浮くということ | はじめに |催眠状態 ←||→催眠現象 |
浮くというのは、「催眠状態とは」で説明したように、「社会的な自分」が「自然な自分」
から浮き上がってしまったことをいいます。「社会的な自分」と「自然な自分」が分離してしまい、とりあえず指示は伝わっているけど、「自然な自分」が比較的自由に動ける可能性のある状態です。そのため、習慣的な行動や作業がやりやすい状態だし、感情や直感というものが解放されて、いい状態だとのびのびと自由な芸術活動とかに適した状態といえます。ただ、いつ他の物が入ってくるかわからないし、特にいやな感じで浮いている時は、いつ「自然な自分」が混乱したり暴走したりするかわからないという状態です。
とはいえ、浮いた距離が短ければ、影響も小さく、なにかあれば「社会的な自分」がすぐ帰ってこられます。
通常、人間の状態は、が浮きっぱなしではなく、浮いたりついたりしています。まさに、あの図の通りといっていいかと思います。だから、普通は問題なしです。
なぜ何のために浮くのか、ということに関してはわかっていません。また、浮いてる時、人間の状態はどうなっているのかもよくわかっていません。脳波でアルファ波が出ている状態だという人もいますが、ベータ波やシータ波も出ています。リラックスしているともいえるし、緊張し集中している時もあります。
現象としては確かにあるけれども、その持つ意味は今のところ不明です。
問題なのは、浮きっぱなしになった時に、悪意を持って操作されたり、「自然な自分」の役目や状態、思いといったものを無視して指示されてしまったりするときです。または、恐怖や逃げ場のない感じ、両方に引っ張られて動きが取れない時、板挟みになったようなとき、そんな感じで浮いてしまったりすると、「社会的な自分」が、いくらちゃんとしているつもりでも、「自然な自分」の方は混乱していたり、機能停止に近い形になっていたりします。
そうなると、身体的にも心理的にもいろいろと不都合や、思わぬことがおこったりします。極端な時には、手や足が何の理由もなく動かなくなったり、首が動かなくなったり、目が見えなくなったり、逆にそれらが勝手に動いたり、あるいは不安が増したり、幻覚を見たり、幻聴がおこったりなど、なんでもおこる可能性があります。もちろんそのときの「自然な自分」の状態や、考え方にもよりますけど、どんなことでもおこり得ます。
ではここで、どんな時に浮くのかいくつかパターンに分けてみましょう。
■集中(○)──興味のある事か何かに、集中したり没頭している時
■ショック、驚き(△)──何かに驚いたり、衝撃を受けたり、感動したり、喜んだりした時
■リラックス、物思い(○)──ゆったりとした気持や体の時、心地よく何かを思いめぐらせている時
■空白(△)──何もすることができず、立ち去ることもできない時
■半断停止(×)──どうしたらいいかわからない状態の時
■関係をとる(コミュニケーションを取る)(△)── 親密な関係、パターン化された関係を取る時
■緊張関係(ジレンマ、板ばさみ等)(×)──受け入れも、拒否も、選択も、逃げることもできない関係の時
■気がかり(×)──何かが気になって仕方がない、頭にずっと残っている時
■単調な活動(△)──習慣化した単調な活動を続ける時
■説明(△)──興味がなかったり、長々とした話や、論理的な説明を聞かされる時
■体の状態(△)──身体的に具合が悪かったり不安定で考えることができない時
■催眠誘導される(△)──上記の条件を使って誘導される時
さて、ここまで読んで、これじゃ日常一日中浮いてるじゃないかと思った人・・・大正解です。
催眠状態の所で書いたように、人間は一日中浮いたりついたりしています。それが、人間の普通の生理なのです。催眠に入っている時でさえ、浅くさめかけたり一瞬にして深くなったり(遠く浮いたり、近くに戻ったり)しています。意識できない所で、いろんな状態の中を絶えず移っていってるというのが普通の状態です。
さめた状態を保ち続けるというのは、非常に難しいと思ってください。人間は、非常に浮きやすい物だと思ってください。まだ、統計を取った人はいませんが、一日のうち多分9割近くはなんらかの形で浮いている思います。
だから、浮かないように気を付けより、いい形で浮いて、必要な時即座に覚めること、切り替えられることが大事です。
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