第2話 サタヒープにいこ

雨だ。

パラパラ空から水がふってくるのをベランダから不思議

な気分で眺める。そういえば5月なんだから雨期が来るん

だわなぁ・・・

あまりにも久しぶりの雨はなんだか不自然なるもののよ

うだ。おかげでがくんと気温が下がったようで,道理で

昨日は良く眠れた。



時計はもう9時を過ぎている。

予定ではもうバスに乗ってるはずだったが・・

まぁ,いいや。エカマイにいこー



アパートを出ると,路地をタノン・スィ・アユタヤに向

かってホテホテ歩く。ここから即,バスに乗れるが腹が

少し減ったな。

インドラの近くのカノムチーンをすすりに行く。ここの

は少し甘いが,たまに食うぶんにはうまいんだよね,ず

るずる。

これまたすぐそばのお馴染みの薬局で(なんと,商売敵

が20mも離れずに営業していて,以前店を間違えて怒ら

れてしまった)菊花茶がガラスコップに入って冷えてる

のを自分で勝手に取り出してぐびぐび飲み干し,2バーツ

を置く。

思いっきり甘くて冷えてて,サトウキビのジュースと並

んで愛用している飲み物である。



エカマイに着いたのは正午少し前だった。

タイミングが悪くて,サタヒープ行きの次のバスはチケ

ットが売り切れたばかり。

次のを買って,隣の博物館で時間を潰すかな・・



雨は降ったりやんだりだった。

バスは滅法飛ばしている。

まるでチェンマイ行きみたいだ。

運悪く,最前列の席だった。

田舎に行くエアコンバスを使うときには,前に座るのは

恐い。

前の車を吹っ飛ばす勢いで車間距離を詰めるとすかさず

追い抜きをかける。

ぐいんと大きくハンドルを切り,対向車線に出る。

対向車は・・無論来ている。ぐんぐんと眼前に迫る。

うぅわー,もう勘弁してぇー

ギリギリまで引きつけてぐいんと無理矢理にモトの車線

にバスの鼻先をねじ込む。



自分だけは死なないつもりだな,こいつ。

そりゃーあんたはプラクルアンは付けてて運転席の周り

もお守りだらけ。俺は日本のお守りも持ってきてないっ

ちゅうに〜



バスの神風運転は延々と続きそうなので,もう目をつぶ

っていよう・・



2時間半ほどわけのワカランスリルを味わうと,終点のサ

タヒープの街に入った。

いつもの習慣で街のアイポイントをチェックしながら,

街の感じを掴もうとする。お寺,市場,バスの発着所。

規模は小さい。

人が多いのは中心部分だけで,バイクなど足がないと少

しつらそうだ。まぁここには観光に来たのではなくて,

海べりの知らない街でビールでも飲めればいいや,ぐら

いの気持ちだし。

第一体が万年夏ばて状態である。早い話がナマケモノ。



バスは小さな港の漁港・・という雰囲気の,全然バス停

とは思えない場所に止まった。

普通,終点には小さいながらもバスターミナルのような

ものがあって,いろんなお店もかたまっていて・・なん

てのは全くない。

バスから降りると,普通たむろってるはずのソンテーオ

とかサムローとかのたぐいも見あたらない。

うーむ。こいつは大外ししたかもね・・などと漠然と不

安になりながら海沿いの道をホテホテ歩き出した。



しばらく歩くと商店はなくなり,道も広くなった。

まぁまぁ綺麗な海水である。

パタヤとは全然違うな。 半島の先端部分だもんね。

前方に・・あれ?

あれは検問所みたいだぞ。なんでこんなところにあるの。

後ろから兵士を乗せた軍用ジープが列を作って走ってき

た。



ココまで来て,やっとこの街が他と変わってることに気

がついた。軍服姿,刈り上げ頭が異様に多いのである。

これはあとで分かるのだが,ここはタイ海軍の街だった。

俺が見たあの検問所から先は海軍基地内。

関係者の証明書がなければ通れない。

そしてこの街はなんらかの形で海軍と関係のある人達の

街だった。



検問所の向こうはもっと景色がよさそうなのにな。

ライフルを捧げ持ってる人に入っちゃ駄目?なんてきく

ほどお茶目にはなれんしー・・ガッカリ。

ガッカリすると腹が減る。人はそんな馬鹿なと言うが俺

はそうなの。検問所の手前に屋台・・じゃない。食べ物

のスタンドみたいのがある。

先客が何人かカオパットやら麺ものをやらを食べている。

やたら元気なおばさんが作っていた。



・・・パッタイとコーラちょうだい。



「パッタイね,はいよ・・コン・ユィープン?」



・・・そうだよ。



「珍しいねー,ここに外国人はあんまり来ないよ。

タイ語もうまいねー,めずらしいねー」



・・・有り難う! ところでこの辺に安いホテル無い?



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すいません,まだ続きます(^^)


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