237017. p1241020. p1241021. p1241022. p1237023.

開発の経緯

東西冷戦最盛期、アメリカの空母機動部隊に対して、ソ連軍からの同時多数のミサイル攻撃による、飽和攻撃が懸念された。
対空ミサイルの精度が上がったとは言え、1つの誘導装置で1発づつ射撃するわけで、防空艦の誘導装置の数がすなわち、同時対処能力という事になり、これを超えた物が、すなわち「命中」してくるわけである。

対策として、多数の目標を掌握できるレーダーと、同時多数の処理能力が求められる事になった。

アメリカ海軍では、これを踏まえた後継のシステムとして、RIM-50タイフォン(Typhon)LR、RIM-55タイフォン(Typhon)MRの開発を行ったか、1961.3に最初の試射を行ったものの、1963.11に開発中止され、実用化には至らなかった。

タイフォン計画中止とほぼ同時期にASMS(Advanced Surface Missile System)がスタートした。
そして1969.12には、イージス武器システム(Aegis Weapon System)となっている。
1973には、陸上の試験サイトでフェーズドアレイレーダーSPY1の目標追尾試験が成功している。
1973.12-1974.1には、ミサイル試験艦「ノートン・サウンド」に装備され、1974.3に艦上でのフェーズドアレイレーダーSPY1の目標追尾試験が、1974.5.16には、ミサイル発射試験が成功している。
これをもって、1978.9に、イージス搭載艦の1番艦の建造契約が行われた。
スプールアンス級の船体に、イージスシステムを搭載した、DDG47タイコンデロガである。
その後、当時のどのミサイル巡洋艦よりも強力であるという理由から、CG47に改められて1983.1.22に就役した。


CG47タイコンデロガの搭載のイージスシステムの主な構成品

多機能レーダー (Multi Function Rader) SPY-1A
戦闘指揮決定システムC&D (Command and Decision System) Mk.1
武器管制システムWCS (Weapon Control System) Mk.1
ディスプレイ・システムADS (Aegis Display System) Mk.1
自己診断システムORTS (Operational Readiness Test System) Ml.1
ミサイル発射機 Mk.26
スタンダードミサイル (Standard Missile) SM-2MR
射撃指揮装置 (Fire Control System) Mk.99
イルミネーター SPG62

タイコンデロガ級
p0029/p0029009. DSC_1746.

スタンダードミサイル(SM1-MR)は、イージス用として発展し、スタンダードミサイル(SM2-MR)が開発された。
また、VLS垂直発射機構の実用化に伴い、小型のブースターを装備したスタンダードミサイル(SM2-ER)も開発されて行く。
紛らわしいのだが、SM2-ERは、テリア用の(RIM-67系)BlockUまでと、(RIM-66系)BlockV以降とでは製品体系が全く異なり、イージス用のSM2-ERは後者である。

MRと言うのは中距離用の意味で、ERは射程延伸型の意味である。


発射情報探知、発射探知・追尾、上空撃破、終末段階撃破
Pict_0640. Pict_0641. Pict_0642. Pict_0643.

迎撃範囲
SRBM/MRBM:SM3、IRBM:SM3、ICBM:SM3、SRBM/MRBM:PAC3
Pict_1323a. Pict_1323b. Pict_1323c. Pict_1323d.

参考
ミサイルの誘導方式
イージス防空システム
防空システム イージスへの系譜
Mk41 VLS
戦術情報処理システム
護衛艦 DDG173 こんごう 型
護衛艦 DDG177 あたご 型
CG47 TICONDEROGA 型
DDG51 ARLEIGH BURKE 型
DDG79 ARLEIGH BURKE (フライトUA) 型
弾道ミサイル防衛
弾道ミサイル
2006.6テポドンへの対応
対空戦



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新規作成日:2003年4月22日/最終更新日:2004年10月7日