海上自衛隊の対艦作戦の系譜
対艦作戦とは、元来、古くからある、艦と艦が洋上で渡り合う者で、大艦巨砲主義による艦隊決戦をその最たるものとしている。
もちろん、太平洋戦争時点では、戦艦の時代は終焉し、艦隊決戦自体も過去の物となった。
しかし、海上に兵力が存在する以上、これに対抗する手段は必須であり、会敵すれば戦闘ともなる。
また、我が国に対する海上からの侵攻に対しては、自ずと対艦戦闘が構成される。
従って、その形態は、洋上による会敵と、沿岸防備に大別される。
対艦戦闘は、哨戒と戦闘の２つに分けられる。
哨戒は、主として対水上レーダーによる監視である。
戦闘は、相手の艦に対する攻撃と共に、飛来してくるミサイルなどに対する対空防御も伴う。
海上自衛隊創設時に、１８隻が貸与された護衛艦 PF281 くす 型は、アメリカ海軍のフリゲート(護衛艦)である。
また、約５０隻の、警備艇 LSSL401 ゆり 型も貸与されているが、これらの対空兵装としては、銃砲などの砲煩兵器が中心であった。
基本的に、太平洋戦争当時のシロモノではあるが、帝国海軍より１歩進んだ米海軍の兵器である。
すなわち、レーダーや、射撃指揮装置など、当時のエレクトロニクスを含む物である。
その後、護衛艦の国産が始まり、護衛艦 DD101 はるかぜ 型、護衛艦 DE201 あけぼの 型、護衛艦 DE202 いかづち 型などが建造された。
が、対艦兵器としては、まだ、太平洋戦争時代のアメリカ海軍の域を出る事はなかった。
これは、まだ、アメリカ海軍にとってしても、対艦ミサイルの幕開けとなっていない段階である事にも起因する。
３８口径 ５吋砲
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３吋砲
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４０mm連装機関砲
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その後建造された、護衛艦 DD103 あやなみ 型は、対潜用として建造されたが、長魚雷発射管も搭載した。
対潜用としてではあるが、もちろん、対艦攻撃も可能である。
４連装 長魚雷発射管
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防空艦として建造された護衛艦 DD107 むらさめ 型に搭載する５インチ５４口径単装速射砲は、ミッドウェー級空母に搭載されていた、当時最新の対空火器であると共に、有力な艦砲であった。
そして護衛艦 DDA161 あきづき 型は、アメリカ海軍の予算で建造されたが、本艦は、あやなみ型とむらさめ型をミックスしたような艦として建造されており、５インチ５４口径単装速射砲と、長魚雷発射管も搭載されている。
長魚雷発射管は、護衛艦 DE211 いすず 型にも搭載されていた。
この頃、沿岸防備用として魚雷艇 PT801 魚雷艇１号 型、魚雷艇 PT803 魚雷艇３号 型、魚雷艇 PT805 魚雷艇５号 型、魚雷艇 PT807 魚雷艇７号 型、魚雷艇 PT809 魚雷艇９号 型、魚雷艇 PT810 魚雷艇１０号 型などの魚雷艇が試作あるいは輸入され、魚雷艇 PT811 魚雷艇１１号 型が量産艇として整備されている。
対艦兵装としては、もちろん長魚雷である。
また、潜水艦 SS511 おやしお 型が建造されている。
対潜訓練と共に、海面下深く潜航する潜水艦に対しては、同じく潜航する潜水艦が効果的であるという理由もあったが、もちろん対艦攻撃も任務の一つになろう。
続く、潜水艦 SS521 はやしお 型、潜水艦 SS523 なつしお 型では、所要隻数の充実の為、小型の沿岸用とされたが、潜水艦 SS561 おおしお 型、潜水艦 SS562 あさしお 型では、大型の外洋型として建造された。
潜水艦による対艦攻撃は、潜伏し、水上艦艇の航行を察知した場合、潜望鏡などで目標を確認し、魚雷攻撃を行うものである。
尚、この頃の陸上攻撃機による対艦戦闘は、航空自衛隊の戦闘機による爆撃に依存している。
３吋速射砲
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が、１次防では、画期的兵器が導入された。
対空誘導弾ターターである。
搭載する艦は護衛艦 DDG163 あまつかぜ 型。当初2600t程度で計画されたが、調査団の報告を受けて3000tを超える大型艦として建造された。そのしわ寄せとして、砲は３インチで我慢することとなり、アスロック(ASROC)も後日装備で、ヘッジホッグが搭載された。
このターターは、水上目標への射撃も可能とされていた為、唯一の対艦誘導弾ということになるが、元々が対空用であり、敵艦の機能の一部に打撃を与えられても、撃沈を狙える兵器ではなかった。
Mk.13 スタンダード／ターター
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２次防からは、護衛艦 DDA164 たかつき 型、護衛艦 DDK113 やまぐも 型、護衛艦 DDK116 みねぐも 型などの対潜艦艇が続々整備されたが、対艦兵装は、砲煩兵器のみの時代が続く。
ただ、たかつき型に搭載の５インチ５４口径単装速射砲は、アメリカ海軍最新式の物が搭載された。
５４口径 ５吋砲
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３次防からは、ようやく対空ミサイル護衛艦の建造が再開され、護衛艦 DDG168 たちかぜ 型が、都合３隻建造されが、最終艦のDDG170さわかぜでは、ハープーンの射撃も可能とされた。
この頃の護衛艦部隊の編制目標は、DDG 対空ミサイル護衛艦１隻、DDH ヘリコプター搭載護衛艦２隻、DDK 対潜護衛艦５隻を基本とされていた。
世界最強の対潜部隊であるものの、対艦能力は、現代からは比べようもないくらい寂しい物であった。
しかしながら、対艦ミサイル搭載艦は、ソ連を除けば、まだまだ未開発の分野ということであった。
チャフの搭載が始まったのも、この頃からである。
