第1話 サタヒープにいこ

あつい。

あつい国に暮らしていると,あつい!というセリフを言

う事自体が少なくなってくるような気がする。

それが通常なんだもん。



学校からかえり,今日はその足で馴染みになった店で料

理を教えて貰った。 ケーンキオワーンとトムカー,や

っぱその場でペーストを作るというのはしんどい。石臼

を叩いていると汗が目の中に盛大に入ってきた。

厨房のスペースは2畳もないだろう。

そこで思いっきり火を使っている。

真夏の押入のなかで焚き火をしてるようなものだ。



ここ最近はこの店にレシピ集めで出没していた。

とびきり旨いと言うわけではないが,小型レストランと

してはメニューも揃い,俺のやりたい規模に似ている。

入り口付近にはアイスクリームやケーキ,パンを小売り

するコーナーがあり,その奥がレストランになっている。

アパートからすぐ近くのこの店,3回ほど通ってから

厨房を見せてくれない?とボーイにきりだした。



・・・作るところを見たいんだけど。いいかな?



「??」



・・・タイ料理の店を日本でやりたいんです。

厨房の中を見たいんだけど・・ダーイ マイ?



「ダーイ,ダーイ!」



店のオーナーが何事か?とやってきたが,ボーイの説明

を聞くとニッコリとしてくれた。

この国にいて何が良いってこのニッコリがあるから良い

んだよなぁ。やなこともあるけどさ。





いつもここには5時過ぎくらいに来る。

仕込みを,申し訳程度に少し手伝い,

自分で食べる分を注文して,それを作るところを見る。

なにしろスペースが狭いからジャマにならないよう店が

忙しくなる前に退散することにする。





「イトウ,明日は土曜だし,どこかいくんだろ?」

コックのヤイが聞いてきた。もう50近くになるいい親父

さんである。



・・・そうだね,どっか人の少ない良いところ知ってる?



「だったらコ・チャーンが良いぞ。ホテルとかないから

島のお寺に泊まりなさい。 お布施を30バーツもすれば

泊まれる。」



・・・へー,じゃあ白人とかもいないかな。

彼ら,どんな田舎に行ってもいるもんなー

有り難う。地図を見てみるよ。





お愛想を言ってしまった!

ホントはトラートまでいかなきゃならんのは知ってたし,

最近疲れてる。ちょっとそこまでは行く元気がないんだ

よなぁ。



アパートに帰って地図で距離を見る。

どう見積もってもバスで7時間だよな。月曜のことを考え

ると今はパス!元気になったら行こう。

パタヤの隣のチョンティエンビーチでビールでも飲んで

昼寝するか?ん〜,ん。

パタヤの先の半島の先端部分に・・サタヒープ?

ガイドブックには載ってないね。行ってみるかぁ。



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続く・・です(^^)


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