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「輪乗りとは、文字通り円を描くように乗ることです。曲がる動作を続けていれば輪乗りになります。曲がる動作が弱ければ、円の直径は大きくなり、強ければ小さくなります。もし、動作が安定しなければ、きれいな円にはなりません。きれいな円になっているかどうかは、馬の耳の間の景色の変化する速度で判断して下さい。」
「それでは、乗馬して、輪乗りを始めて下さい。円の大きさは最初なので、どうなってもいいです。まず、やって見ましょう。馬に飛び乗るのは無理ですか。いちいち鐙を長くして乗っていたら、時間がかかってしまいます。どうやら筋力不足のようです。」
「馬は、もともとは楽をして行動範囲を広げるために使われたものですが、現在では乗馬はスポーツです。人間の体重に比べて8倍くらい重いので、それを十分扶助するには、筋力が必要です。今日から、乗馬の練習が終わったら、筋力トレーニングもすることにしましょう。」
「さあ、乗れましたね。前回よりもスムーズに乗れました。え、『まだ歩かせていないのに、馬が時々変に揺れるのはなぜですか』という質問ですか。ああ、それはウシアブが1匹馬の腹に止まって血を吸おうとしているので、後足で追い払おうとしているからです。そういえば、さっきから尻尾の動きも活発でした。アブを追い払うための揺れも、良く覚えておいて下さい。馬の状態を把握するための情報は何でも大切だからです。」
「体が左右にゆらゆら揺れるので、きれいな円になっていませんね。体は心持ち円の中心の方向に傾けて下さい。少し、脇の下が開いています。紙1枚を挟んだような感じにして下さい。」
「馬が緊張していませんね。だらだら歩いています。首の角度が横から見ると随分寝ています。馬に馬鹿にされているんですね。馬が緊張すると首を少し上げ、少し上に凸の形に首をたわめます。そうなっていません。」
「え、馬が止まってしまいましたか。ああ、尻尾を上げて、ボロを出してますよ。馬が緊張していれば、ボロを出しても速さは変わりません。走りながらでも、ボロを出します。」
「おならをするのもいますよ。そういう馬の後ろを走っていると結構くさいです。さすが、歩きながらおしっこはしません。前を走っている馬がおしっこをして、その霧を浴びてしまう恐れはないので、安心して下さい。」
「少し、速度が遅いようです。落馬が怖いので、無意識のうちに手綱を引く力を強めていませんか。こういう状態で、速度を上げるためかかとで腹を蹴ると、手綱では速度を落とせと命令されているのに、腹を蹴って速度を上げろという命令も同時に受けることになります。馬はどうしていいかわかりません。手綱を少しゆるめて下さい。それで、速度が上がらないようなら、手綱を引く力を強くしないように注意しながら、腹をかかとで軽く蹴ってみて下さい。ああ、少し速くなりましたね。」
「体が少し硬いようですね。今日は寒いから、少し、体を温めましょう。それには、馬上体操というものをやります。手綱は完全にゆるめて、馬は好きな方向へ歩かせていいです。馬を締め付ける力を強めて、上体を馬に接するまで後ろに倒して下さい。倒したら、力を抜いて上体の体重を馬の背に完全にあづけてしまってもいいです。そうすれば、今日はあいにく曇天ですが、もし、晴れていたらきれいな空が見えます。馬の背から見るピーカンの青空は格別ですよ。では、次に体を起こしてまた同じことを10回繰り返して下さい。」
「少し、体が温まりましたか。そのほかの馬上体操として、左から馬に飛び乗り、右側に飛び降り、今度は右側から飛び乗り、これを10回なり20回なり繰り返します。筋力トレーニングの効果が出て、飛び乗り飛び降りができるようになったら、是非、やって見ましょう。」
「では、もう一度円の直径を少しずつ小さくして下さい。そうそうそうです。ところで、並足にも、遅い並足、普通の速さの並足、速い並足の3種類あります。明日練習を始める予定の速足にも、遅いのと、普通のと、速いのとで、3種類あります。速い並足は遅い速足より速いです。駆足にも同様に3種類あって、遅い駆足より速い速足の方が速いです。駆足より速いのは、襲歩です。競馬馬の走り方です。それぞれの走り方で、馬の揺れ方が違います。速足は激しく上下に揺れます。」
「ところで、この乗馬教室のスポンサーはC言語講座:初級から中級までですが、C言語というコンピュータプログラミング言語を学ぶ上で、最初の難関は「ポインタ」というものを理解することらしいんですが、乗馬における「ポインタ」に当たるものが、速足でも落馬しないということです。」
「小さい馬で速足をだすと、息をするのも難しいくらい激しく上下に揺れます。おまけに、結構スピードが出るので、馬の高さに慣れていないと怖いです。馬にとっても速足は、自分の体の上で人間がどしどしと上下に振動するので、不愉快この上ないものです。時には、積極的に人間を振り落としたくなります。実際、乗っている人が初心者で、馬が馬鹿にしている時など、勝手に急に曲がったりして、振り落とすことは良くあります。」
「今日はこれくらいにしておきましょう。いよいよ、明日から速足の練習をします。」
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