チャフは、大量のアルミ箔を打ち上げる物で、レーダーホーミング方式の対艦ミサイルに対して使用され、アルミ箔を撒き散らせて形成する雲のレーダー反射をして、ミサイルの目標を、艦から外すことを目的としている。
同様に、赤外線ホーミング方式のミサイルに対しては、フレアが使用される。
チャフ
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また、護衛艦の火砲の近代化も計画され、OTO ３吋砲の導入が目論まれた。
最初に、DDK118むらくも に試験的に搭載され、結果良好を見て、新造艦への搭載が決まった。
この砲は、砲塔内完全無人化で、１分間に約100発程度の射撃も可能で、迫り来るミサイルをも打ち落とすことができるといわれている。
OTO ３吋砲
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この頃、潜水艦 SS566 うずしお 型が建造されている。
潜水艦の水中運動性能向上の為、船型をティアドロップ型とした、新鋭艦である。
ティアドロップ型は、続く潜水艦 SS573 ゆうしお 型、潜水艦 SS583 はるしお 型にも継承された。
そして最新の潜水艦 SS590 おやしお 型では、葉巻型となっている。
潜水艦の対艦攻撃兵器は、言うまでもなく魚雷が中心だが、ハープーンUSMの使用も可能となっている。
９２式長魚雷
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艦艇では、その後、ようやく、対艦ミサイルの導入により、水上打撃力の強化が図られる時代が到来した。
東西冷戦のソ連海軍水上艦隊の躍進に対応した物である。
そのして建造されたのは、護衛艦 DE226 いしかり 型である。
当初、駆潜艇の代替として計画され、やがて護衛艦として建造された為、やや半端な存在となっているが、対艦兵器として、はじめて、ハープーンが搭載された。
SSM ハープーン
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また、護衛艦隊も近代化が計られている。
その第一陣は、護衛艦 DD122 はつゆき 型である。
今までの海上自衛隊の艦艇が、対潜艦艇であったのに対して、対艦、防空能力も装備した、汎用艦の出現である。
また、対空ミサイル護衛艦である、護衛艦 DDG171 はたかぜ 型にも、ハープーンは搭載されている。
８８艦隊という言葉が生まれたのは、この頃である。
この頃の護衛艦部隊の編制目標は、DDH ヘリコプター搭載護衛艦１隻、DDG 対空ミサイル護衛艦２隻、DD 汎用護衛艦５隻を基本とされていた。
護衛艦８隻、DDH搭載の３機と、DD搭載の各１機の５機、合計８機のヘリにより、８隻８機で、８８艦隊という。
ハープーンの導入と共に、国産の対艦ミサイルも開発され、航空自衛隊のASM-1、陸上自衛隊の８８式地対艦誘導弾、そして海上自衛隊の対艦ミサイルSSM-1Bが開発されたが、これらは一連のファミリーである。
そしてその最初の搭載艦艇となったのは、ミサイル艇 PG821 ミサイル艇１号 型である。イタリアのミサイル艇の国産版であり、極めて小型ながら、高速発揮が可能の物であった。
残念なのは、性能と共に、構造が複雑で、航空機による対艦攻撃に分があったようで、３隻の整備にとどまった。
SSM-1B
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また、最終的には、陸上自衛隊の沿岸作戦に依存している。
そしてこの頃の陸上航空機による対艦攻撃は、航空自衛隊の支援戦闘機による爆撃、ミサイル攻撃と共に、海上自衛隊の哨戒機P-3Cによる、対艦ミサイル攻撃も可能となっている。
また、ハープーンなどの射程は100kmを超えるのだが、艦自体のレーダー等では、かくも遠方の目標を捕らえることはできない。そこで、艦載ヘリなどによる中間誘導も行われる。
P-3C、ハープーン、対潜魚雷
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SH-60J
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アメリカで開発されたイージスシステムが、我が国にも導入されることとなり、護衛艦 DDG173 こんごう 型が４隻建造されたが、対艦ミサイルの搭載も行われている。
そしてこの後、汎用護衛艦は、護衛艦 DD151 あさぎり 型に続いて、護衛艦 DD101 むらさめ 型が建造された。
更に後続の護衛艦 DD110 たかなみ 型では、シースパローはアスロックと共通のVLS化された。
また、備砲も、３インチ砲から、OTO ５吋砲へと強化されている。
Mk.41 VLS
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OTO ５吋砲
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しばらく停滞していたミサイル艇の整備ではあるが、近年の不審船問題を踏まえて、航洋性に富む艦艇として整備されることとなった。ミサイル艇 PG824 はやぶさ 型である。
新型の３インチ砲塔を装備し、画期的な沿岸防備艦艇である。
OTO ３吋砲 新
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現在、護衛艦 DDG177 あたご 型４隻の整備が着々と進められている。
大きな変更点は、ヘリコプターの搭載能力の付与で、備砲も、Mk.45 127mm砲がはじめて搭載される。
また、目下、鋭意開発中の、弾道ミサイル防御能力も付与される。
Mk.45 127mm砲
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新規作成日：2003年4月28日／最終更新日：2006年9月14日
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