レーダー
レーダー
radio detection and ranging(無線探知測距)
電波によって目標を捜索するもの。
一般に、距離は電波の反射時間により、方向はレーダーの回転方向により測定する。
航海レーダー、対水上レーダー、対空レーダー、射撃指揮レーダーなどがある。
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一般に、アンテナを回転させることによって、全周をまかなうが、フェーズドアレイ方式により、アンテナ面を固定し、電子的に走査するものもある。
一般に二次元の平面を走査し、対空レーダーといえども空域上の高度は別途確認が必要だが、三次元レーダーのように、同時に高度情報も取得できるものもある。
この場合、水平方向はアンテナを回転させることにより、高度は電子的走査によるものが一般的である。
捜索用レーダーが一般的だが、目標指示、射撃指揮用のものもある。
捜索用レーダーは、常に全周を監視するが、目標指示、射撃指揮用のものは、特定の目標を捕らえて追尾する。
フェーズドアレイレーダーは、電子的に走査するため、極めて高速に探査が可能である。
一般のレーダーは、一回転に約1秒前後必要だが、フェーズドアレイレーダーでは一瞬である。
例えば、ブラウン管方式のテレビ画面では、一秒間に30枚の絵を映し出しているが、これに準じた速度である。
機械式走査方式
レーダーのアンテナ面を回転させることによって、電波の方向を制御し、全周を走査する。
電子的走査方式
レーダーのアンテナ面に取り付けられた多数の素子から、電波の発信する時間を僅かずつずらして発信させることにより、電波に方向性を与え、これを順次繰り返すことによって、全周を走査する。
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一般に、パルス方式であり、電波の瞬間的送信と、反射波の受信を繰り返す。
これに対して、CW方式があり、連続波によって探知するもので、時間差の計測のため、周波数変調等が行われる。
水上レーダーの覆域
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対空レーダーの覆域
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航空機搭載対空レーダーの覆域
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対空レーダーの場合、天空上の一点の反応は、電波伝搬距離のみを示すため、高度も距離も実は正確にはわからない。
極端な例として、下図のように、目標が水平線付近の場合は探知距離=ほぼ正確な距離だが、直上に近い場合は、探知距離=高度を示すようになる。
従って、何らかの制御がなければ要を成さない。
一例として、感知素子を複数配列すれば、その感度差により、ある程度の高度は感知可能となる。
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2枚のレーダー面を複合し、一面を若干傾斜して装備することにより、ある程度の三次元能力を有する。
仮に、目標が天空に静止している場合、一面目で探知した目標に対し、二面めで探知した方位の差を解析すれば、高度が算出できる。
すなわち、同一方位にて探知した場合には、レーダー覆域の中高度であり、これより早い、または遅い探知によって、高度の高低を示す。
もちろん、飛行体は移動体であり、レーダー面の回転時間分の移動ベクトルを加味する必要がある。
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- Aスコープ表示方式
縦軸に電波強度、横軸に時間を取ったオシロスコープに波形を表示させることにより、強度が最も大きい反射波が戻ってくる時間から対象物までの距離を読み取っていた。
方向は、レーダーの指向している方向を別途確認する。
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- Bスコープ表示方式
横軸に方位、縦軸に距離を示す方式。
一部の航空機用レーダーに採用事例がある。
- PPIスコープ(Plan Position Indicator scope)
円形の表示器に、時計方向に回転する走査線(アンテナが探査波を発射し反射波を受けている方向を表す)によって、対象物の二次元上の所在を一覧できるようにしたもの。
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周波数帯表
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レーダーの種類
- 航海レーダー
航行の安全のため、水上の艦船などを捜索する。
捜索結果はスコープに表示され、利用される。
艦艇においては、対水上レーダーと兼用のものも多いが、民生品を使用する例も増えている。
距離は電波の反射時間により、方向はレーダーの回転方向により測定する。
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- 対水上レーダー
水上の艦船などを捜索する。
艦艇においては、航海レーダーと兼用のものも多いが、性能や、電波封鎖の観点から別々にする場合も増えている。
距離は電波の反射時間により、方向はレーダーの回転方向により測定する。
基本的に水上航行する船舶を捜索対象とするが、低空を飛来するミサイルに対する機能を有するものもある。
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- 対空レーダー
航空機などを捜索する。
一般に、方向のみを測る二次元方式だが、対空ミサイルとの連動が増えた今日、三次元式のものも増えている。
距離は電波の反射時間により、方向はレーダーの回転方向により測定する。
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- 高角測定レーダー
航空機などを捜索する。
方向のみを測る二次元方式の対空レーダーで方向を確認した後、対空ミサイルへの目標諸元を与えるために、高度を測定するもの。
現代では、単体では使用されておらず、射撃指揮装置のパーツを構成している。
方向はレーダーの指向方向により設定し、高度はレーダーの指向角度により測定する。
写真はロシアの射撃指揮装置のものだが、この両脇に縦を向いているのが高角測定レーダーである。
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- 三次元レーダー
方向のみの二次元方式ではなく、同時に高度も測定できる三次元式のもの。
距離は電波の反射時間により、方向はレーダーの回転方向により、高度は電子走査により測定する。
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- フェーズドアレイレーダー
従来の三次元レーダーでは、レーダー面が回転しているため、高速目標の対応には問題があり、同時多数の目標に対応するために開発された。
レーダー面は固定されており、全周をカバーするために、複数装備する。
距離は電波の反射時間により、方向、高度は電子走査により測定する。
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- 射撃指揮装置
火砲、ミサイルの正確な射撃のために使用するもの。
レーダーで捕らえた目標に対し、更に詳細なデータを取得し、射撃諸元を与えるもの。
また、ミサイル誘導のための電波照射を行う。
当初は、測距儀などの目視と計算機に頼っていたが、現在ではレーダーとコンピュータの組み合わせにより、射撃データも直接送信される。
陸軍用語では「射撃統制装置」であるが、共に英訳は Fire Control System である。
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- 対迫レーダー
迫撃砲の弾道を計測し、発射位置を算出するもの。
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レーダーの表示精度
レーダーというと、「完璧な表示をしてくれる」と思われている。
しかし、それほど完全なものではない。
航空機が自動操縦できるのは、レーダーの覆域が、他に障害の少ない空であることと、地上設備による航法援助があるためでもある。
レーダーで捉えられる信号は同じでも、ノイズ除去など機械的な一律な機能には限界があり、レーダー使用者の経験と技によって利用精度が高められる性質のものである。
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感度調整 (低-高)
感度が低ければ何も映らず、感度が高いと、海面反射や雲など、何でも映してしまう。
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海面反射除去 (低-高)
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参考
⇒ 艦載兵器あらかると
⇒ 電子兵器
⇒ 電子戦装置
⇒ レーダーとECM
⇒ レーダー
⇒ マスト
⇒ 電子戦
⇒ 対空戦
⇒ 電波の種類
新規作成日:2006年11月28日/最終更新日:2008年11月3日